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オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その7【怒涛編】

数々の試聴を重ね、概ねスピーカーの方向性が定まってきたある日、本屋に訪れた私はいつものようにオーディオ雑誌コーナーで立ち読みでもしようかと棚を見ていましたら、そこで一冊の本を見つけます

「SPEAKER BOOK 2017」

手に取ってみますと、様々なスピーカーブランドの商品を金額順に挙げ商品説明をギッシリ記した内容。成程これまでスピーカー専門誌なんて読んだことがありませんでしたから、これは有益な本だと買うことにしました。
家に帰って早速、パラパラと読んでみます。そしてその127ページ目。このページを読んだがために、当初予算など粉微塵に吹っ飛ぶことになるわけです。
そこに記されたスピーカー、それが

アップロードファイル 739-1.jpg
BRODMANN F1

でした。
それは大変変わったカタチをしています。普通このクラスのフロアスタンディングのスピーカーならツイーター1つにウーファーが2つか3つ並ぶのが定石です。しかし、どこにもウーファーが見当たらない。
そして何より小さい。幅170mm、高さ929mm、奥行228mmは望外の小ささです。そう「小さい」というのは私にとって大変重要です。対配偶者戦略として、重厚長大なスピーカーは極めて好ましくありません(その辺がベートーヴェンを躊躇した理由でもあります)
さて説明文を読み進めると、オーストリアはウィーンで製造されていること。元はベーゼンドルファーのスピーカーであったこと。ウーファーは側面につけられており、更にその前にサウンドボードと呼ばれる共鳴構造があることなどなど、私の興味を引くに十分すぎる内容が続き
最後に、トドメの一文

「80歳ほどの高齢な学者(製作者ハンス・ドイツ)にとって、モーツァルト、ベートーヴェン、リスト、ショパン…こそが音楽であり、ジャズやロックは氏の人生にはない」

……これは要するに、私の為のスピーカーではないか?

雑誌記載の内容では十分ではありません。ホームページでも様々情報を仕入れました。

http://www.brodmann.jp/index.html

概要を改めてまとめますと
音響エンジニアであるハンス・ドイツ氏が、仕事を通じて40年来の親交があったカラヤンからの勧めもあり、ピアノメーカー「ベーゼンドルファー」がスピーカー部門を立ち上げた際に、その設計を担当。一般的なスピーカー設計と全く異なる(バスレフやダンピングファクターを一切使用しない)設計で新たなスピーカーを生み出しますが、当のベーゼンドルファーが経営難に陥ってヤマハに買収される際、スピーカー部門はお払い箱となりました。切り離されたスピーカー部門はそのまま、中国資本のオーストリアピアノメーカー「ブロッドマン」へ移籍。
そこでベーゼンドルファー時代のそれを改良したスピーカー作成を再開させました。特許を取っている「ホーンレゾネーター」や独自のサウンドボードなど、色々理屈はありますが、一言で言えば、スピーカーをスピーカーではなく「楽器」とみなして設計している、と言えます。一般的なハイエンドスピーカーと真逆の思想ですね。
読めば読むほど、興味が湧きます。これは一度聴いてみたい。なんとしても聴いてみたい。
ホームページには取扱店が挙げられており、大阪でも2店舗がありました。私はすぐにその2店に連絡してみましたが極めて残念ながら、両店とも現在試聴機はないとのこと。というか、殆どそのスピーカーの存在を知らない様子。

困った。どうにもならない。

まさかスピーカーの試聴のために東京に行くわけにもいかない。どうしたものか。
悶々とするなか、ある日、私はオーディオ誌の広告ページで、捨て置けない情報を見つけます。

「大阪ハイエンドオーディオショウ2017 開催」

そしてその参加店リストの中には、BRODMANNの輸入代理店フューレンコーディネートの名前が。これは行かねばなりません。万難を排し、私は当日、仕事を早々に切り上げ大阪心斎橋に乗り込むのでした。

…ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その6【飛翔編】

絶品館(仮名)で、オーディオ専門店の洗礼を受けつつ、自分の音の好みと値引き率を知った私は試聴フィールドをヨドバシ梅田に変更し、都合3回くらい、本当に色々試させて貰いました。
まずアンプとCDプレーヤーですが、LUXMAN、DENON、YAMAHA等々をそれぞれ比較し(AIRBOW 憎けりゃMarantzまで憎い。の理屈でMarantzは除外。ならDENONもダメじゃねーかというツッコミは無しで)その中ではLUXMANが個人的には最もよく感じました。アンプはL-550AX2、CDプレーヤーは確かにD-06uは素晴らしいですが幾らなんでもCDプレーヤーに50万はかけられない。半値に近いD-05uで私には十分と思われます。

さてスピーカーです。
念のためB&Wのブックシェルフ型の最高峰805D3も聞いてみました。流石にCM6 S2とはまるで次元が違いますが当然方向性は同じです。とにかく明確。しかしどうしたことか私の好みに合わない。
カメラでもシグマのレンズが嫌いな私は、オーディオでも解像度命系は好みと違うようです。てか、そもそも予算が全く合いません。(スタンドと合わせたら約100万円です)
では特にクラシックに強いと言われるTannoy、DALIはどうか。それぞれフロアスタンディング型を聞いてみる。値段は805D3の遥か下にも関わらず、個人的にはこちらの音の方がまだ好みに合います、が、それでもまだピンと来ない。私の中でやはりVienna-acousticsのハイドンの音がまだ強く残っていました。
では、その上位機種「Mozart Grand Symphony Edition」(以下 モーツァルト)を聴いてみましょう。
…弦が美しい。本当に美しい。DALIのRubicon6と比較しても、弦の響きが明確に違う。Tnnnoyのフロアスタンディング(名前忘れました)と比較してもオーケストラの広がりが違う。そして同社のハイドンと比べると低音の力強さ音場の広さが格段に違う。これは凄い。モーツァルトでこれなら更に上ならどうなるのか。いや全体予算的にはもうモーツァルトでいいのではないか?店員さんに聞いてみますと3wayになるベートーヴェンは低音は勿論、全体のスケール感が更に大きくなるとのこと。ただし、ヨドバシには試聴機なし。
またVienna-acousticsより弦が美しいスピーカーメーカーはありますか?と問いますと、PIEGAがお勧めとのこと。スイス製でリボンツイーターの原理がどうにもよく分からないあのPIEGAですかそうですか、でもお高いんでしょう?ええとっても。これもヨドバシでの取り扱いがないとのこと。こういう商売っ気の無い本音で教えてくれる店員さんは本当に有り難いです。

さてしかし金額的な事を考えると、やはりVienna-acousticsがベストなのか。ただ私には一つ気になるスピーカーがありました。DYNAUDIOの40周年記念モデル「Special Forty」(以下SP40)です。
当然ヨドバシには置いてない。ですが、調べると日本橋にあるオーディオ専門店河口無線で試聴可能。
ということで、CDを幾枚か持って実際に行ってみました。
店員さんにSP40を聴きたい旨、伝えると極めて快く案内して頂きました。SP40は意外と小型なブックシェルフ。高そうなAccuphaseのプリメインアンプ(型式忘れました)、外国の超高額なCDプレーヤー(これも名前忘れました)に繋がれており、私は愛聴盤であるブルックナー5番の究極の名演(ヨッフム=アムステルダムコンセルトヘボウ1986年)その第4楽章をかけて頂きました。さて試聴はあくまで試聴。ですので初めは数分で切り上げるつもりでした、が、しかし。
鳴り始めるともう、とても途中で切れません。凄い音です。リアルです。スピーカーが確かに消え失せ途轍もなく広い音場が広がります。感覚としてはコンサートホールの中央、少し後ろの席で聴いている感じです。途中から「スピーカーの試聴」という感覚は完全になくなり、音楽に浸ってしまいました。素晴らしいブル5。
そして、これは今でも明確に思い出せますが、最終のオケ全体の強奏によるコーダ。もう完全に、目の前にアムステルダムコンセルトヘボウが居ました。鳥肌が立つどころではなく、私は涙がこぼれるのを必死に我慢する始末。
これはとんでもないスピーカーです。申し訳ないことに結局第4楽章をまるまる聞いてしまいました。
もうこれでいいんじゃないかと、殆ど決断を下しそうになったのですが、次にかけて頂いたフルトヴェングラーの戦中録音のベートーヴェン7番が残念ながら全てをひっくり返しました。何せ酷い。音が耳にナイフのように突き刺さります。録音の悪さがモロに出て全く聞けたものではありません。これは本当に困った。フルトヴェングラーが聴けないのは致命的な大問題です。
…いやこれは特に厳密な音を作るAccuphaseだから不味いのか、Luxmanならもしかするとマシかも…などと考えますが、何れにせよスピーカーの特性は変わらない訳ですから、どうにも不味い。
と困っていると店員さんが、ソナスを聴いてみますか?とのこと。予算オーバーではありますが一度聞いてみたいスピーカーなので是非お願いしますとかけて頂きました。Olympica Iです。これが意外でした。というのもソナスファベールと言えば、過剰なまでの美音というイメージでしたが、このOlympica Iはモニター系とまでは行きませんが、どちらかと言うと解像度重視の音に感じます。ただそうは言ってもやはり弦の響きは美しい。先ほどSP40で全くダメだったフルトヴェングラーも、刺々しさが消え耳に心地いいです、が、どうにも何か違う。Vienna-acousticsで聴くベートーヴェンは、ちゃんとベートーヴェンなのですが、Olympica Iは響きが何かイタリアのノリというか何か釈然としません。まぁ多分に先入観による物なのかもしれませんが、オーディオは主観が全てです。そう感じるんだから仕方ない。

…困りました。SP40は素晴らしいスピーカーです。ブックシェルフでありながら、モーツァルトを超える実演感がある。ただ録音の瑕疵が見えすぎ私にとってそれは最悪の欠点です。となれば、やはりモーツァルトの上位機種「Beethoven Baby Grand symphony Edition」を狙うしかないか…
店員さんに心からのお礼を申し上げて、しかし心中複雑な思いで帰路についた次第。

というわけで、最も音を決定付けるスピーカー選びが遅々として進まない中、一方でもう決めていたCDプレーヤーについてヤフオクで極めて優良な出物があり(LUXMAN正規店の展示品の払い下げ。新品扱いで保証が付き値段は6掛け)私はそのD-05uを万難を排し落札しました。
さて家に届いて、CD部がぶっつぶれたBOSEのAWMに取り敢えず繋いで音を出して、心底驚いた。
…以前、半分冗談めかして、CDプレーヤーの重要性を語り、理屈ではそうだと分かっていましたが、まさか本当にここまで違うとは。
全く音が違います。鮮明さが半端ではありません。そうですね。例えば、その筋では有名な1945年1月23日ドイツベルリンにて録音されたギーゼキングによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番。これは現存するほぼ最古の「ステレオ録音」として有名であると同時に、演奏の後ろで、ドイツ軍による首都防衛のための高射砲の発射音が記録されていることで有名です。(Wiki先生によると12.8 cm FlaK 40(アハトアハトの後継のようですね) )
で、この砲火の音ですが、今までのAWMのCDプレーヤーでは「言われてみれば確かに聞こえる」というレベルでしたが
D-05uで聴けば、もう、完全に聞こえます。恐ろしくクリア。
と、まぁそのような音のクリアさもそうですが、それが刺々しい音にならないのが、流石はLUXMAN。
私は大いに満足し、アンプも当然、同社のL-550AX2、そしてスピーカーはまぁ恐らくベートーヴェンか或いはSP40にしようかと、ほぼほぼ決めていたある日、偶然書店にて購入した一冊の本が、全て、何もかもを根底から覆すことになるわけですが、もうほんといい加減長くなったので、また次回。

ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その5【風雲編】

さて、前回は何がハイエンドオーディオ入門なのか全く分からない話でしたので、今回は方向を戻しましょう。
そもそもハイエンドオーディオ、というか、ピュアオーディオとは何か、というお話。「その5」まで来てそこに戻るか、というツッコミは無視して続けます。

一般に「ピュアオーディオ」とは、オールインワンの音楽再生システム(ラジカセなど)ではなく「CDプレーヤー」「アンプ」「スピーカー」など、各種コンポーネントが、独立している機器類を言うようです。

では「音楽を再生する」過程を追ってみましょう。

まずソース(CDを仮定)からデータを取り出すことが必要ですよね。ここは当然「CDプレーヤー」が必要になります。
そしてその「CDプレーヤー」の中では、おおまかに2つの仕事が行われています。一つはCDに記録されたデジタルデータを読み取る部分(CDトランスポートと呼ばれたりします)二つ目は、読み取られたデジタルデータそのものでは音楽は鳴りませんので、デジタルデータをアナログの電気信号に変換する部分「DAC(Digital-to-Analog Converter)」が存在します。
※行き過ぎたハイエンドオーディオでは、この2つをそれぞれ独立した機械で行ったりします。凄いのはそれぞれ250万の2つで500万とか。百歩譲ってDACに金かけるのはまだ分かりますが、CD読むだけに大金かける意味が分かりません。凄いお布施。

さてCDプレーヤーで無事録音デジタルデータはアナログ電気信号に変わりました。しかし、この電気信号は極めて微弱でありスピーカーを駆動し、空気を震わせて音を発生させ、人間に「音楽」であると認識させるには全く至りません。そうするには電気信号を増幅する必要があります。それを担うのが「アンプ」となるわけです。
そしてそのアンプにも、おおまかに2つの役割に分かれます。
一つはどのようにアナログデータを増幅するかについて指示したり、音量=出力を調整する部分「プリアンプ」と、その指示に従って実際に電気信号を増幅する部分「パワーアンプ」に分かれます。大体はこの二つの役割を1台で担う「プリメインアンプ」となる訳ですが、「プリ」と「パワー」がそれぞれ分かれた「セパレートアンプ」ならまだしも
スピーカー1台につき1台のパワーアンプを使用する「モノラルパワーアンプ」などという業の深い世界もあります。
酷いのになると、プリアンプ、モノラルパワーアンプ(2台)それぞれ500万ずつで合計1500万とか。もう宗教超えてますね。

もういい加減しんどくなってきましたが、ようやく音楽データが増幅された電気信号になりました。
あとはそれに従って空気を震わせるだけです、が、これが一大事。
残念ながら音は、超低音から超高音まで、超幅広く存在するわけで、それを上手く再現する=空気を振動させるのを1つのユニットで賄うのは困難です。そりゃそうですよね。低音と高音では周波数が異なるわけですから。ですので一般的に、低音を受け持つ「ウーファー」と中高音を受け持つ「ツイーター」が分かれた2way式が多くなります。勿論もっと細分化して3way、場合によっては4wayなんかもありますが、ユニットが増えれば当然制御も難しくなりますから単純に増やせば良いとは限らなかったりします。さらにスピーカーの本体=箱にも色々形状があり…ともういいや。しんどい。
ちなみにスピーカーも酷いのになると3000万円とかします。頭がおかしいとしか。

さて上記の3部位についてはまだ分かりますが、それぞれの機械を繋ぐための各種ケーブル類。更にそもそもの電気を持ってくる電源コード、電源タップなどなど周辺器具各種に至っては最早宗教すら超越し完全なオカルトの世界が広がりますので、取り敢えず、置いておきます。

…では、これら3部位にどのようにお金を振り分けるべきか?

よく言われるのは、音を決定づける順番として、スピーカー>アンプ>CDプレーヤーとされていますが大元のCDプレーヤーがクソだと、そこから先はクソを増幅した巨大なるクソになると言えなくもありません。
その理屈を前面に押し出し「プレーヤーこそ金を懸けるべき派」も存在しますが、まぁ流石にそれは言い過ぎかと。
私個人的にはよく言われる順番のとおりだと思います。
というわけで、私は各種雑誌及びネットを彷徨い、まずスピーカーについて幾つかの候補を上げました。

モニター系代表=B&W
クラシックを聴くなら=Vienna-acoustics
その他にもTannoy、DALI、あとDYNAUDIOなんかも聞いてみたい。

もの凄く前段が長くなりましたが、では実際に聞きに行ってみましょう。
また試聴もそうですが、オーディオ専門店の値引き率を把握したいというのもありました。

…で、初めに門を叩いたのは、何を考えたか、大阪を代表する超個性派のお店「絶品館(仮名)」
初心者が行くには余りにもハードルが高い店ですが、逆に言えば最難関を知っておけばあとはどこ行っても大丈夫だろうと。
というわけで、私は外回りの途中でフラッと寄ってみたのでした。
想像より小さな店舗。ドアを開け入ってみますと、まぁ当然ながら音楽が鳴ってます。いい音。店の中には常連さん(?)のような先客が店員さんと話し込んでました。私はお店に並ぶ各種スピーカーやらアンプやらを暫く眺めていますが、他の店員さんも、私には声をかけて頂けないのでこちらから話しかけ凡その予算と主にクラシックを聴く旨伝え、お勧めのモノを教えてくださいと。
で、初めに鳴らして頂いたのはB&Wのブックシェルフ型。丁髷のようなツイーターが乗るCM6 S2です。
目の覚めるようなシャープな音。とにかく音が明確です。成程これが所謂「音の解像度が高い」という奴か。極めて分かりやすい高音質。ただ、どうしてでしょう。私には、あくまでも私的には、耳に突き刺さる感じがしてどうにも全く好みにあいません。
で、次に鳴らして頂いたのは、私的に本命のVienna-acoustics。そのエントリー機種であるHaydn Grand Symphony Editionです。
もう、鳴り始めた最初の弦の響きで「あぁこれだ」と。素晴らしい響き。全くB&Wとは異なります。CDプレーヤーとアンプは、そのお店の自社ブランドである改造マランツのままですから、完全にスピーカーの個性です。別に解像度が低いわけではありません。B&Wに比べ音の輪郭が別段不明瞭になったわけではないですが、角が取れるというか響きが自然です。音源をピアノ曲に変えて頂いても感想は変わりません。自然。交響曲に変えても何の不足も感じません。
「もしかしてこれで十分じゃないか?」
私の脳裏にそのような考えが浮かびます。ただ一方で上位機種が気になります。モーツァルトとベートーヴェンですね。(ともにスピーカーの名前)本当はそれらを聞かせて欲しかったのですが、試聴中、色々質問してもあまりお答えを頂けず、これ以上試聴を申し出るのが憚られる空気が充満していました。
まぁおそらく私のようにオーディオド素人で、予算総額100万程度の人間は、やはりこの店の客ではない様子。それぞれの金額を伺うに留め、辞去した次第。
ただ極めて大きな収穫がありました。私が好む「音の方向性」が掴めたことです。
とは言えやはりまだ専門店は敷居が高いことも理解が出来ましたので、試聴フィールドをド素人にやさしいヨドバシ梅田に変更し、様々比較検討するわけですが、いい加減疲れたのでまた次回。

ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ。

…なんかほんとにその10まで行けそうな気がしてきましたね。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その4【策謀編】

さて既婚者にとって、大きな買い物をする際に最も障壁となるものは?
無論「金」は大きな問題ですが、ある種それ以上に大きな関門は
「配偶者の同意を如何にして得るか?」
これに尽きると言っても過言ではありません。
これが例えば「貴方が欲しい物を買うんだから私にも何か買って系」であれば、事は簡単です。
買えばいいだけの話ですからね。
しかし、うちのように

「そもそも極めて物欲に乏しく、新たな買い物をすることを極端に忌避する」

という、私の真逆を行く奇特な価値観を持つ相手を如何に説得するか。これは難しい。
例えばカメラの場合、仮にレンズが無尽蔵に増えたとしても、ライカのレンズは外見が極めて似てますから気付かれるリスクは低いです。またカメラ本体にしても同様に、ライカは外見が酷似してますから元々あったM8からM9-P、更にM3を追加したとても「同時に複数台ある状況」さえ見せなければ。そう「シュレディンガーのライカ」を維持し続ける限り、彼女の中で未だ私は「(M型ライカは)1台しか持っていない事」になっているはずです(たぶん)

…しかし、オーディオはそうはいかない。黙って買って誤魔化すのは不可能です。

難しい。どうにも難しい。
これまでの経験上、短期決戦は絶望的。ということで私は持久戦を展開しました。とにかく、今のBOSEのAWMがいかにダメかを分からせ、新規購入止む無しとなし崩しに同情させる作戦です。
というわけで私はこの1年以上、BOSEで、可能な限り音楽を聴き続けました。当然調子を崩していますから、最低1回、良い時(?)は2度、3度と再生が止まってくれるわけです。
その度に私は様々なパターンのリアクションを取ります。

・何も言わず淡々とかけ直す。
・打ちひしがれながら静かにかけ直す(往々にしてほんとに打ちひしがれてます)
・ごくまれに「あーもーいい加減にしろ!」と少し語気を荒げてみる(往々にしてほんとに(ry

と言うことを繰り返しているうちに、向こうから、そう向こうから
「修理できないの?」
の一言。来ましたねコレ。ええ待ってましたよほんと。
「…もう 1 5 年 も 昔 のだから修理も効かない」(超寂しげに)
「……そう」

…ここで深追いは禁物です。まだ早い。まだ慌てるような時間じゃない。その辺りから私は、オーディオ誌を読み始めました。で、カメラやその他雑誌とともにさりげなく、始めは1冊。そして徐々にその比率を高めていきます。そこまで来てから、例によってBOSEの再生が止まってくれたタイミングで

「…そろそろいい加減、新しいのを買おうと思う」
「…(無言)」

勿論、私はここで承諾を得ようとは思っていません。そんな甘い考えは毛頭ありません。
「明確な、揺るぎない意思表示をする」
これが一番大事。
また更に時間が経って。雑誌に交じって、ヨドバシから貰ってきた各種カタログも混ぜてみます。

「今度聞きに行ってみる」
「…(無言)」

まだ明確な肯定は得られません。得ようとも思ってません。

ただもはや、否定はされません。

これが一番大事。負けないこと。投げ出さないこと。そんな感じ。
事ここに至れば、外堀は埋まりました。あとは焦らず、事を慎重に進めるだけです。その後もずーっとBOSEは「いい仕事」をしてアシストしてくれたのは言うまでもありません。

知識もある程度つき、遂に配偶者の無言の消極的承諾も得ました。

さぁいよいよ、実際に聴きに行ってみましょう。
一体どこが「ハイエンドオーディオ入門」なのかさっぱり分かりませんが、まぁそれはそれ。

ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ。


※さて残念ながら書き溜めたストックはここで尽きました。
明日以降の連続更新は、うちの嫁が全面的に新オーディオ導入に賛成する確率より低いですから、ご覧頂いているごく少数の奇特且つ有り難い読者の方々は気長にお待ち頂きますよう、何卒宜しくお願いします。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その3【雌伏編】

「具体的にはディスクリート構成の入力バッファー回路、音量調整回路は増幅回路と一体化した“新LECUA1000”を採用。また独自の負帰還方式のODNFも最新のVer4.0という具合だ」

……なんの具合?
※「季刊オーディオアクセサリー」誌上のLUXMANプリメインアンプL-550AX2の解説文の一部(原文ママ)

…オーディオに対する知識不足を補うため、私は書店にてオーディオ専門誌を購入して読んでみたのですが、えー、全てのページが、大体こんな感じの文章で埋め尽くされています。

さっぱり分からん。全く分からん。何語?

ハッキリ申し上げて、今のオーディオ不況は業界側にも責任があると思います。余りにも排他的すぎ、余りにもマニアックすぎる。格ゲーやシューティングや音ゲーが寂れたのと同じ文脈です。
というか、そもそも。どんなに解説文を読み込んだところで、それは所詮「文字」に過ぎません。そこから「音」は全く聞こえません。あくまでも想像する他にありません。
これが例えば同様にマニアックな世界でも、カメラのレンズの話だとまだ分かりやすい。なんせレンズであれば、それで写した「作例」を見れば、レンズの素性は(ある程度の知識さえあれば)誰の目にも理解できます。
まぁ「レンガ」や「新聞紙」や「カラーチャート」を映してレンズ性能を語るあっちの業界もどうかと思いますが、それは置いておいて。

…まぁ文句を言っても仕方ありません。google先生やwiki先生の助けを目いっぱい借りながら、なんとか少しずつではありますが、耳年増ならぬ、目年増(?)的に「文章的知識」だけは少量ながら獲得して行きます。

で、なんとなく把握できたのは、この業界(ピュアオーディオ界)の音の方向性として、大まかに、極めて大まかに、且つ極端に言えば、だいたい二つの方向性がある、と言うことです。

一つは「原音再生系」
もう一つは「美音系」

美音系は分かりやすいですね。そのメーカーが定義する「美しい音」を作るために、ある程度、音に方向性を付与して鳴らす、そんな考え方。
例えばイタリアのスピーカー「ソナスファベール」なんかは美音系の最右翼。特に弦楽器や女性ヴォーカルに限って言えば「現実より美しい」とまで言われます(私の感想は【風雲篇】あたりで)

一方で、分かり易そうで分かりにくいのが「原音再生系」です。
てか、そもそも「原音」って何でしょう??
「ライブ演奏の完全再現」でしょうか?でも皆さんご存知の通り、ライブ会場の音って、超どデカいスピーカーから超ばかデカい音量で鳴り響いてますよね?「スピーカーから出た音を完全再現する」のが「原音再生」?
いや違うそうではなくクラシックならどうか。クラシックのコンサートなら楽器からの直接出た原音を拾えるか?しかし、これも残念ながら、クラシックのコンサートホールの音でさえ、スピーカーの音によるところが非常に大きいのは皆さんご承知の通りです。
では「スタジオ録音の音」を忠実に再現?これならまだ分かる気がしますが、スタジオ録音で昔ながらの一発撮りなんてものは、今日日存在しません。さんざ弄繰り回してあれやこれやと付け加えてますのでそれは果たして「原音」と呼べるのか?
…と、まぁ定義はともかく、美音系のような意図的な方向性を排し、録音データを忠実に音に変換することを目的とした音作り、と言えるようです。

なるほど理屈はほんの僅かですが、一応分かりました。雌伏の時を終え、実際に音を聞いてみたいと思います。
…が、その前に、私には越えなければならない極めて大きな関門があるのでした。
ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ。

……てかこれほんとに「その10」まで続けるつもりなのか。果たして完結するのか。

※さんざ文句を言った業界紙ですが、入門書として特選街特別編集「大人のオーディオ大百科」が大変おすすめ。
非常に分かりやすかったです。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その2【野望編】

それはいつものようにBOSEのAWMで音楽を聴いている時のことでした。
突如、音が途切れたんです。
CDに傷か汚れでもあったかと取り出して見るものの、ディスク表面は全くの無傷。となればプレーヤー側かということで、読み取り部分をカメラレンズ用のブロアーで埃やらを吹き飛ばした後、これもカメラレンズ用クリーナーで掃除。
さぁどうだと再度CDを再スタート。無事音楽が鳴り響きます。
しかし、また暫くすると…

…ということを、私は一体何度繰り返したことでしょう。
まぁ軽く一年以上は、騙し騙し使ってきましたが、流石にこれは精神衛生上よろしくない。私は主としてクラシックを聴きます。特に交響曲ではベートーヴェンとブルックナーを好みます。
フルトヴェングラー指揮の第二次大戦中録音のベートーヴェン。それは人類史上の至高の芸術と言って過言ではありません。それが演奏の途中でぶった切られる。或いはブルックナーの交響曲。彼のそれはマーラーと並んで長大です(一曲大体80分くらいかかります)いつぞやも書いたように、これが第四楽章のコーダ(最後のクライマックス)で飛んだ日には、もう本当に、心の底から腹立たしい。いっそマンションの4階から(ry

というわけで、私の中で沸々と「まともなオーディオが欲しい欲」が鎌首を擡げて参りました。
となると、ですよ。昔からあったオーディオへの憧憬も再燃します。
しかも、今はオーディオは超氷河期時代。昔のように手頃な値段で選択肢は限りなく…とは到底参りません。
極端に言えば、ゴミのようなレベルか、ハイエンドか。二者択一。
で、皆さんご存知のように、私はゴミのようなレベルのモノを、特に嗜好品で選ぶことは絶対にありません。私は人生を楽しむ主義です。無駄な出費は好みませんが、自分が本当に興味があり、好きなものに対して金を惜しむなんてことは絶対にしません。
…そのせいで車もカメラもトンデモナイことになってますが、それは置くとして。

さてしかし、私のオーディオに対する知識の無さは如何ともし難い。
この状況で専門店に行ったところで、まともに店員さんと会話することさえ出来ません。
というわけで、野望だけは大きく、その前段として私のオーディオ知識吸収の旅が始まるのです。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その1【黎明編】

タイトルからして意味不明ですが、色々あって所謂「ハイエンドオーディオ」と呼ばれる深淵な世界に足を突っ込むことになりましたので、その備忘録というか、事の顛末を少し書き連ねてみようと思います。
深淵の先人達には冷笑の的かと思いますが、それはそれで。

さて若者どころか全世代に跨る「オーディオ離れ」が進む昨今ですが、私の世代がたぶんオーディオというものにある種の憧れを持った最後の世代ではなかろうかと思います。
例えば、我々の高校時代所謂「ラジカセ」は誰もが持っていましたし、その上を行く「ミニコンポ」は皆が憧れ、しかし金などあろう筈がなく、なんとか頑張っても最廉価のaiwaがギリギリ射程距離、そんな時代です。
私も無論同様の道を進みます。大学に入ってバイトをした金で買ったのは、MDとか色々付いたPIONEERのミニコンポでした。こいつには大変お世話になりましたね。大学から、就職、一人暮らしを経て、転職し実家に戻り、結婚して実家を出るまでずーっと一緒でした。今でも実家にあります。
さてしかし、PIONEERに満足していたかというと、残念ながらそうでもなく。当時の私の最大の目標はONKYOの「Intec275」でした。初めてこのシステムの音を聞いたのは家の近くのジョーシンだったか。あれは衝撃でしたね。うちのとは雲泥の差。そりゃそうだ。価格は3倍違いますから。
ただどういうわけか縁がなく。私は大学四回生の最後の冬に、バイト先のTSUTAYAにBOSEの代理店営業を呼びつけそこでAWMという空気清浄器の化け物のようなラジカセを買った訳です。約30万。
躯体上部に前後左右合計6つのツイーターを設け、当時流行りの「立体音響」を実現し、パイプオルガンに着想を得たとか言うアホのように響き渡る「低音」を躯体下部から捻り出すシステムです。
今でもBOSEで売ってるコンパクトなシステムがありますが、アレの元祖ですね。
これはこれで悪くありませんでした。というか、今まで約15年間ずーっと使ってきました。今も私の横でカザルスのチェロが鳴ってます。
ちゃんと配置すれば音場の広がりと定位もさして悪くありませんからね。(この意味不明な専門用語の説明はまた後程)
さてそんな私をまた驚愕させるシステムが現れます。以前ここでも書いたことがありますが
ONKYOのA-1VL、C-1VLがそれです。
http://pasture.s59.xrea.com/cgi-bin/cdiary/diary.cgi?no=418
所謂「デジタルアンプ」というものですね。これには心底驚いた。
音の質感はさることながら「スピーカーから音が聞こえない」ということに衝撃を受けました。
…何を言っているか分からない?ですよね。ふつう、音楽をオーディオで聞けば、当然左右のスピーカーから音が聞こえますよね。しかし、このコンポは違いました。スピーカーからではなく。左右のスピーカーの
真ん中から音が聞こえる。そしてその音色が半端ではない。これにやられた訳です。

…これが今思えば過ちの始まり。

たぶん、ここが、一般的なオーディオとピュアオーディオと呼ばれる泥沼の世界の境界かと思います。

「スピーカーの存在が消え、音が違うところから聞こえる」

最も分かりやすいのはオーケストラの交響曲です。左右のスピーカーではなく、眼前(耳前?)にコンサートホールが広がる(そういうのを「音場が広い」と表現します)そして実際のオケの配置通り、向かって左にヴァイオリン、センター右寄りにチェロ、右に第二ヴァイオリン、中央後ろに金管などなど。その場所で鳴っている楽器の位置が正しく定まる(これを定位がいいと表現します)

もし皆さんの家の近くに、オーディオ専門店は敷居が高いですから置くとして、ヨドバシなんかの旗艦店があれば、そこにはピュアオーディオ売り場がありますから、冷やかしに行ってみてください。
数々のスピーカーが林立し、これ見よがしに馬鹿でかい音量で鳴り響いていると思います。
そしてそれは大概、上記したような鳴り方をしていると思います。

それにやられたら最後。見て見ないふりをするか、足を踏み入れるか…

…ここから先は、その誘惑に負け、足を踏み込んでしまったド素人の物語です。

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アップロードファイル 733-1.jpg
BOSEのAWM
CDプレーヤーがつぶれたので、LUXMANのD-05uを繋いで。凄い組み合わせですねw