営業途中ふらりと立ち寄り、雑誌のコーナーで「ゲッサン」とかいう月刊の漫画雑誌を手に取り、そう言えばもう今月からはあずまんが大王の補習編は載ってないんだと気付いて棚に戻そうと思いながらも、ふと巻頭に載ってた新連載に目が行き、何の気なしに読んでみました、ら…
……面白い。
「とある飛空士への追憶」
というタイトルです。
久方ぶりに面白いと思った漫画でした。話が非常に上手い。掲載分を読みきったらそこにあったのは、原作の宣伝。
あぁなるほど。原作付きの漫画か…って、ラノベ?(ライトノベル)
一巻で完結?
…へー、そう。てか漫画でこれだけ面白いなら……
会社から家に帰るや、父親のサニーに乗って本屋にかっ飛び、原作買ったのは言うまでもありません。
思い立ったが吉日。善は急げ。昔の人はイイ事言います。
で、一気に読みました。
ええ、もう、面白いです。久々に。大ヒット。てかホームラン。満塁くらい。
どんな話か一言で表現するなら
「ローマの休日」と「天空の城ラピュタ」を足して2で割り「紅の豚」の空戦をリアル調でプラスした感じです。
私的NO1ラブストーリーとNO1冒険活劇の競演なんですから、これで面白くないわけがない。
もう少し詳しく書くと
「帝政天ツ上」と「神聖レヴァーム皇国」という東西二つの国が存在する世界、両国間には大海が広がるわけですが、この世界はその大海の中央を南北方向に走る落差1300mの大滝「大瀑布」によって隔てられてます。
自然、船舶より飛行機がモノをいう。そういう世界観。
で、その両国は60年前に戦争をやらかし、レヴァーム皇国が勝利したんですね。レヴァームは天ツ上領内の土地をぶん取り、そこを「サン・マルティリア」と名付け、自国民を入植させたわけです。
そして60年が経ちました。
サン・マルティリアを統治するのは、60年前の入植時、本国との貿易を一手に引き受け「超」が付く富豪となったデル・モラル家。紛うことなき成金ですが、限度を超えてますので公爵の爵位を持つに至ります。
さて元々厳格な身分制を敷くレヴァーム皇国、特にサン・マルティリアでは、当然ながら、敗者である天ツ上の人間は身分制の下層に組み敷かれ、レヴァームと天ツ上の混血「ベスタド」に至っては、そりゃもう放送禁止用語並みの扱い。
しかし、60年の月日がレヴァームの慢心を生み、逆に天ツ上は力を付けました。
再び戦争の火蓋が切られてからは、レヴァームは劣勢も甚だしい。
そうなると、サン・マルティリアは、地理上、悲惨なことになるのは当然です。
…が、レヴァームとしては、サン・マルティリアを失うわけには絶対にいきません。戦略上の要衝ということも勿論ですが、何よりも、サン・マルティリアの現当主ディエゴの娘、ファナは、レヴァーム皇国皇太子カルロの婚約者ときたもんです。
サン・マルティリア駐在のレヴァーム空軍とデル・モラル家の私兵とも言うべきデル・モラル空挺騎士団は、天ツ上空軍と日々苛烈な戦闘を続けますが、主力戦闘機の絶望的な性能差により押しに押され、大海での制空権は、もはや天ツ上が手中に収めるのも時間の問題。そんな中、デル・モラル家の屋敷が天ツ上空軍の空爆に晒され、当主ディエゴは死亡。ファナは命からがら逃げ延びました。
それを聞いた皇太子はそりゃもう取り乱して怒り狂い、軍の艦隊編成を再編、第8特務艦隊なる新艦隊を創設、最早敵地と化したサン・マルティリアに取り残された花嫁を奪還すべく、大々的に大遠征を行わせるも、華々しくも無残に、特務艦隊は天ツ上の波状攻撃に晒され海の藻屑となりました。
そう、レヴァームの用いる暗号は天ツ上に完全に解読されていたわけです。
しかしそこは大人の事情。皇太子の勅命による作戦行動が見るも無残な全滅に終わる事など、許されません。
そこで宮廷と空軍が捻り出した作戦とは、とにかく腕の立つパイロットが操縦する複座の水上艇にファナを乗せ、天ツ上哨戒機が乱れ飛ぶ大海を極秘隠密にレヴァーム領内まで突っ切り、その後「第八艦隊の唯一の生き残りの戦艦」へファナに御乗艦頂き帝都に凱旋する。という素晴らしい作戦。
その無謀な作戦のパイロットに任ぜられたのはデル・モラル空挺騎士団の狩乃シャルル。
名前が示すとおり、彼は混血、ベスタドである訳ですが、その身分をしてパイロットたらしめたのは、まず空挺騎士団が私兵であり門地家柄に問わず徴用したこと。そして何より、その卓絶した技量ゆえでした。
姫君を背に敵中12000kmの空の旅。
隠密飛行であれば、それは可能なのかもしれません。しかし、皇太子が不用意にも隠語を用いず平文で打ったファナの道中の苦労を嘆く恋文は、当然のことながら、天ツ上に傍受されていました。絵に書いたような馬鹿ですね。いい仕事します。
シャルルとファナの前には、この事有りと万全の体制で待ち構える、帝政天ツ上最強の戦闘機「真電」の群!!
そして、天ツ上最強のパイロット!!
二人は果たして無事にレヴァームまで飛ぶことは出来るのか!?
二人の間の遠い昔からの絆とは!?
女版ラインハルトと言うべき絶世の美姫と、素朴で一本木な青年パイロットの運命や如何に!?
…というのが序章。
この小説は、お約束というか「ここはこうだろ!!」って所を余すことなく、これ以上無い正確さで、突いてきます。
いやもう完璧に王道。文句のつけようがありません。
本当に久々に、心から面白いと言える話に出会えました。
でも、もし昨日、私があのコンビニに立ち寄らなかったら、多分永遠にこの小説を知ることは無かったと思います。
偶然の出会いってのも、存外有るものですね。
…しかし、私が本当に希求してやまない「偶然の出会い」は一向に起こる気配がありません。
……やっぱパイロットじゃなきゃ姫様には会えないか。そうだなぁパズーも飛行機(?)操縦してたしなぁ
分かりました。私、来世でパイロットになります。来世?