ハイエンドオーディオショウという業の深そうなイベントに、Brodmann聞きたさにかまけて仕事をフルパワーでブン投げて、イベント初日金曜夕方に赴いた私ですが、どんな会場かと思えば、ただのビジネスホテルでした。とは言えオーディオショウという性質上、音量をバカみたいに上げますので、ホテルまるまる借り上げて行われている模様。
さて私の目的はあくまでBrodmannの輸入代理店フューレンコーディネートの会場です。他の展示には目もくれず9階へ直行。
部屋に進むと、ほんとにただのビジネスホテルの一室に試聴会場がありました。先客が1名。スピーカーは2組設置されていました。一つはピエガのハイエンドブックシェルフCoax 311。そしてもう一つがBrodmannの「VC1」でした。鳴っていたのはピエガの方。これがなかなか素晴らしい音。流石にスタンド合わせて100万円のスピーカーは違います。以前ヨドバシの店員さんが仰ったように、特に高音の自然さが素晴らしい。これがリボンツイーターの威力なのか。暫く聴いていると、先客の方が席を立ち、私一人に。
ピエガは勿論素晴らしいですが、私の興味はあくまでBrodmannです。代理店の説明員の方にお願いしBrodmannに切り替えてもらいました。と、何やらアンプも変えてらっしゃいます。今更気づきましたが躯体上部にほんのり発光する4本の真空管。なんと、真空管アンプがこんなに鋭い音を出すのかと。
どこのアンプですか?Octave?へぇドイツ製。ドイツのアンプとオーストリアのスピーカーは、そりゃ相性が良さそうです。
さて、機材変更は終わりました。先ほどピエガで聴いていたのと同じ音源、ショパンのピアノです。果たしてどうか。
最初の一音。
耳を疑う、とはまさにこの事。
これは、紛うことなき「ピアノの音」です。
いや、ピアノ曲だから当たり前ですがそういう意味ではなく
「スピーカーから出るピアノの音」ではなく「ピアノから出るピアノの音」まさにそれなんです。
ピエガと比較してそれが如実に、鮮明に、露わになりました。ピエガのそれは言うならば「高音質スピーカーの音」でした。「ピアノそのものの音」では勿論、ない。というか、ピエガ云々ではなく、今まで他のどんなスピーカーで聴いても決して鳴らなかった音です。
ピアノだけではありません。モーツァルトの小編成での弦と木管。バッハのチェンバロ。チャイコフスキーの金管。どれもこれも素晴らしく「リアル」です。「実演の音」に極めて近い。特にピアノは群を抜きます。
例えば、スタインウェイがそこにあって、ピアニストがエア演奏してる後ろでこのスピーカーが鳴ってても気付かない、そのくらいのレベル。
やはり、私が求めるスピーカーはこれではないか。これしかないのではないか?
…とは言え、私はまだ比較を行っていません。まだ最終決断を下すには早すぎる。折角のハイエンドオーディオショウです。全フロアに名だたるメーカーのシステムがひしめいているわけですから、他も聴いてみましょう。
というわけでフロア巡りを行いました。全部書いていくわけにもいきませんので、一つだけ印象に残ったものを。
それはLINNのシステムでした。フューレンと違って試聴コーナーには大勢先客が居ましたので、私好みの楽曲はかけられませんでしたが、非常に興味深い鳴り方をしていました。音の密度が濃い。というか情報量が多い。モニター系スピーカーの音とはまた異なる緻密な鳴り方に大変驚きましたが、値札を見て更に驚きました。ざっくり400万て。
因みに国産系ハイエンドメーカーはフラグシップを超大音量でぶっ放してました。耳が痛くなったので早々に退散。
てか初めてこの手のイベントに参加しましたが、何故どこもかしこもあんなバカみたいな大音量で鳴らすんでしょう?どこの世界にあんな音量で聴く近所迷惑なバカが居るのか。ド田舎の一軒家か、地下室か、或いは完全な防音室か。そういう特殊なユーザーだけを対象とするなら意味があるかもしれませんが、一般的な現実的試聴環境とこれほどまで乖離がある展示会に、一体何の意味があるのか??まるでこの何十年間変わりなくスーパースポーツカーを箱根や筑波でアホみたいに走らせて車の優劣を論評(笑)し続ける車雑誌業界とやってることは大差ありません。そんなのだからイベント参加者の平均年齢が恐ろしく高く、若年層が参加する余地が無くなるんですよ。
…と、まぁ私みたいな素人が批判しても仕方ないですね。話を元に戻しましょう。
…やはりBrodmannしかないか。
もとのフロアに戻りましたら、また別の方がピエガを聴いてました。その方が去ってから、再度お願いをしてBrodmannに戻してもらい、もう一度様々聴きました。他の様々なハイエンドシステムを聴いて、なお
このリアルさには瞠目させられます。代理店の方に様々色々質問し、それら全てに丁寧な回答を頂戴しました。
そして最後、一度ヴォーカルも聴いてみようと、かけて頂いた女性ヴォーカル。いや感動的でしたね。
定位がいいとか、音像が明確とか、もうどうでもよく。そこにホントに本人が居る。生々しいなんてもんじゃない。
…これはもう、買うしかない。上位グレードのVC(Vienna Classic Series )系は流石に予算オーバーです。
下位グレードの(Festivalシリーズ)F1辺りが本命か。
関西では取扱いがないので、他エリアのお勧めのお店を数店伺い、冬のボーナスが出次第発注しますと申し上げた所「その時は私がセッティングに行きます!」と派手なリップサービスも頂戴し、閉館時間ギリギリまで使った試聴会は終了しました。その日その後飲み会でしたが、私は全く上の空だったのは言うまでもありません。
さて、では実際にどこのお店にコンタクトを取るか。
フューレンのお勧めのお店のHPを見比べ、その中で、最もBrodmannの扱いが多かったのが東京にある「Sound create」でした。
問い合わせフォームにBrodmannに興味があること、お勧めのアンプを教えてほしいこと、大体の費用見積もりが欲しいなど記載し投げかけてみました。店長さんから大変丁寧で詳しいお返事を頂き、そこから十数回に及ぶ、もはや文通のレベルのやりとりを行い、最終的な方向性として
プリメインアンプ
Octave V40SE(中古)&Black Box(中古)
スピーカー
BrodmannのF2
で行こうと、ほぼ決定。
…はてOctave?LuxmanのL-550AX2はどうした?
当初の予算はどこに行ったのか?
アムリッツァのキャゼルヌばりに声を張り上げそうになりますが
Brodmannを鳴らすためなら女房も泣かす勢いで、魔術か何かにかけられたように、見積金額が跳ね上がります。
ただやはりBrodmannのFestivalシリーズを聴いていないのが、どうにも最後、引っかかりました。事ここまで来たのなら、やはり自分の耳で聴いて、決断を下すべき。
というわけで、東京銀座へ最終試聴に赴くことを決めた訳です。
さてしかし試聴機材としてF2が確保できない、とのことでしたので、仕方なくF1と、上位グレードVC1を「念のため」ご用意頂くことに。
そして師走の最初の土曜日。レダ2号ならぬ、のぞみ214号に乗って、私は最後の決断を下すべく試聴の旅に赴くのでした…
ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ。
※あけましておめでとうございます。
てか今日のニューイヤーコンサートはいいですね。こんなにウィーンフィルが歌っているのは久々ではないでしょうか?例えて言うなれば演歌のような節回しですが、まぁ面白いと言えば面白い。2008年のプレートル以来かと思います。良い一年になりそうですね。