というお金があって、それで1台の車を買う場合、どんな車があるか。
例えばフェラーリの1番高いのは612スカリエッティで3700万円。
ランボルギーニのムルシェラゴで3900万円。
アストン・マーチンならDBSで3300万円。
ベントレーではアズールとブルックランズが共に4000万円。
ロールスだと残念ながらファントムの安いのが4800万ですからちょっと無理。
というあんばいです。
まぁつまり、RUFのCTR3やヴェイロン或いはSLRのような反則車を除けば、基本何でも買えると。
4000万円とは車の世界においてそういう金額なんですね。
で、4000万円級の車とは即ち上記したような車。ロールスとベントレーを例外とするならば、所謂「スーパーカー」と呼ばれるカテゴリーの車、という事になります。
さて、このたびトヨタが一台の車を発表しました。LF-Aだったっけ。まぁそんな感じの車。
値段は3750万円です。3750千円ではありません。万円です。桁の間違いではありません。

何このスープラ。
……何というか、この車はある意味トヨタの象徴だと思います。
さて例によって自動車雑誌を全く読まない私は、写真とスペックしか見てませんので、ここから先の話は多分にして偏見に満ちてますが、たぶんあながち間違ってはいないと思いますので続けます。
まずこの車、エンジンはV10です。5リッターで9000回転ブン回って560馬力、ドライサンプで10連独立のスロットル。気合入ってますね。素晴らしいエンジンです。このエンジンはヤマハ製でしょう。
トヨタ本体にこんな気合入ったエンジン作れるはずがない。
そのエンジンからの出力をプロペラシャフトで繋いで、ってトランスアクスルかよ。やるなぁ結構本気じゃね?
と期待をさせておきながら、そこにあるのは何とシングルクラッチのセミAT…意味がわからん。何故?
6MTやDSGならまだしも、シングルクラッチ??何故に?この21世紀も10年経とうという今、スーパースポーツ(笑)のミッションにシングルクラッチ??全く理解出来ません。意味がわからない。
まぁいいや、ボディに話を移します、4505ほどの全長に1895の横幅、ホイルベースは2605とこのクラスの車としては短めですね。GTよりスポーツに振りたかったんでしょう。てか公式HPにトレッド幅載せてないってのはどういう了見だよほんと有り得ない一般人舐めすぎ。
まぁいいや、で重さですが1480とかなり軽いです。この図体でこの軽さでこの値段ってことはアルミはないでしょう。カーボンモノコックか?ほんとに?だとしたら無駄に凄いですね。
というわけでまとめると
素晴らしいV10を積み謎の駆動系を持つカーボン製のFR2座スーパースポーツ(自称)
という事になります。
さて、どこから突っ込みましょうか。全部か。そうか。
てかね、560馬力でFRって時点でもう成り立たないんですよ。
どんだけパワーがあっても、FRじゃ路面に伝わりません。
1500kgの車重のFRでしたら、260馬力でもフルには伝わらないんですから(アルピナ号参照)560馬力なんて無駄。全く不必要です。結局トラコンでパワーを殺しまくるんですからね。
トラクションを生かしたかったらMRかRRか4WDです。FRで、且つ「スポーツ」を標榜するなら無意味。
「GT」なら構いません。好きにしてください。でもこの車は確かスポーツだったはず。しかもスーパー。
…いや、分かりますよ。何故FRにしたかなんて。トラコンの使用を前提にさえすれば、巨大な馬力を持たせるに際してフロントにエンジン置くのが一番安全なレイアウトだからです。
天下のトヨタが、某イタリアの車みたく「死にたい奴は勝手に死ね」って車は作れないでしょうしね。
つまり、鉄壁の安全性を持たせつつ、でもスポーツカーにしたいから、可能な限りフロントミッドに積んでホイルベース縮めてトレッド広げたと。そんなディメンションにしてしまって馬鹿パワーエンジンを支える
ための剛性も確保しようとしたら、ボディが糞重くてどうにもならないんでカーボンにしちまえと。そしたら、天文学的な金額になったよどーしたもんだよこれ。トヨタの名前じゃ無理じゃね?大丈夫そんな事もあろうかとレクサス名義にしといたし。てかF1でうちもスポーツのイメージ着いたしまぁいいけるだろ…って撤退?どーすんだよもう売るしかねぇぞ責任者呼べ。
……4000万円級の車作りってのは、つまり殆どフリーハンドを与えられた車作りです。
ただし絶対に必要なのは、その車に4000万円払っても構わないと思わせる何かを持たせる事です。
それは例えばブランドであったり、圧倒的な走行性能であったり、陶然とさせるような美しさであったり
いや、それら全てが必要です。頂点の車なんですから。
では、LF-Aはどうか。
結局、出来上がったのはトヨタ流80点の車です。4000万円のコストは確かに掛かってますが、4000万円かけた80点の車です。
そして残念ながら80点のスーパーカーなんてスーパーカーじゃありません。
例えどれだけ欠点があろうとも、何かひとつでも、100点いや120点或いは200点が付くような圧倒的な個性がある車、それがスーパーカーです。だからこそ天文学的なプライスタグが付くんです。
トヨタがトヨタである限り、スーパーカーは作れません。
私が口惜しいのはそこです。技術があり能力があるのに、4000万円のコストを掛けられる夢のような環境があるのに、出来上がったのがこの有様ですよ。
…あの時みたいに、全部ヤマハに任せればよかったのかもしれませんね。
それはそれで「トヨタらしい」のにね。
残念です。本当に。
……しっかし、ブサイクだなぁ
なんでこんなカッコにしたんだろ。ほんと分からん。てかトヨタの中の人はこの車をみて、フェラーリやアストンよりカッコいいと本気で思ってるんでしょうか?
まぁいいやもう。日本にはGT-Rがありますもの!!スープラなんて目じゃねぇよ!!