という車を、皆さんご存知でしょうか。
マツダという自動車メーカーが、約25年前に、名車ロータス・エランを超えるべく開発、販売を開始し、その後世界中で累計約100万台売り「オープンカーの販売台数世界一」というギネス記録を作ったり、或いは、世界中に「オープンカーブーム」を巻き起こし多くのフォロアーを生みました。
例えば、ポルシェ・ボクスター、BMW・Z3(現Z4)、ベンツ・SLK、フィアット・バルケッタ。それら全てマツダ・ロードスターの言うなればパクリです。
特に、当時経営改革まっただ中にあったポルシェにとって、この世界的なオープンカーブームは渡りに船どころではなく、神風のレベルで販売台数を後押しし、その経営は一気に改善したわけで、ポルシェはマツダに足を向けて寝られない立場なんですが、まぁそれはさておき。
そんなロードスター。言うなればマツダの魂のような車が、今回、フルモデルチェンジしました。
以前、もう3年前になりますが(!)私がRX-8の試乗記をここに書いた時に、「究極のライトウェイトスポーツを、私は心から期待しています」とロードスターへの期待で文章を結んだ記憶がありますが、果たして、新型ロードスターはどうなのか。
昨日、振休を取った際に、近くのマツダディーラーの門を叩いたわけです。
さて。
まぁ結論から先に言いましょうか。
私にとって、空冷ポルシェ911と並ぶ衝撃。そう結論付けるに何ら躊躇いはありません。もし私がまだ独身であったなら、昨日あの場で買ってました。そんなレベルです。
もう少し詳しく行きましょう。
営業の方のお話を斜めに聞きながら、試乗車に乗り込み、ATだったことに失望しながら、シートポジションを合わせた段階でこれは素晴らしいと確信しました。見事なホールディングと完璧なドラポジが取れます。まぁ若干ミラーが近い気がしますが、例えばインサイトのような視界を全面的に遮るクソ配置ではありません。許容範囲。さて、ブレーキを踏みながらスターターボタンを押します。
1.5リッターの直4に火が入り、セレクターをドライブに。スルスルと走り出します。ディーラーの出入り口から車道に降りる段差のいなし方が実に自然。しっかりとした剛性と足です。ゆっくりアクセルを踏み込み、自然な加速とステアフィールを味わいながら暫く進んで赤信号で止まります。はい。ここで私は違和感を覚えました。
いや、正確に言うならば、違和感がないことに違和感を覚えたんです。
意味が分からん?すいません。詳しく書きます。
例えば。皆さんが、今、乗ったことがない車を初めて運転するとします。どうでしょうか?
どのくらい踏めば加速が得られるか?どれだけステアを切れば思ったラインに乗るか?どれだけブレーキを踏み込めば制動がコントロールできるか?それらを確かめることがまず必要ですよね?
思った以上に加速したり、あるいは少しブレーキ踏んだだけでつんのめったり。
しかし、このロードスターには、それが一切ありませんでした。初めて乗った瞬間から、何年も乗り続けた車のような「当たり前」の感覚。
これは尋常な事ではありません。車線変更、ちょっとした加減速、どこにも不自然さがない。私の意思と車の挙動に、何ら介在するものがありません。完全に直結し、完璧にリンクします。
そして交差点を曲がる時、更に衝撃を受けます。とんでもなく軽い。でもしっかりとしたフィールとインフォメーションがある。本当に尋常な事ではありません。屋根を開け放った解放感ももちろんですが、自然と口角が上がり、笑みがこぼれます。面白い。楽しい。
アクセルを踏み込んで走り出す。赤信号で止まる。交差点を曲がる。遅い原チャリを追い抜く。ごく当たり前の日常を、この車は最高に楽しいドライブに変えてくれます。
本当は諸元から見たディメンションの素晴らしさや、エンジンルーム内に見る工夫の数々やら、何やらかんやら色々書こうかとも思いましたがそういう話は、本質ではありません。この車の素晴らしさは、乗れば誰もが直観的に分かります。
車を運転することが、こんなにも面白く感じる。
初めて車を運転した時の楽しさを思い出させてくれる。
そんな車です。
その昔、私が初めて空冷911に乗った時、心底驚愕したのと同じくらい、ロードスターは衝撃的でした。
車にとって軽さが如何に重要か。車にとって各種寸法ディメンションがどれほど肝要か。分かってはいましたがここまで鮮烈に実証されると、唸るしかありません。
心底、欲しいです。「いつか絶対に乗る」私にそう思わせた2台目の車です。
マツダ・ロードスター。見事です。素晴らしいです。ポルシェ・ボクスターにもベンツ・SLにも乗ったことがありますが、そんなもの全く目じゃありません。間違いなく世界最高のオープン2シーターです。これほど見事な車を作り上げたマツダの皆さんに、どれほどの賛辞を送っても足りません。今、このご時世に、この車を作れたことに驚嘆すると同時に、最大限の謝辞を送りたい。スポーツカーは死んでいません。ロードスターがある限り、日本のスポーツカーは死なない。
マツダの皆さん。これからも是非こんな車を生み出してください。
今度はそう。ロータリーを積んだ、あのピュアスポーツを。