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オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門外伝その2【DACの翼】

あれは今年の2月初旬。まだぎりぎり世の中が普通に回っていた頃、私は横浜への日帰り出張帰りの新幹線で、ある衝撃的な報せに接します。

「○○君(←息子)がテレビにリモコンぶつけてテレビが映らなくなりました」

絶句しましたね。
私がその昔、液晶は嫌という理由で手に入れたパナソニック最後のプラズマディスプレイTVが潰れたと。とりあえず、学資保険の解約の方法を考えつつ帰宅。テレビを見るとものの見事にヒビが入り、うんともすんとも言いません。仕方ないので、新テレビの物色しつつ、万一の修理の可能性に賭けてメンテの段取りを考えていた所に、ふと、一つの天啓が閃きます。

…もしかして家財保険でいけるんじゃね?

というわけで翌日、保険屋に電話すると、なんとホントに保証されるとのこと。思わず二度聞きしましたね。うちの馬鹿息子が馬鹿なことをして馬鹿な結果になったのに、過失割合10:0の重過失なのにほんとに保証されるのかと。
で、必要書類送ると同時に、私は近くのヤマダ電機に直行、パナソニックの有機EL55インチTVを、まぁ多少、足が出てもいいやと保険金額が算定されない内に即決。無事納材となりました。
…いつになったらオーディオの話になるのかって?すいません。ここからです。

さて4K放送もバッチリ映る、恐るべき超美麗な有機ELテレビを堪能し、ふとテレビ裏の入出力端子類を見るとそこには光デジタル出力がありました。これまで私は、Blu-rayレコーダーからアンバランスケーブル(要するにステレオAVケーブル)で、プリメインアンプに接続して音を出していた訳ですが、折角光デジタルがあるならと、Amazonで適当なデジタルケーブルを購入。テレビからの出力をLuxmanのD-05Uの光入力に入れて、モノは試しに、映画ボヘミアンラプソディを再生してみました。

……私はこの2年と少し、映画やその他映像コンテンツを、これ以上ない音響で視聴していると思い込んでましたが、それが全っっっくの誤り、壮絶な勘違いだったと思い知らされました。

ボヘミアンラプソディーのオープニングは、20世紀FOXのあのテーマを、ブライアン・メイがギターソロで奏でるのですが
もう全っく違う。何もかも違う。音の鮮明さが天と地ほど違う。プリメインの切り替え一つでこれまで通りのBlu-ray⇒プリメインの音と、テレビ⇒D-05U⇒プリメインを切り替えられますから、直接比較ができます。そりゃもう笑えるくらい別物。

以前、この連載(?)の中で、音の最上流(CDプレーヤー等)の重要性を話しましたが、まさかここまで圧倒的な差を生むとは思いませんでした。舐めてました。Luxmanの中の人ごめんなさい。
まぁそりゃそうですよね。Blu-rayレコーダーのオマケのようなDAC部と、エントリーグレードとは言え真っ当な単品SACDプレーヤーであるD-05UのDACの音が同じであるハズがない。
改めて音の最上流、というかDAC部が及ぼす巨大な音の差に打ちのめされると同時に、私の中に邪な考えが浮かびます

…エントリーグレードのD-05Uですらこの衝撃、況やハイエンド…

タイミングよく(悪く?)、LuxmanはD-10X、SoulnoteはS-3、EsotericはK-01XDなどなど各社ハイエンドSACDを刷新しました。
ええ。そうなると仕方ありません。そして、次の欲望が始まるわけですが、またしても長くなったのでまた今度。

ちなみに、保険金は、新テレビの購入金額を上回るという予想外の展開でした。保険屋さん有難うございます、申し訳ありません。
皆さん、家財保険に入るなら絶対、あいおいニッセイ同和損保ですよ!ぜひ加入を!(宣伝)

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 外伝【オカルティック・ラビリンス】

以前、オカルトと切って捨てたオーディオの周辺機器、所謂「アクセサリー」について触れてみましょう。

まず筆頭は各種機材を繋ぐ「ケーブル」ですね。CDプレーヤーとアンプ間、アンプとスピーカー間のそれらが特に有名ですが、最近ネットワークオーディオが流行ってますのでLANケーブルもオーディオ専用と銘打ってトンデモナイ価格で売り捌かれてます。
酷い物になると、1mあたり100万とかします。ケーブルが、です。うん、もう、ね。
個人的には、スピーカーケーブルには金をかける価値があると思います、mあたり1000円くらい。確かに付属しているケーブルに比べ、その位の物に変えれば、確かに効果は実感できます。
ただし、そこから上は極めて分かりにくい。相当のモノを使っているオーディオ店で聴き比べても、少なくとも私の耳ではその違いを明確に判別はできませんでした。「言われてみればいいかも」程度。
であれば、専用品の最低レベルで十分というのが私の結論。

次は「電源」です。オーディオは勿論電化製品ですので、電気がないと動きません。ノイズの乗らない電気の方が動作が安定する…という理屈は分かりますが、一般家庭のその他家電が発する電気的ノイズごときに
動作が左右されるのであれば、それは設計の前提がそもそも大間違いであり、設計者がアホなだけのような気がしますが、この業界はそのような考えを是としません。
電源タップ(要するにタコ足のあれ)が30万したり、電源ケーブルが数十万したり、さらにはオーディオ用に専用のマイ電柱まで立てる始末。いやホントに居るんですよそういう凄い方。
…とはいえ、私も完全には否定しません。騙されたと思って買ってみた1万円ほどの「オヤイデ電気」の電源タップ。これが確かに効果がある。壁のコンセントから直で繋いだ状態と、タップを介した場合では
確かに音の解像度が変わります。うちのように集合住宅の場合、確かに電気的なノイズも多く乗るでしょうからそれらを除去する、という理屈は、まぁまだ分かります。流石にこれ以上かける気はしませんが。
…あ、そうだ。皆さん、コンセントに「向き」がある、ってご存知ですか??
コンセントについている2つの穴、あれには「極性」というものがあり、左側がアースとなるcold、右側が電気が通るhot側となっています。(雑な電設工事をされていてそもそも逆になっている場合もありますので、念のためテスター(千円しません)で確認するのが無難です)
で、次は差し込むプラグを見てください。▽マークが入っている側がアース側(左側に差し込む側)になります。
つまりマークが見える状態でコンセントに差し込むとOK。逆相にすると音が変になる…らしいです。
私も試してみましたが「言われてみれば確かに違う、気がする」という感じでした。まぁ信じる信じないは人それぞれですが、コンセントの指し方だけで幸せになるならタダですので上下刺し替えてみて自分が「良い」と思った方に繋ぐのが精神衛生上よろしいのではないでしょうか。

えーいい加減疲れてきましたので、最後にもう一つ。「インシュレーター」のお話。
インシュレーターがそもそも何かと言えば、機材を置くための土台です。そもそも重力があるこの地球上ではあらゆる物体は空中には浮くことなく、床なり何なりに「置かれる」わけですから土台部分までちゃんと設計して当然のように思えますが、この業界では何故かそうはならず、往々にしてインシュレーターは別売りとなります。で、これも高いのは数十万。見た目ただの円筒形の金属の塊がです。うん。もう。いいや。
ただし!インシュレーターの効果は必ずしも全くのオカルトではありません。
個人的に一番のお勧めは「10円玉インシュレーター」です。
読んで字のごとく、10円玉をスピーカーの四隅にかまして床になりラックなりテーブルなりに置くだけです。もし今、スピーカーを床に直置きしている皆さんは、騙されたと思って、10円玉をかましてみてください。
一気に音が鮮明になり、特に低音が引き締まるはずです。
うちのBOSEがまさにそうでした。ラジカセという形状ですので、床に直置きだったのですが、フローリングの場合低音が膨らみすぎるので絨毯に置いてみたり、聞くジャンルによって色々設置条件を変えてたのですがこの「10円玉インシュレーター」導入後はもう一切気にしなくて済むようになりました。
であれば、ちゃんとしたインシュレーターではそれ以上の効果が望めそうな気もしますが最低でも10円玉の数千倍ほどの費用が必要になるのに対して、数千倍の効果が得られるとは到底思えませんので費用対効果が全く合いませんから私はやりません。

…そろそろ私なりの結論を。
オーディオアクセサリーには、確かに、ある一定の効果はありますが、それらのエントリーグレードとハイエンドの効果の差は、かけるコストに見合ったものとは到底思えません。スピーカーに金かける方がその100倍は音が良くなりますし、そのスピーカーは部屋のどこに置くかで、恐ろしく音が変わります。
……そう。アクセサリーではありませんが、そもそもそのオーディを聴く「部屋」の条件が極めて大きな差を生みますが「ルームチューニング」は、定在波との終わりなき戦いが余りに深淵ですので、ここでは触れません。
触れませんが、LINNの「Space Optimisation」は画期的な定在波キャンセル機構…な気がしますが、どうなんでしょうね。

http://linn.jp/space-optimisation/

いずれにせよ。

オーディオは、目に見えない「音」を相手にした趣味です。効果があろうがなかろうがオカルトだろうが物理的裏付けのある手段だろうが、当の本人が納得し「良い」と思えば、それが正解ですのでプラシーボ大いに結構。幸せになったもん勝ちです。自分が納得する範囲でお金をかけましょう、という当たり前の結論。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その10【旭日編】

まだ子供の時分に家の近くの家電量販店で聴いたピュアオーディオの音。今思えば大した代物ではなかったはずですが、ただ、私の中に「何か」を残したのは確かでした。
それから約20数年。
まともなシステムを組んだことがない人間が、いきなり一式揃えるのは無謀なような気もしますが、賽は投げられました。あとは祈るのみです。
年が改まった1月16日(火)ついに、納品の日がやってきました。
ド平日ではありますが、私は万難を排して振替休日を取得し、朝から掃除を敢行。来訪に備えます。思いのほか早く片付き手持無沙汰。ふと、最後にBOSEを鳴らしてやろうと思い立ちました。さて何を聴こうか。
最後ですから、フルトヴェングラーのブラームス1番4楽章(1945年1月23日)と、やはりブルックナー7番2楽章でしょう。鳴り始めるのとBOSE=AWMのいつもの音。Luxman D-05uの力を借りて音が鮮明にはなってますが、基本的にこの15年の間、ずっと聴いてきたいつもの音です。今まで本当に有難うございました。また、いつか鳴らしてやろう。

さて本当にちょうど、ブルックナーが鳴り終わるや否や、インターホンが鳴ってお出迎え。店長さんと、そしてフューレンの担当さんが来られました。なんという有言実行。
エレベーターの無い4階という最悪のロケーションの中で、アンプとスピーカーの搬入頂き、手際よく梱包が解かれていきます。恐ろしく美しいピアノブラックの鏡面塗装。
今回は導入にあたり、アンプ、スピーカーを繋ぐ各コード類は全てお任せにしました。ケーブル、電源など「アクセサリー系」は大変深淵な世界が広がりますので、私のようにハイエンドオーディオの黄昏をおっかなびっくり歩いている人間にはまだ業が深すぎます。プロに任せるのが吉。
そうこう言う間に各種配線は勿論、配置なども極めて手際よく完了し、取り敢えず音が出る環境が整いました。所謂「ポン付け」の状況です。ここからスピーカー位置などセッティングを詰めていく訳ですね。
気分はまるで湾岸ミッドナイト。悪魔のOCTAVE。いやドイツだからBlack Brodmannか。

…さてでは何を、最初に鳴らすべきか?

実は前から決めてました。バックハウスの弾くベートーヴェン。中でも私の好きなテンペストを置いて他にありません。何せこのスピーカーは元を正せばベーゼンドルファーです。
ベーゼンドルファー(のピアノで弾いた曲)をベーゼンドルファー(のスピーカー)で聴く。
これ以外、こけら落しに相応しい何がありましょうか。D-05uのトレイにCDを載せて再生スタート。

さぁ記念すべき最初の音色は如何に!

……なんじゃこりゃ?

なんという平板な音。響きも何もあったもんじゃない。

…正直、血の気が引きましたね。
こんなものかと。これじゃハイドン(風雲篇参照)のほうがまだ良いと。

が、すぐにある事を思い出しました。そもそもこれは真空管アンプです。通電後すぐの真空管と更にバイアス未調整とくりゃ、まともな音がする筈もない。事実、私以外のプロの2人は全く動揺するそぶりも見せない。そうまさしく、まだ慌てるような時間じゃない訳です。
しかし、プロは暖気の時間も無駄にしません。スピーカー位置を色々変えて行きます。その度に如実に変わる音。更に、BrodmannのVC1はウーファーが側面に一発ついているのですが、これは設置する空間にあわせてウーファーの向きを内か外か、適した向きに変えられる利点があります。今回、まず内向きに鳴らした訳ですが、これを外に変更したらかなり大幅に音の響きが変わります。こちらのほうがうちの部屋にはあってる模様。更に壁からの距離、スピーカー間の距離を厳密に詰めていきます。まさしくセッティング。
そして、そうこうするうちに、真空管が十分に温まってきます。そこで4本の真空管のバイアスを調整して頂きます。

…そう。この音です。これだよ!これですよ…!!
よかった。本当によかった。あやうくホントに「落日編」になる所でした。そんなオチは要らん。

セッティングが一段落し、労を労う為コーヒーを淹れて差し上げます。
色々お話する間も刻々と響きが良くなっていきます、が

「真空管の慣らしが終わるのは最短で3ヶ月」
「スピーカーは(特にBrodmannは)年単位」

という極めて気の長いご宣託を頂戴しました。
まぁこれから日々よくなると思えば。気長に付き合いましょう。

お礼を申し上げお二人をお見送り。部屋に戻ってその後もずっと色々掛けてみました。ピアノだけでなく、オルガン、ヴァイオリン、チェロ、協奏曲、交響曲などなど。音色は着々と良くなります。生気が出てくる。これまで聞こえなかった僅かな音も聞こえてきます。
あと映像ソフトも念のため確認してみるかと、ブルーレイに切り替え、響けユーフォニアムの関西大会を見てみました。まるで映画館で見るような音の質感です。また驚いたのは、京阪電車に乗ってるシーンでキャラクターがつり革を掴んだ時、つり革独特の「あの音」がちゃんと聞こえた点です。聞こえたスピーカーにも驚きましたが、わざわざそこまで音をサンプリングしてしっかり乗せてる京アニにも改めて驚いた。

もう機材は十二分に暖気されました。そろそろ一発、少し音量を上げて本領を発揮してもらいましょう。
比較するのは、私が以前素晴らしいと感じたDYNAUDIOのSP40で聴いた、ブルックナーの5番、第4楽章です。
鳴り始めてすぐ、音質の全くの違いに驚きます。SP40の精緻さと比べ、圧倒的に生っぽい。またSP40ではホールの若干後方で聴いている感覚でしたが、VC1ではもっとオーケストラの近くで聴いている感じです。
音場の広がり、定位とも文句なし。そしてとにかく音がリアルです。
そして最終のコーダ。アムステルダムコンセルトヘボウがヨッフムの棒にフルパワーで応えるクライマックス。もうこれはこの世の音楽ではありません。これを聴いて感動しない人間はブルックナーの何を聴いても無駄と断言できます。本当に素晴らしい。これ以上の5番は有り得ない。そう確信できる演奏。そしてそれをこの上なくリアルに再現するV70SEとVC1。流石にSP40では比較するに荷が重い。Confidence系なら或いは…
ただDYNAUDIOとBrodmannでは方向性が全く違いますから、比較はナンセンスかもしれません。
いずれにせよ私はBrodmannの音色の方を好みます。

…良かった。ちゃんと鳴ってくれました。

その後、帰宅してきた嫁の渋面をなだめすかす為に、彼女の好きなミスチルを掛けてみたところ、うちのリビングに桜井が現出し、改めてそのリアルさに驚いた次第。
誰だBrodmannはクラシック、しかもピアノ専用機とか言ったのは。超オールラウンダーじゃねぇか。

さて10回に及んだ今回のオーディオ導入記。
紆余曲折を経て最終的に

アップロードファイル 743-1.jpg
CD:LUXMAN D-05u
アンプ:OCTAVE V70SE
スピーカー:BRODMANN VC1

に最終決着しました。その結果は上記のとおりです。
ただ納入後2週間を経た今現在。更に音色のリアルさが増加しています。真空管の慣らし…もそうですが、プリ菅を、Telefunkenに変えた事も大きいですね。今回真空管アンプを選んだため「玉転がし」と俗に言われる真空管の交換による音質変化を楽しむ…という極めて業の深い世界に飛び込むことが可能になりました。
そう、ここからが本番、と言えなくもありません。
今回の様々な経験を経て、私もほんの少し、オーディオのことが分かってきましたから、これからも少しずつ変化を楽しみ、音楽を聴いていきたいと思います。

…また、気が向いたら「外伝」として続けるかもしれません。
ネタは、オカルト満載のアクセサリー業界や、ヴィンテージ真空管の世界でしょうかね。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その9【回天編】

関西在住の人間が、スピーカーの試聴の為だけに東京に行く。改めて文章にしてみるとその異常さがよく分かります。恐らく99.999%の人には理解を頂けないかと思いますし、うちの配偶者も、無論、多数派に属します。また、そのような常軌を逸した行動をするからには当然、そのスピーカーは尋常でない金額である。と、普通の人間なら推測するでしょうし、うちの配偶者は変に頭がキレますので、まぁ要するにこの試聴の旅は、極秘裏に行う必要があります。
さていくら私が自由が効く外回りの営業マンとは言え、流石に仕事中に東京まで行くことは難しいです。となれば土日ですが、幼子が二人居る家庭には、なかなかそういう自由はありません。
更に私は配偶者に対して「嘘はつかない」をポリシーにしています。

…困った。

しかし、暦は師走。この業界(建設業界)は関連業者を強引に巻き込んだ忘年会という、昭和の遺物のような強制参加型イベントが数多開催されます。そして中には何を考えてか、土曜日にそれを行う業者まで現れる始末。全く始末に負えませんが、今回はこれを活用しましょう。
というわけで、その土曜日は「休日出勤である」という大義名分を持って、自分の時間を確保した次第。
うん、嘘は言っていない。

さて、地味な暗闘の話はもういいでしょう。
当日、いつもの出勤時間とさほど変わらない時間に家を出た私は新大阪から新幹線に乗車。幸い、異音が生じて名古屋で足止めなんてこともなく無事東京に辿りつきました。相変わらずカオスな東京駅構内を尻目にさっさと山手線に乗り換えて有楽町へ。中央口を出て東の銀座方面に向かいます。程なくして並木通り沿いの目的地「SOUNDCREATE Legato」に到着。店長さんの計らいでわざわざ開店の1時間前にお時間を頂き、試聴会場となるお向かいの新店舗「LOUNGE」に移動。
うん、なんだ。オシャレです。私がこれまで見た全てのオーディオ店の中で圧倒的に、比較を絶してオシャレです。ド級のスピーカーが林立するのですが、ヴィンテージスピーカーも多く、また同時に扱っている椅子やらも極めて品が良いですので、通常のオーディオ屋さんとは全く気風が異なります。無論店員さんも皆さんオシャレです。特に年配の男性社員でお一方、頭の先からつま先までまるでMEN'S Preciousか何かから抜け出てきたかのような装い。しかもそれが恐ろしく自然で一切嫌みがない。凄いですね。流石銀座。勝てる気がしない。しかも皆さん超気さく。完璧超人か何かか。
…閑話休題、もういいでしょう。このシリーズはあくまでハイエンドオーディオが主題であってファッションチェックが目的ではありません。そろそろ本題に戻りましょう。

まずはスピーカーがBrodmannのF1
アンプはOCTAVE V40SE+強化電源Black Boxのセットです。

試聴用に持ってきたCD色々を、LINNのネットワークオーディオに一旦落とし込んで頂き試聴スタート。
まずはケンプのバッハです。
うん。流石。そう。この響きです。ケンプが居る。
が、少し音場が狭いか?いやピアノだし。しかも低めの音量だし尚更そう感じるか。次はブルックナー9番。私が持ってきたのは最晩年のヨッフムとチェリビダッケに鍛え上げられた当時のミュンヘンフィルとの共演。これ以上の9番はこの地球上に存在しません。そう断言できる超絶の名演。その3楽章。が、どうにもLINNのシステムと相性が良くなく読み込みが上手くいかないようで、冒頭の1分弱しか読み取れない問題発生。しかし問題ありません。この演奏の肝は冒頭の1分(極みは最終のホルンですが、まぁ置いておいて)です。
相変わらず素晴らしい。音のリアルさ。響きの自然さ。しかし、少し厚みが足りない。実在感が少し足りない。いや、確かにそこにオケが居るんですが、気配が薄い。変な表現ですが、そうとしか言えない。
次いで喧しい系としてチャイコフスキー4番。指揮はムラヴィンスキー。うん金管の鳴りもOK。ただ…どうにもブル9と同様の印象。
さらに戦時中のフルトヴェングラー指揮のブルックナー7番。これは素晴らしい。DYNAUDIOのSP40とは雲泥の差。ちゃんと鳴ります。これで十分。問題なし。で、最後。ヴォーカル物も。というわけでフレディの遺作となったThe Show Must Go Onです。ベタと言われようが何と揶揄されようが、私にとって、これは絶対に外せないフレディ最高のパフォーマンスです。私が聴く音楽は9割クラシックですが、Queenとピンクフロイドが鳴らないのは許されない。
さて、どうか。
…たしかに、フレディが居ます。でもこれはダメだ。低音が全く着いて来ない。いつも聴いているうちのシステムが低音ドーピングのBOSEだということを割り引いても、幾らなんでもこの鳴り方は許容できない。
かなり極端に言うと音の分布が逆三角形のイメージ。高音、中高音に音が寄り、低音が薄すぎる。
これではロックは全く鳴りそうにありません。
やはりBrodmannはクラシック(特にピアノ)超特化型のスピーカーです。困った。今聴いているF1より購入を検討しているF2なら確かに低音は(ウーファーが一つ多い分)大幅に増強されると思います。ただ
何か、私の中でピンとこない。低音がどうこうとかそういう次元ではなく、どうにも全体的な違和感が拭えない。
視線を移したその先には、もう一つのBrodmann「VC1」がありました。

「VC1聴いてみられますか?」

貴様ニュータイプかっ!?
余りの的確な反応に驚きながら、その提案を受け入れました。
F1を外して、VC1へ。アンプはそのまま。音量もそのまま。まずかけて頂いたのはブルックナーの9番。ただし持参したソフトは上記のように上手くならないので、既にシステムに入っていたベルリンフィルとの演奏。その最初の一音。

「…何これ?」

思わず口をついて、無意識に声が漏れます。
低音がどうとか、そういうレベルではなく、完全に次元が違う音が鳴り響きます。いや方向性は同じです。同じですが位置する地点が違いすぎる。また今まで、私はこのベルリンフィルとの演奏を評価して来なかったのですが、その認識を180度改めざるを得ませんでした。この演奏は、こんなブルックナーが鳴っていたのか?こんなに凄い演奏だったのか?
改めて他も聴き直します。ケンプのバッハ。ピアノの存在感が先ほどと段違いです。チャイ4、フルヴェンその他全部全く違う。凄い。そしてフレディのThe Show Must Go On
…完璧です。フレディの魂の叫び。それに答えるブライアン・メイのギターソロ。もう一度言います。完璧です。
…何で死んだんだフレディ。

そう「あの時」私が心斎橋のビジネスホテルの一室、ハイエンドオーディオショウで聴いたのはこの音。これなんです。

…さて、その後、どういう結論に至ったか。賢明なる読者の皆様には自明かと思われますがスピーカーは無事、VC1に変更と相成りました。
またプリメインアンプですが、V40SEの中古がどうにも程度がよろしくないとのことで、数か月前におろしたばかりの、今聴いていた店頭デモ機を格安でという話になり、そちらに変更しました。数万の追加で新品保証がつくならそっちでしょう。スピーカー予算の破滅的な暴騰に比べれば、些末な話です。

帰路。得意先の忘年会に向かう新幹線の車中、やっちまった感に苛まれつつ、しかしこの結末は、もう「あの時」既に決まっていたのかと納得もしました。結論に至るのに少し遠回りしたかもしれません。遅いじゃないかミッターマイヤー。

…さてその後、最終見積書を精査していると試聴機V40SE+BlackBoxの金額にあと少し追い金すれば「V70SE」に手が届くではないかと気付いてしまい、その悪魔の囁きに身を委ねたのは、また別の物語。

いつもの事ですが、もう行き着くところまで行ってしまった感がありますね。

さぁあとは、完璧にチューニングされたお店の視聴空間ではなく、私の家のこの残念な空間でちゃんと鳴ってくれることを祈るのみです。

ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その8【乱離編】

ハイエンドオーディオショウという業の深そうなイベントに、Brodmann聞きたさにかまけて仕事をフルパワーでブン投げて、イベント初日金曜夕方に赴いた私ですが、どんな会場かと思えば、ただのビジネスホテルでした。とは言えオーディオショウという性質上、音量をバカみたいに上げますので、ホテルまるまる借り上げて行われている模様。
さて私の目的はあくまでBrodmannの輸入代理店フューレンコーディネートの会場です。他の展示には目もくれず9階へ直行。
部屋に進むと、ほんとにただのビジネスホテルの一室に試聴会場がありました。先客が1名。スピーカーは2組設置されていました。一つはピエガのハイエンドブックシェルフCoax 311。そしてもう一つがBrodmannの「VC1」でした。鳴っていたのはピエガの方。これがなかなか素晴らしい音。流石にスタンド合わせて100万円のスピーカーは違います。以前ヨドバシの店員さんが仰ったように、特に高音の自然さが素晴らしい。これがリボンツイーターの威力なのか。暫く聴いていると、先客の方が席を立ち、私一人に。
ピエガは勿論素晴らしいですが、私の興味はあくまでBrodmannです。代理店の説明員の方にお願いしBrodmannに切り替えてもらいました。と、何やらアンプも変えてらっしゃいます。今更気づきましたが躯体上部にほんのり発光する4本の真空管。なんと、真空管アンプがこんなに鋭い音を出すのかと。
どこのアンプですか?Octave?へぇドイツ製。ドイツのアンプとオーストリアのスピーカーは、そりゃ相性が良さそうです。
さて、機材変更は終わりました。先ほどピエガで聴いていたのと同じ音源、ショパンのピアノです。果たしてどうか。

最初の一音。

耳を疑う、とはまさにこの事。

これは、紛うことなき「ピアノの音」です。

いや、ピアノ曲だから当たり前ですがそういう意味ではなく
「スピーカーから出るピアノの音」ではなく「ピアノから出るピアノの音」まさにそれなんです。
ピエガと比較してそれが如実に、鮮明に、露わになりました。ピエガのそれは言うならば「高音質スピーカーの音」でした。「ピアノそのものの音」では勿論、ない。というか、ピエガ云々ではなく、今まで他のどんなスピーカーで聴いても決して鳴らなかった音です。
ピアノだけではありません。モーツァルトの小編成での弦と木管。バッハのチェンバロ。チャイコフスキーの金管。どれもこれも素晴らしく「リアル」です。「実演の音」に極めて近い。特にピアノは群を抜きます。
例えば、スタインウェイがそこにあって、ピアニストがエア演奏してる後ろでこのスピーカーが鳴ってても気付かない、そのくらいのレベル。
やはり、私が求めるスピーカーはこれではないか。これしかないのではないか?
…とは言え、私はまだ比較を行っていません。まだ最終決断を下すには早すぎる。折角のハイエンドオーディオショウです。全フロアに名だたるメーカーのシステムがひしめいているわけですから、他も聴いてみましょう。
というわけでフロア巡りを行いました。全部書いていくわけにもいきませんので、一つだけ印象に残ったものを。
それはLINNのシステムでした。フューレンと違って試聴コーナーには大勢先客が居ましたので、私好みの楽曲はかけられませんでしたが、非常に興味深い鳴り方をしていました。音の密度が濃い。というか情報量が多い。モニター系スピーカーの音とはまた異なる緻密な鳴り方に大変驚きましたが、値札を見て更に驚きました。ざっくり400万て。
因みに国産系ハイエンドメーカーはフラグシップを超大音量でぶっ放してました。耳が痛くなったので早々に退散。
てか初めてこの手のイベントに参加しましたが、何故どこもかしこもあんなバカみたいな大音量で鳴らすんでしょう?どこの世界にあんな音量で聴く近所迷惑なバカが居るのか。ド田舎の一軒家か、地下室か、或いは完全な防音室か。そういう特殊なユーザーだけを対象とするなら意味があるかもしれませんが、一般的な現実的試聴環境とこれほどまで乖離がある展示会に、一体何の意味があるのか??まるでこの何十年間変わりなくスーパースポーツカーを箱根や筑波でアホみたいに走らせて車の優劣を論評(笑)し続ける車雑誌業界とやってることは大差ありません。そんなのだからイベント参加者の平均年齢が恐ろしく高く、若年層が参加する余地が無くなるんですよ。
…と、まぁ私みたいな素人が批判しても仕方ないですね。話を元に戻しましょう。

…やはりBrodmannしかないか。

もとのフロアに戻りましたら、また別の方がピエガを聴いてました。その方が去ってから、再度お願いをしてBrodmannに戻してもらい、もう一度様々聴きました。他の様々なハイエンドシステムを聴いて、なお
このリアルさには瞠目させられます。代理店の方に様々色々質問し、それら全てに丁寧な回答を頂戴しました。
そして最後、一度ヴォーカルも聴いてみようと、かけて頂いた女性ヴォーカル。いや感動的でしたね。
定位がいいとか、音像が明確とか、もうどうでもよく。そこにホントに本人が居る。生々しいなんてもんじゃない。

…これはもう、買うしかない。上位グレードのVC(Vienna Classic Series )系は流石に予算オーバーです。
下位グレードの(Festivalシリーズ)F1辺りが本命か。
関西では取扱いがないので、他エリアのお勧めのお店を数店伺い、冬のボーナスが出次第発注しますと申し上げた所「その時は私がセッティングに行きます!」と派手なリップサービスも頂戴し、閉館時間ギリギリまで使った試聴会は終了しました。その日その後飲み会でしたが、私は全く上の空だったのは言うまでもありません。

さて、では実際にどこのお店にコンタクトを取るか。
フューレンのお勧めのお店のHPを見比べ、その中で、最もBrodmannの扱いが多かったのが東京にある「Sound create」でした。
問い合わせフォームにBrodmannに興味があること、お勧めのアンプを教えてほしいこと、大体の費用見積もりが欲しいなど記載し投げかけてみました。店長さんから大変丁寧で詳しいお返事を頂き、そこから十数回に及ぶ、もはや文通のレベルのやりとりを行い、最終的な方向性として

プリメインアンプ
Octave V40SE(中古)&Black Box(中古)
スピーカー
BrodmannのF2

で行こうと、ほぼ決定。
…はてOctave?LuxmanのL-550AX2はどうした?
当初の予算はどこに行ったのか?
アムリッツァのキャゼルヌばりに声を張り上げそうになりますが
Brodmannを鳴らすためなら女房も泣かす勢いで、魔術か何かにかけられたように、見積金額が跳ね上がります。
ただやはりBrodmannのFestivalシリーズを聴いていないのが、どうにも最後、引っかかりました。事ここまで来たのなら、やはり自分の耳で聴いて、決断を下すべき。
というわけで、東京銀座へ最終試聴に赴くことを決めた訳です。
さてしかし試聴機材としてF2が確保できない、とのことでしたので、仕方なくF1と、上位グレードVC1を「念のため」ご用意頂くことに。

そして師走の最初の土曜日。レダ2号ならぬ、のぞみ214号に乗って、私は最後の決断を下すべく試聴の旅に赴くのでした…

ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ。


※あけましておめでとうございます。
てか今日のニューイヤーコンサートはいいですね。こんなにウィーンフィルが歌っているのは久々ではないでしょうか?例えて言うなれば演歌のような節回しですが、まぁ面白いと言えば面白い。2008年のプレートル以来かと思います。良い一年になりそうですね。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その7【怒涛編】

数々の試聴を重ね、概ねスピーカーの方向性が定まってきたある日、本屋に訪れた私はいつものようにオーディオ雑誌コーナーで立ち読みでもしようかと棚を見ていましたら、そこで一冊の本を見つけます

「SPEAKER BOOK 2017」

手に取ってみますと、様々なスピーカーブランドの商品を金額順に挙げ商品説明をギッシリ記した内容。成程これまでスピーカー専門誌なんて読んだことがありませんでしたから、これは有益な本だと買うことにしました。
家に帰って早速、パラパラと読んでみます。そしてその127ページ目。このページを読んだがために、当初予算など粉微塵に吹っ飛ぶことになるわけです。
そこに記されたスピーカー、それが

アップロードファイル 739-1.jpg
BRODMANN F1

でした。
それは大変変わったカタチをしています。普通このクラスのフロアスタンディングのスピーカーならツイーター1つにウーファーが2つか3つ並ぶのが定石です。しかし、どこにもウーファーが見当たらない。
そして何より小さい。幅170mm、高さ929mm、奥行228mmは望外の小ささです。そう「小さい」というのは私にとって大変重要です。対配偶者戦略として、重厚長大なスピーカーは極めて好ましくありません(その辺がベートーヴェンを躊躇した理由でもあります)
さて説明文を読み進めると、オーストリアはウィーンで製造されていること。元はベーゼンドルファーのスピーカーであったこと。ウーファーは側面につけられており、更にその前にサウンドボードと呼ばれる共鳴構造があることなどなど、私の興味を引くに十分すぎる内容が続き
最後に、トドメの一文

「80歳ほどの高齢な学者(製作者ハンス・ドイツ)にとって、モーツァルト、ベートーヴェン、リスト、ショパン…こそが音楽であり、ジャズやロックは氏の人生にはない」

……これは要するに、私の為のスピーカーではないか?

雑誌記載の内容では十分ではありません。ホームページでも様々情報を仕入れました。

http://www.brodmann.jp/index.html

概要を改めてまとめますと
音響エンジニアであるハンス・ドイツ氏が、仕事を通じて40年来の親交があったカラヤンからの勧めもあり、ピアノメーカー「ベーゼンドルファー」がスピーカー部門を立ち上げた際に、その設計を担当。一般的なスピーカー設計と全く異なる(バスレフやダンピングファクターを一切使用しない)設計で新たなスピーカーを生み出しますが、当のベーゼンドルファーが経営難に陥ってヤマハに買収される際、スピーカー部門はお払い箱となりました。切り離されたスピーカー部門はそのまま、中国資本のオーストリアピアノメーカー「ブロッドマン」へ移籍。
そこでベーゼンドルファー時代のそれを改良したスピーカー作成を再開させました。特許を取っている「ホーンレゾネーター」や独自のサウンドボードなど、色々理屈はありますが、一言で言えば、スピーカーをスピーカーではなく「楽器」とみなして設計している、と言えます。一般的なハイエンドスピーカーと真逆の思想ですね。
読めば読むほど、興味が湧きます。これは一度聴いてみたい。なんとしても聴いてみたい。
ホームページには取扱店が挙げられており、大阪でも2店舗がありました。私はすぐにその2店に連絡してみましたが極めて残念ながら、両店とも現在試聴機はないとのこと。というか、殆どそのスピーカーの存在を知らない様子。

困った。どうにもならない。

まさかスピーカーの試聴のために東京に行くわけにもいかない。どうしたものか。
悶々とするなか、ある日、私はオーディオ誌の広告ページで、捨て置けない情報を見つけます。

「大阪ハイエンドオーディオショウ2017 開催」

そしてその参加店リストの中には、BRODMANNの輸入代理店フューレンコーディネートの名前が。これは行かねばなりません。万難を排し、私は当日、仕事を早々に切り上げ大阪心斎橋に乗り込むのでした。

…ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その6【飛翔編】

絶品館(仮名)で、オーディオ専門店の洗礼を受けつつ、自分の音の好みと値引き率を知った私は試聴フィールドをヨドバシ梅田に変更し、都合3回くらい、本当に色々試させて貰いました。
まずアンプとCDプレーヤーですが、LUXMAN、DENON、YAMAHA等々をそれぞれ比較し(AIRBOW 憎けりゃMarantzまで憎い。の理屈でMarantzは除外。ならDENONもダメじゃねーかというツッコミは無しで)その中ではLUXMANが個人的には最もよく感じました。アンプはL-550AX2、CDプレーヤーは確かにD-06uは素晴らしいですが幾らなんでもCDプレーヤーに50万はかけられない。半値に近いD-05uで私には十分と思われます。

さてスピーカーです。
念のためB&Wのブックシェルフ型の最高峰805D3も聞いてみました。流石にCM6 S2とはまるで次元が違いますが当然方向性は同じです。とにかく明確。しかしどうしたことか私の好みに合わない。
カメラでもシグマのレンズが嫌いな私は、オーディオでも解像度命系は好みと違うようです。てか、そもそも予算が全く合いません。(スタンドと合わせたら約100万円です)
では特にクラシックに強いと言われるTannoy、DALIはどうか。それぞれフロアスタンディング型を聞いてみる。値段は805D3の遥か下にも関わらず、個人的にはこちらの音の方がまだ好みに合います、が、それでもまだピンと来ない。私の中でやはりVienna-acousticsのハイドンの音がまだ強く残っていました。
では、その上位機種「Mozart Grand Symphony Edition」(以下 モーツァルト)を聴いてみましょう。
…弦が美しい。本当に美しい。DALIのRubicon6と比較しても、弦の響きが明確に違う。Tnnnoyのフロアスタンディング(名前忘れました)と比較してもオーケストラの広がりが違う。そして同社のハイドンと比べると低音の力強さ音場の広さが格段に違う。これは凄い。モーツァルトでこれなら更に上ならどうなるのか。いや全体予算的にはもうモーツァルトでいいのではないか?店員さんに聞いてみますと3wayになるベートーヴェンは低音は勿論、全体のスケール感が更に大きくなるとのこと。ただし、ヨドバシには試聴機なし。
またVienna-acousticsより弦が美しいスピーカーメーカーはありますか?と問いますと、PIEGAがお勧めとのこと。スイス製でリボンツイーターの原理がどうにもよく分からないあのPIEGAですかそうですか、でもお高いんでしょう?ええとっても。これもヨドバシでの取り扱いがないとのこと。こういう商売っ気の無い本音で教えてくれる店員さんは本当に有り難いです。

さてしかし金額的な事を考えると、やはりVienna-acousticsがベストなのか。ただ私には一つ気になるスピーカーがありました。DYNAUDIOの40周年記念モデル「Special Forty」(以下SP40)です。
当然ヨドバシには置いてない。ですが、調べると日本橋にあるオーディオ専門店河口無線で試聴可能。
ということで、CDを幾枚か持って実際に行ってみました。
店員さんにSP40を聴きたい旨、伝えると極めて快く案内して頂きました。SP40は意外と小型なブックシェルフ。高そうなAccuphaseのプリメインアンプ(型式忘れました)、外国の超高額なCDプレーヤー(これも名前忘れました)に繋がれており、私は愛聴盤であるブルックナー5番の究極の名演(ヨッフム=アムステルダムコンセルトヘボウ1986年)その第4楽章をかけて頂きました。さて試聴はあくまで試聴。ですので初めは数分で切り上げるつもりでした、が、しかし。
鳴り始めるともう、とても途中で切れません。凄い音です。リアルです。スピーカーが確かに消え失せ途轍もなく広い音場が広がります。感覚としてはコンサートホールの中央、少し後ろの席で聴いている感じです。途中から「スピーカーの試聴」という感覚は完全になくなり、音楽に浸ってしまいました。素晴らしいブル5。
そして、これは今でも明確に思い出せますが、最終のオケ全体の強奏によるコーダ。もう完全に、目の前にアムステルダムコンセルトヘボウが居ました。鳥肌が立つどころではなく、私は涙がこぼれるのを必死に我慢する始末。
これはとんでもないスピーカーです。申し訳ないことに結局第4楽章をまるまる聞いてしまいました。
もうこれでいいんじゃないかと、殆ど決断を下しそうになったのですが、次にかけて頂いたフルトヴェングラーの戦中録音のベートーヴェン7番が残念ながら全てをひっくり返しました。何せ酷い。音が耳にナイフのように突き刺さります。録音の悪さがモロに出て全く聞けたものではありません。これは本当に困った。フルトヴェングラーが聴けないのは致命的な大問題です。
…いやこれは特に厳密な音を作るAccuphaseだから不味いのか、Luxmanならもしかするとマシかも…などと考えますが、何れにせよスピーカーの特性は変わらない訳ですから、どうにも不味い。
と困っていると店員さんが、ソナスを聴いてみますか?とのこと。予算オーバーではありますが一度聞いてみたいスピーカーなので是非お願いしますとかけて頂きました。Olympica Iです。これが意外でした。というのもソナスファベールと言えば、過剰なまでの美音というイメージでしたが、このOlympica Iはモニター系とまでは行きませんが、どちらかと言うと解像度重視の音に感じます。ただそうは言ってもやはり弦の響きは美しい。先ほどSP40で全くダメだったフルトヴェングラーも、刺々しさが消え耳に心地いいです、が、どうにも何か違う。Vienna-acousticsで聴くベートーヴェンは、ちゃんとベートーヴェンなのですが、Olympica Iは響きが何かイタリアのノリというか何か釈然としません。まぁ多分に先入観による物なのかもしれませんが、オーディオは主観が全てです。そう感じるんだから仕方ない。

…困りました。SP40は素晴らしいスピーカーです。ブックシェルフでありながら、モーツァルトを超える実演感がある。ただ録音の瑕疵が見えすぎ私にとってそれは最悪の欠点です。となれば、やはりモーツァルトの上位機種「Beethoven Baby Grand symphony Edition」を狙うしかないか…
店員さんに心からのお礼を申し上げて、しかし心中複雑な思いで帰路についた次第。

というわけで、最も音を決定付けるスピーカー選びが遅々として進まない中、一方でもう決めていたCDプレーヤーについてヤフオクで極めて優良な出物があり(LUXMAN正規店の展示品の払い下げ。新品扱いで保証が付き値段は6掛け)私はそのD-05uを万難を排し落札しました。
さて家に届いて、CD部がぶっつぶれたBOSEのAWMに取り敢えず繋いで音を出して、心底驚いた。
…以前、半分冗談めかして、CDプレーヤーの重要性を語り、理屈ではそうだと分かっていましたが、まさか本当にここまで違うとは。
全く音が違います。鮮明さが半端ではありません。そうですね。例えば、その筋では有名な1945年1月23日ドイツベルリンにて録音されたギーゼキングによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番。これは現存するほぼ最古の「ステレオ録音」として有名であると同時に、演奏の後ろで、ドイツ軍による首都防衛のための高射砲の発射音が記録されていることで有名です。(Wiki先生によると12.8 cm FlaK 40(アハトアハトの後継のようですね) )
で、この砲火の音ですが、今までのAWMのCDプレーヤーでは「言われてみれば確かに聞こえる」というレベルでしたが
D-05uで聴けば、もう、完全に聞こえます。恐ろしくクリア。
と、まぁそのような音のクリアさもそうですが、それが刺々しい音にならないのが、流石はLUXMAN。
私は大いに満足し、アンプも当然、同社のL-550AX2、そしてスピーカーはまぁ恐らくベートーヴェンか或いはSP40にしようかと、ほぼほぼ決めていたある日、偶然書店にて購入した一冊の本が、全て、何もかもを根底から覆すことになるわけですが、もうほんといい加減長くなったので、また次回。

ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その5【風雲編】

さて、前回は何がハイエンドオーディオ入門なのか全く分からない話でしたので、今回は方向を戻しましょう。
そもそもハイエンドオーディオ、というか、ピュアオーディオとは何か、というお話。「その5」まで来てそこに戻るか、というツッコミは無視して続けます。

一般に「ピュアオーディオ」とは、オールインワンの音楽再生システム(ラジカセなど)ではなく「CDプレーヤー」「アンプ」「スピーカー」など、各種コンポーネントが、独立している機器類を言うようです。

では「音楽を再生する」過程を追ってみましょう。

まずソース(CDを仮定)からデータを取り出すことが必要ですよね。ここは当然「CDプレーヤー」が必要になります。
そしてその「CDプレーヤー」の中では、おおまかに2つの仕事が行われています。一つはCDに記録されたデジタルデータを読み取る部分(CDトランスポートと呼ばれたりします)二つ目は、読み取られたデジタルデータそのものでは音楽は鳴りませんので、デジタルデータをアナログの電気信号に変換する部分「DAC(Digital-to-Analog Converter)」が存在します。
※行き過ぎたハイエンドオーディオでは、この2つをそれぞれ独立した機械で行ったりします。凄いのはそれぞれ250万の2つで500万とか。百歩譲ってDACに金かけるのはまだ分かりますが、CD読むだけに大金かける意味が分かりません。凄いお布施。

さてCDプレーヤーで無事録音デジタルデータはアナログ電気信号に変わりました。しかし、この電気信号は極めて微弱でありスピーカーを駆動し、空気を震わせて音を発生させ、人間に「音楽」であると認識させるには全く至りません。そうするには電気信号を増幅する必要があります。それを担うのが「アンプ」となるわけです。
そしてそのアンプにも、おおまかに2つの役割に分かれます。
一つはどのようにアナログデータを増幅するかについて指示したり、音量=出力を調整する部分「プリアンプ」と、その指示に従って実際に電気信号を増幅する部分「パワーアンプ」に分かれます。大体はこの二つの役割を1台で担う「プリメインアンプ」となる訳ですが、「プリ」と「パワー」がそれぞれ分かれた「セパレートアンプ」ならまだしも
スピーカー1台につき1台のパワーアンプを使用する「モノラルパワーアンプ」などという業の深い世界もあります。
酷いのになると、プリアンプ、モノラルパワーアンプ(2台)それぞれ500万ずつで合計1500万とか。もう宗教超えてますね。

もういい加減しんどくなってきましたが、ようやく音楽データが増幅された電気信号になりました。
あとはそれに従って空気を震わせるだけです、が、これが一大事。
残念ながら音は、超低音から超高音まで、超幅広く存在するわけで、それを上手く再現する=空気を振動させるのを1つのユニットで賄うのは困難です。そりゃそうですよね。低音と高音では周波数が異なるわけですから。ですので一般的に、低音を受け持つ「ウーファー」と中高音を受け持つ「ツイーター」が分かれた2way式が多くなります。勿論もっと細分化して3way、場合によっては4wayなんかもありますが、ユニットが増えれば当然制御も難しくなりますから単純に増やせば良いとは限らなかったりします。さらにスピーカーの本体=箱にも色々形状があり…ともういいや。しんどい。
ちなみにスピーカーも酷いのになると3000万円とかします。頭がおかしいとしか。

さて上記の3部位についてはまだ分かりますが、それぞれの機械を繋ぐための各種ケーブル類。更にそもそもの電気を持ってくる電源コード、電源タップなどなど周辺器具各種に至っては最早宗教すら超越し完全なオカルトの世界が広がりますので、取り敢えず、置いておきます。

…では、これら3部位にどのようにお金を振り分けるべきか?

よく言われるのは、音を決定づける順番として、スピーカー>アンプ>CDプレーヤーとされていますが大元のCDプレーヤーがクソだと、そこから先はクソを増幅した巨大なるクソになると言えなくもありません。
その理屈を前面に押し出し「プレーヤーこそ金を懸けるべき派」も存在しますが、まぁ流石にそれは言い過ぎかと。
私個人的にはよく言われる順番のとおりだと思います。
というわけで、私は各種雑誌及びネットを彷徨い、まずスピーカーについて幾つかの候補を上げました。

モニター系代表=B&W
クラシックを聴くなら=Vienna-acoustics
その他にもTannoy、DALI、あとDYNAUDIOなんかも聞いてみたい。

もの凄く前段が長くなりましたが、では実際に聞きに行ってみましょう。
また試聴もそうですが、オーディオ専門店の値引き率を把握したいというのもありました。

…で、初めに門を叩いたのは、何を考えたか、大阪を代表する超個性派のお店「絶品館(仮名)」
初心者が行くには余りにもハードルが高い店ですが、逆に言えば最難関を知っておけばあとはどこ行っても大丈夫だろうと。
というわけで、私は外回りの途中でフラッと寄ってみたのでした。
想像より小さな店舗。ドアを開け入ってみますと、まぁ当然ながら音楽が鳴ってます。いい音。店の中には常連さん(?)のような先客が店員さんと話し込んでました。私はお店に並ぶ各種スピーカーやらアンプやらを暫く眺めていますが、他の店員さんも、私には声をかけて頂けないのでこちらから話しかけ凡その予算と主にクラシックを聴く旨伝え、お勧めのモノを教えてくださいと。
で、初めに鳴らして頂いたのはB&Wのブックシェルフ型。丁髷のようなツイーターが乗るCM6 S2です。
目の覚めるようなシャープな音。とにかく音が明確です。成程これが所謂「音の解像度が高い」という奴か。極めて分かりやすい高音質。ただ、どうしてでしょう。私には、あくまでも私的には、耳に突き刺さる感じがしてどうにも全く好みにあいません。
で、次に鳴らして頂いたのは、私的に本命のVienna-acoustics。そのエントリー機種であるHaydn Grand Symphony Editionです。
もう、鳴り始めた最初の弦の響きで「あぁこれだ」と。素晴らしい響き。全くB&Wとは異なります。CDプレーヤーとアンプは、そのお店の自社ブランドである改造マランツのままですから、完全にスピーカーの個性です。別に解像度が低いわけではありません。B&Wに比べ音の輪郭が別段不明瞭になったわけではないですが、角が取れるというか響きが自然です。音源をピアノ曲に変えて頂いても感想は変わりません。自然。交響曲に変えても何の不足も感じません。
「もしかしてこれで十分じゃないか?」
私の脳裏にそのような考えが浮かびます。ただ一方で上位機種が気になります。モーツァルトとベートーヴェンですね。(ともにスピーカーの名前)本当はそれらを聞かせて欲しかったのですが、試聴中、色々質問してもあまりお答えを頂けず、これ以上試聴を申し出るのが憚られる空気が充満していました。
まぁおそらく私のようにオーディオド素人で、予算総額100万程度の人間は、やはりこの店の客ではない様子。それぞれの金額を伺うに留め、辞去した次第。
ただ極めて大きな収穫がありました。私が好む「音の方向性」が掴めたことです。
とは言えやはりまだ専門店は敷居が高いことも理解が出来ましたので、試聴フィールドをド素人にやさしいヨドバシ梅田に変更し、様々比較検討するわけですが、いい加減疲れたのでまた次回。

ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ。

…なんかほんとにその10まで行けそうな気がしてきましたね。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その4【策謀編】

さて既婚者にとって、大きな買い物をする際に最も障壁となるものは?
無論「金」は大きな問題ですが、ある種それ以上に大きな関門は
「配偶者の同意を如何にして得るか?」
これに尽きると言っても過言ではありません。
これが例えば「貴方が欲しい物を買うんだから私にも何か買って系」であれば、事は簡単です。
買えばいいだけの話ですからね。
しかし、うちのように

「そもそも極めて物欲に乏しく、新たな買い物をすることを極端に忌避する」

という、私の真逆を行く奇特な価値観を持つ相手を如何に説得するか。これは難しい。
例えばカメラの場合、仮にレンズが無尽蔵に増えたとしても、ライカのレンズは外見が極めて似てますから気付かれるリスクは低いです。またカメラ本体にしても同様に、ライカは外見が酷似してますから元々あったM8からM9-P、更にM3を追加したとても「同時に複数台ある状況」さえ見せなければ。そう「シュレディンガーのライカ」を維持し続ける限り、彼女の中で未だ私は「(M型ライカは)1台しか持っていない事」になっているはずです(たぶん)

…しかし、オーディオはそうはいかない。黙って買って誤魔化すのは不可能です。

難しい。どうにも難しい。
これまでの経験上、短期決戦は絶望的。ということで私は持久戦を展開しました。とにかく、今のBOSEのAWMがいかにダメかを分からせ、新規購入止む無しとなし崩しに同情させる作戦です。
というわけで私はこの1年以上、BOSEで、可能な限り音楽を聴き続けました。当然調子を崩していますから、最低1回、良い時(?)は2度、3度と再生が止まってくれるわけです。
その度に私は様々なパターンのリアクションを取ります。

・何も言わず淡々とかけ直す。
・打ちひしがれながら静かにかけ直す(往々にしてほんとに打ちひしがれてます)
・ごくまれに「あーもーいい加減にしろ!」と少し語気を荒げてみる(往々にしてほんとに(ry

と言うことを繰り返しているうちに、向こうから、そう向こうから
「修理できないの?」
の一言。来ましたねコレ。ええ待ってましたよほんと。
「…もう 1 5 年 も 昔 のだから修理も効かない」(超寂しげに)
「……そう」

…ここで深追いは禁物です。まだ早い。まだ慌てるような時間じゃない。その辺りから私は、オーディオ誌を読み始めました。で、カメラやその他雑誌とともにさりげなく、始めは1冊。そして徐々にその比率を高めていきます。そこまで来てから、例によってBOSEの再生が止まってくれたタイミングで

「…そろそろいい加減、新しいのを買おうと思う」
「…(無言)」

勿論、私はここで承諾を得ようとは思っていません。そんな甘い考えは毛頭ありません。
「明確な、揺るぎない意思表示をする」
これが一番大事。
また更に時間が経って。雑誌に交じって、ヨドバシから貰ってきた各種カタログも混ぜてみます。

「今度聞きに行ってみる」
「…(無言)」

まだ明確な肯定は得られません。得ようとも思ってません。

ただもはや、否定はされません。

これが一番大事。負けないこと。投げ出さないこと。そんな感じ。
事ここに至れば、外堀は埋まりました。あとは焦らず、事を慎重に進めるだけです。その後もずーっとBOSEは「いい仕事」をしてアシストしてくれたのは言うまでもありません。

知識もある程度つき、遂に配偶者の無言の消極的承諾も得ました。

さぁいよいよ、実際に聴きに行ってみましょう。
一体どこが「ハイエンドオーディオ入門」なのかさっぱり分かりませんが、まぁそれはそれ。

ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ。


※さて残念ながら書き溜めたストックはここで尽きました。
明日以降の連続更新は、うちの嫁が全面的に新オーディオ導入に賛成する確率より低いですから、ご覧頂いているごく少数の奇特且つ有り難い読者の方々は気長にお待ち頂きますよう、何卒宜しくお願いします。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その3【雌伏編】

「具体的にはディスクリート構成の入力バッファー回路、音量調整回路は増幅回路と一体化した“新LECUA1000”を採用。また独自の負帰還方式のODNFも最新のVer4.0という具合だ」

……なんの具合?
※「季刊オーディオアクセサリー」誌上のLUXMANプリメインアンプL-550AX2の解説文の一部(原文ママ)

…オーディオに対する知識不足を補うため、私は書店にてオーディオ専門誌を購入して読んでみたのですが、えー、全てのページが、大体こんな感じの文章で埋め尽くされています。

さっぱり分からん。全く分からん。何語?

ハッキリ申し上げて、今のオーディオ不況は業界側にも責任があると思います。余りにも排他的すぎ、余りにもマニアックすぎる。格ゲーやシューティングや音ゲーが寂れたのと同じ文脈です。
というか、そもそも。どんなに解説文を読み込んだところで、それは所詮「文字」に過ぎません。そこから「音」は全く聞こえません。あくまでも想像する他にありません。
これが例えば同様にマニアックな世界でも、カメラのレンズの話だとまだ分かりやすい。なんせレンズであれば、それで写した「作例」を見れば、レンズの素性は(ある程度の知識さえあれば)誰の目にも理解できます。
まぁ「レンガ」や「新聞紙」や「カラーチャート」を映してレンズ性能を語るあっちの業界もどうかと思いますが、それは置いておいて。

…まぁ文句を言っても仕方ありません。google先生やwiki先生の助けを目いっぱい借りながら、なんとか少しずつではありますが、耳年増ならぬ、目年増(?)的に「文章的知識」だけは少量ながら獲得して行きます。

で、なんとなく把握できたのは、この業界(ピュアオーディオ界)の音の方向性として、大まかに、極めて大まかに、且つ極端に言えば、だいたい二つの方向性がある、と言うことです。

一つは「原音再生系」
もう一つは「美音系」

美音系は分かりやすいですね。そのメーカーが定義する「美しい音」を作るために、ある程度、音に方向性を付与して鳴らす、そんな考え方。
例えばイタリアのスピーカー「ソナスファベール」なんかは美音系の最右翼。特に弦楽器や女性ヴォーカルに限って言えば「現実より美しい」とまで言われます(私の感想は【風雲篇】あたりで)

一方で、分かり易そうで分かりにくいのが「原音再生系」です。
てか、そもそも「原音」って何でしょう??
「ライブ演奏の完全再現」でしょうか?でも皆さんご存知の通り、ライブ会場の音って、超どデカいスピーカーから超ばかデカい音量で鳴り響いてますよね?「スピーカーから出た音を完全再現する」のが「原音再生」?
いや違うそうではなくクラシックならどうか。クラシックのコンサートなら楽器からの直接出た原音を拾えるか?しかし、これも残念ながら、クラシックのコンサートホールの音でさえ、スピーカーの音によるところが非常に大きいのは皆さんご承知の通りです。
では「スタジオ録音の音」を忠実に再現?これならまだ分かる気がしますが、スタジオ録音で昔ながらの一発撮りなんてものは、今日日存在しません。さんざ弄繰り回してあれやこれやと付け加えてますのでそれは果たして「原音」と呼べるのか?
…と、まぁ定義はともかく、美音系のような意図的な方向性を排し、録音データを忠実に音に変換することを目的とした音作り、と言えるようです。

なるほど理屈はほんの僅かですが、一応分かりました。雌伏の時を終え、実際に音を聞いてみたいと思います。
…が、その前に、私には越えなければならない極めて大きな関門があるのでした。
ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ。

……てかこれほんとに「その10」まで続けるつもりなのか。果たして完結するのか。

※さんざ文句を言った業界紙ですが、入門書として特選街特別編集「大人のオーディオ大百科」が大変おすすめ。
非常に分かりやすかったです。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その2【野望編】

それはいつものようにBOSEのAWMで音楽を聴いている時のことでした。
突如、音が途切れたんです。
CDに傷か汚れでもあったかと取り出して見るものの、ディスク表面は全くの無傷。となればプレーヤー側かということで、読み取り部分をカメラレンズ用のブロアーで埃やらを吹き飛ばした後、これもカメラレンズ用クリーナーで掃除。
さぁどうだと再度CDを再スタート。無事音楽が鳴り響きます。
しかし、また暫くすると…

…ということを、私は一体何度繰り返したことでしょう。
まぁ軽く一年以上は、騙し騙し使ってきましたが、流石にこれは精神衛生上よろしくない。私は主としてクラシックを聴きます。特に交響曲ではベートーヴェンとブルックナーを好みます。
フルトヴェングラー指揮の第二次大戦中録音のベートーヴェン。それは人類史上の至高の芸術と言って過言ではありません。それが演奏の途中でぶった切られる。或いはブルックナーの交響曲。彼のそれはマーラーと並んで長大です(一曲大体80分くらいかかります)いつぞやも書いたように、これが第四楽章のコーダ(最後のクライマックス)で飛んだ日には、もう本当に、心の底から腹立たしい。いっそマンションの4階から(ry

というわけで、私の中で沸々と「まともなオーディオが欲しい欲」が鎌首を擡げて参りました。
となると、ですよ。昔からあったオーディオへの憧憬も再燃します。
しかも、今はオーディオは超氷河期時代。昔のように手頃な値段で選択肢は限りなく…とは到底参りません。
極端に言えば、ゴミのようなレベルか、ハイエンドか。二者択一。
で、皆さんご存知のように、私はゴミのようなレベルのモノを、特に嗜好品で選ぶことは絶対にありません。私は人生を楽しむ主義です。無駄な出費は好みませんが、自分が本当に興味があり、好きなものに対して金を惜しむなんてことは絶対にしません。
…そのせいで車もカメラもトンデモナイことになってますが、それは置くとして。

さてしかし、私のオーディオに対する知識の無さは如何ともし難い。
この状況で専門店に行ったところで、まともに店員さんと会話することさえ出来ません。
というわけで、野望だけは大きく、その前段として私のオーディオ知識吸収の旅が始まるのです。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その1【黎明編】

タイトルからして意味不明ですが、色々あって所謂「ハイエンドオーディオ」と呼ばれる深淵な世界に足を突っ込むことになりましたので、その備忘録というか、事の顛末を少し書き連ねてみようと思います。
深淵の先人達には冷笑の的かと思いますが、それはそれで。

さて若者どころか全世代に跨る「オーディオ離れ」が進む昨今ですが、私の世代がたぶんオーディオというものにある種の憧れを持った最後の世代ではなかろうかと思います。
例えば、我々の高校時代所謂「ラジカセ」は誰もが持っていましたし、その上を行く「ミニコンポ」は皆が憧れ、しかし金などあろう筈がなく、なんとか頑張っても最廉価のaiwaがギリギリ射程距離、そんな時代です。
私も無論同様の道を進みます。大学に入ってバイトをした金で買ったのは、MDとか色々付いたPIONEERのミニコンポでした。こいつには大変お世話になりましたね。大学から、就職、一人暮らしを経て、転職し実家に戻り、結婚して実家を出るまでずーっと一緒でした。今でも実家にあります。
さてしかし、PIONEERに満足していたかというと、残念ながらそうでもなく。当時の私の最大の目標はONKYOの「Intec275」でした。初めてこのシステムの音を聞いたのは家の近くのジョーシンだったか。あれは衝撃でしたね。うちのとは雲泥の差。そりゃそうだ。価格は3倍違いますから。
ただどういうわけか縁がなく。私は大学四回生の最後の冬に、バイト先のTSUTAYAにBOSEの代理店営業を呼びつけそこでAWMという空気清浄器の化け物のようなラジカセを買った訳です。約30万。
躯体上部に前後左右合計6つのツイーターを設け、当時流行りの「立体音響」を実現し、パイプオルガンに着想を得たとか言うアホのように響き渡る「低音」を躯体下部から捻り出すシステムです。
今でもBOSEで売ってるコンパクトなシステムがありますが、アレの元祖ですね。
これはこれで悪くありませんでした。というか、今まで約15年間ずーっと使ってきました。今も私の横でカザルスのチェロが鳴ってます。
ちゃんと配置すれば音場の広がりと定位もさして悪くありませんからね。(この意味不明な専門用語の説明はまた後程)
さてそんな私をまた驚愕させるシステムが現れます。以前ここでも書いたことがありますが
ONKYOのA-1VL、C-1VLがそれです。
http://pasture.s59.xrea.com/cgi-bin/cdiary/diary.cgi?no=418
所謂「デジタルアンプ」というものですね。これには心底驚いた。
音の質感はさることながら「スピーカーから音が聞こえない」ということに衝撃を受けました。
…何を言っているか分からない?ですよね。ふつう、音楽をオーディオで聞けば、当然左右のスピーカーから音が聞こえますよね。しかし、このコンポは違いました。スピーカーからではなく。左右のスピーカーの
真ん中から音が聞こえる。そしてその音色が半端ではない。これにやられた訳です。

…これが今思えば過ちの始まり。

たぶん、ここが、一般的なオーディオとピュアオーディオと呼ばれる泥沼の世界の境界かと思います。

「スピーカーの存在が消え、音が違うところから聞こえる」

最も分かりやすいのはオーケストラの交響曲です。左右のスピーカーではなく、眼前(耳前?)にコンサートホールが広がる(そういうのを「音場が広い」と表現します)そして実際のオケの配置通り、向かって左にヴァイオリン、センター右寄りにチェロ、右に第二ヴァイオリン、中央後ろに金管などなど。その場所で鳴っている楽器の位置が正しく定まる(これを定位がいいと表現します)

もし皆さんの家の近くに、オーディオ専門店は敷居が高いですから置くとして、ヨドバシなんかの旗艦店があれば、そこにはピュアオーディオ売り場がありますから、冷やかしに行ってみてください。
数々のスピーカーが林立し、これ見よがしに馬鹿でかい音量で鳴り響いていると思います。
そしてそれは大概、上記したような鳴り方をしていると思います。

それにやられたら最後。見て見ないふりをするか、足を踏み入れるか…

…ここから先は、その誘惑に負け、足を踏み込んでしまったド素人の物語です。

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アップロードファイル 733-1.jpg
BOSEのAWM
CDプレーヤーがつぶれたので、LUXMANのD-05uを繋いで。凄い組み合わせですねw

信じがたいことに

今日で今年の半分が終わります。危うく半年まるまる更新しないところでしたこんちわ。
ほんとね。小さい子供がいると、更新するのがほんとに難しいですね。
ネタが無いわけではありません。プライベートが無い。
さてでは、最近のマイブームですが…なんだろうなぁ
あぁそうだ。遥か昔ここにも書いたことがありますが、私が大学生の頃に買ったBOSEのオーディオが最近調子を著しく崩してます。CDの読み取りが上手くいかず音飛び…なら最悪許せますが、強制終了すること多少。
これがね、ブルックナーの最終楽章なんかでそれをやられた日にはあんた。もうマンションの4階からブン投げてやろうかと思うほど気分が悪い。精神衛生上極めてよくない。
といことで、もう私もいい歳ですので、ちょっとはマシなオーディオを揃えようかと。で、その種の雑誌を手に取りましたが、もうなんか、なんだこの宗教。書いてる文章の専門用語が一言たりとも分かりません。
ピュアオーディオ界の排他性は異常。そりゃ業界萎むわと。
とは言え頑張って熟読し、更に梅田のヨドバシや、日本橋の諸々をひやかして参りますと、おおよそ自分の好きな音の方向性が分かってきました。
私が好きな音は、解像度重視ではなく、音の艶とか響きとかそっちを求める性向があるようです。そうなると、スピーカーはウィーンアコースティクスあたり、アンプはラックスマン、プレーヤーは…難しい。ラックスマンの型落ちD-06あたり、となってくるわけですが、これらを揃えると、ザックリ100万はかかるわけですね。ええ。
流石に二児の父たる者が、それは如何なものかと。いくらカメラにウン百万ブッこんだ私とは言え、もういい加減いい父なわけですよ。
しかし事ここに至って、下手なシステム組む気はサラサラないという困った性格ですので困ったもんです。
…というような、馬鹿な考えを巡らせることが、マイブームでしょうか。

うん。半年ぶりに書きましたが、相変わらず何も成長していません。人間ここまでくるともう変わりようがありませんね。

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