昨年から散々行くと言ってましたレクサスに、遂に行ってきました。
ISこと新型アルテッツァに500万円の価値があるのか。
散々騒がれていたオモテナシとは如何なものか。
仮想敵BMW3に対して果たしてどうなのか。
確かめることはたくさんあります。
というわけで、寮の近く、幕張のレクサスに向かいます。
さて国道14号を東京方面に向かい、幕張の住宅展示場の横がレクサス
です。
入っていき駐車スペースへ。私が奥に停めようとすると、営業マンが手
招きして真ん前に誘導されました。わざわざドアまでやってきてお出迎
え。流石オモテナシ。
自動ドアをくぐり店内へ。スタッフ一同起立礼着席。流石オモテナシ。
ご自由にご覧下さいということでフリーにされる。
営業マンも付きますが、客の視界に入らないよう配慮してます。
流石(ry
さて、展示車両ですが、ISの250と350、GSの350と430
あとSC430、要するに全車種が飾られてます。
何より目に付くのはボディ塗装の光沢です。素晴らしい。素晴らしい光
沢。
国産で言うところのセンチュリークラスです。外車では該当がありませ
ん。
RRやベントレー、マイバッハ、アストン、ディムラーなどを除けば世
界でもトップでしょう。そのくらいの質感です。
ISのドアを開けドライバーズシートに座ってみます。思ったより狭
い。かなりタイトな仕上がりです。後席に座ると本当に狭い。5ナンバ
ーサイズなみ。
これも「スポーティ」という演出のうちか?
しかし各部の設えはしっかりとしてます。いい仕事です。あと、マーク
レビンソンのカーステレオが凄い。有り得ない音。
さて、営業マン氏に色々お話をしてみました。どの質問に対してもマニ
ュアル通りのお答え。どうも知識が浅い。たぶんこの方は元はトヨタの
営業じゃないでしょう。
他業種からの参入でしょうか。BMWと比較して話をされますがBMW
をよくご存じないので、どうもズレて抽象的な話になってしまいます。
恐らくは徹底的な社員教育の賜物なのでしょうが、押しの強さは一切あ
りません。
ただ、なんというか。もう少し営業っていうのは、まぁいいか(ぉ
さて止まっているものを幾ら眺めても本質は分かりません。
というわけで乗ってみました。IS350バージョンSです。
318馬力、トルク38.7という一昔前のM3並のパワーを誇る35
00ccV6を積むISのトップレンジ。「S」は「スポーツ」です。
足を固め18インチのタイヤを履きます。この試乗車はマークレビンソ
ンのオーディオとサンルーフのオプション約40万円が入ってまして、
締めて530万円也です。
さてシートを合わせ走り出します。アクセル、意外に重い。出足がちょっと悪い。
もう少し踏み込みましょう、おぉ今度は上手くいった。さてブレーキ。
おぉちゃんとタッチが重たいじゃないですか。おぉしかもちゃんと効
く。足も硬いですが、なかなか頑張ってサスが動きます。ハンドルもし
っかり手応えがあります。レーンチェンジも
キビキビとしてます。試乗コースに高速もありましたので、営業マン氏
に断りを入れて踏んでみました。凄いパワーです。一瞬で140くらい
まで(ぉ
車は完璧に安定してます。国産とは思えません。そこからのブレーキも
しっかりちゃんとききます。
約20分程度の試乗を終え、帰ってきました。
アンケートを記入し、カタログ一式を頂き、終了です。
さて、では結局ISはどうなのか。
よく出来た車です。特に「目に見える部分」は世界でも最高のレベルに
あるのではないでしょうか。走りに関しても、決して悪くありません。
パワーは申し分ありません。そりゃそうだ320近い馬力ですからね。
ただ、どーもアクセルの開度とパワーの出方がチグハグです。出て欲し
い分のパワーが出ない、或いは出過ぎる。といっても、その他の日本車
よりよほどいい躾です。
ブレーキの利きも十分に効く。しかもコントロールもしやすい。
ただもう一つ難点を挙げると、止まっている時、狭く感じる車が動き始
めると大きく感じます。……この感想が実は非常に大きな意味を持つの
ですが、それはおいおい。
でも本当によく頑張って作られた車です。
今まで本当に様々な日本車に乗りましたが、間違いなくナンバー1で
す。
GSはISよりラグジュアリーに振ったモデルですので、つまりISは
日本最高のスポーティセダンと言っても過言ではありません。
日本一の車ISは、では世界と比較して、どうなのか。
というわけで、その後、行ってきましたBMW幕張。
レクサスに比べればそりゃもう金かかってないショールーム(失礼)
受付のおねーさん達の教育もなってません(失礼)
営業マン氏は武田哲也似のオジサンでした(失礼)
さて、お話をしましたが、そりゃもう、流石にBMWの営業さん。素晴
らしい知識です。
私以上です。そりゃそーだ。まぁ営業トークというか、単なるBMW好
き同士の超濃い話になってしまいましたがまぁお陰で最近のBMW、特
に3について色々と教わりました。
さてさて
ではそもそも「走りがいい車」を作るには何が必要なのでしょうか。
1、軽いこと
2、重心が低いこと
3、重量バランスがいいこと(重量物をできるだけ真ん中に)
実はたったこれだけのことなんですが、昨今の車に求められる快適性、
安全性、環境性能などはこれらと全く相容れない物なのです。で、どー
するか。多くのメーカーが上記項目には目をつぶって後付コンピュータ
制御で誤魔化すわけです。一番金かからず簡単でしかも「電子制御」と
いう何だか偉そうな響きでイメージもいいですからね。
さて、BMW3です。E46からE90という形にモデルチェンジしま
した。
横幅が遂に1800を超えデカすぎと大騒ぎです。クリス・バンクルのデザイン(正確にはバンクルのデザインではないのですが)にも目が慣
らされたのか、そんなに違和感がありません。
まぁ外面は置きましょう。
この3ですが、上記を満たすために、各部にもう涙ぐましい努力がされ
てます。
エンジンにもシャシーにも足回りにも「目には全く見えない部分」に、
しかし一切の妥協なく、また惜しみなくコストをかける。
例えばエンジン。今や天然記念物の直6エンジンを更に進化させるため
バルブトロニックを付けましたが、ヘッド周りが付加物のために重くな
りました。高い位置に重い物が付くのはよろしくない、ではどうする
か。ヘッドを軽くすればいい、というわけでヘッド周り及びエンジン本
体たるブロックをアルミより更に軽量のマグネシウム合金にしました。
しかしマグネシウムは水に決定的に弱いです。エンジンはウォータージ
ャケットに包まれることで冷却されてます。水とは切っても切れません、じゃあどうするか。
単なるマグネシウムではなく、複数の金属を独自の比率で合金化し、そ
の問題を解決しました。また単純にマグネシウム合金製ではありませ
ん。剛性が求められるブロック中央部はアルミ製です。つまりマグネシ
ウム合金とアルミ合金のハイブリッドです。有り得ない
くらい偏執的なこだわり。もはや執念。
また例えば、足回り。まずは軽量化です。バネ下の荷重を減らすことの
重要性は今更言うまでもありませんが、総アルミにし軽量化を果たし、
且つリアを5リンクにブランニューあわせてフロントサスも新設計。
ストラットの剛性とダブルウィッシュボーンの追従性を両立させたダブ
ル・ジョイント・スプリング・ストラット方式を採用、またサスの取り
付け剛性を最大限高めるなどなど枚挙に暇がないですが
要するに、偏執的なまでに微に入り細に亘り、徹底的に最善を求める。
ハードを完璧に追求し、電子制御はあくまでもその補佐、というのがB
MWの姿勢です。
さて能書きはこのくらいにしましょう。実際に乗ってみました。323
のMスポーツです。
177馬力トルク23.5の直6、2500ccです。排気量は100
0cc小さくパワーは約半分でお値段はIS350と殆ど同じ516万
円也。
実際乗るとボディサイズはISと変わらないのに、キャビンスペースは
大変広いです。特に後席のゆとりは特筆物。このパッケージングは凄い
ですね。
さぁシートを合わせ走り出します。
走り出して数十秒で思わず
「あーBMですねぇ」
とつぶやきました。
アクセルも、ブレーキも、ステアフィールも、何から何まで「BMW」です。
何もかもが自然。欲しいだけパワーが、制動力が、旋回性が得られま
す。
どこにも不自然さが、違和感がありません。本当に手足のように動く。
現行5が出た時に乗って、正直、あまりの薄味にげんなりしたのです
が、この3は素晴らしい。ちゃんとしっかり「BMW」です。一見電子
制御の塊に見えても魂は全く失っていません。走る前に大きかったボデ
ィは、走り出してからはコンパクトに感じます。素晴らしい一体感。ま
た最も重要なエンジンフィール。バルブトロニックとマグネシウムのブ
ロックということで不安がありましたが、物の見事に裏切られました。
ちゃんと「BMWの直6」です。寧ろ今までのアルミブロックよりいい
かもしれない。
素晴らしい。デビュー初っ端でこの完成度。素晴らしいです。でもここ
からが本番ですこれからまた毎年、いや半年毎にマイチェンを重ね熟成
されていくのが楽しみです。
どこまで高みを見せてくれるのでしょうか。
また、このE90ベースのアルピナが見てみたい。心が躍りますね。
さて、そろそろ総括しましょう。
レクサスIS。確かに凄い車です。何度も言いますが、日本一です。
ですが、スポーティセダンという土俵で世界を相手に戦った時、残念な
がらBMWにはまだまだ及びません。なんせBMWはこのカテゴリーを
初代3シリーズ(E21)からちょうど30年間、源流たる2002そ
してノイエ・クラッセまで遡ればざっと40年間リードしてきたんです
からね。
10年じゃなく「40年早い」
ではどうすればいいのか。残念ながら「○○が足りない」という単純な
話ではありません。
私が「ISは大きく感じ、BMWはコンパクトに感じた」それこそが、
どうにも埋めがたい「差」の具現です。それを埋めるにはエンジンもシ
ャシーもサスもATのマナーもそれらの総合的セッティングも、全てが
まだまだ圧倒的に経験値が足りない。
でもそれは仕方ありません。何せトヨタは去年初めて、本気で、世界に
対する車を作り始めたばかりですからね。
ここから継続的な「熟成」を重ね、常に最善を求め続けて行かなければ
なりません。
そしてもう一つ。
「レクサスにしかない何か」
が必要です。
BMWの駆け抜ける喜び、アウディの精緻を極めた圧倒的なクオリテ
ィ、メルセデスの天下無敵のブランド力。それに比べ、レクサスは全く
キャラが立っていません。
今のレクサスはまだまだ未完成です。
これから先、目的地を明確に定め、いかに真摯に車作りをするか。全て
はそこに掛かっています。
さて最後に、冒頭の問い
「ISに500万円の価値があるか」
今、私に500万円の予算があり、セダンを買うとして、ISを買う
か。
残念ながら買いません。まだ「今」のISに500万円の価値を私は見
出せません。
これから5,6年先。「次」のISがその価値を持てるようになるの
か。レクサスが
「自称プレミアム」ではなく万人が認める「真のプレミアム」になれるのか。
非常に興味深い問いです。
また、そうなることを希求しております。
やはり何と言っても、日本の車が、世界一になってほしいですからね。
先日、私はトヨタを見限ったと書きましたが、改めます。
もう少し見守る事にしましょう。
レクサスが本物になるよう祈りながら。
style="text-align:right">Keywords:次もレクサスのお話