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あけまして

おめでとうございます。
放置も極まった感じのここ馬の屍ですが、まずは昨年のIYH報告から。
昨年はレンズを一つも買いませんでした。近年稀にみる禁欲生活。EOS-Rには若干惹かれましたが、今でも私はLeicaがQのレンズ交換式を出してくれると信じてますので、今年一年は待ちます。
レンズではありませんが、家をIYHしました。そのくらいですかね。
さて新年と言えば、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートですが
ティレーマンのお蔭で硬すぎにも程がありましたね。去年のような演歌風浪花節に比べると極めて理性的でした。
個人的に演奏より面白かったのは、キュッヒルの「ドイツ語しか話せない設定」が無理すぎるところでしょうか。日本語での問いかけに対し間髪入れずドイツ語で語りだすのが面白くて仕方ない。一度間違って普通に日本語で返答してましたしね。

まぁなんだかんだ新年です。ここも微妙に更新をしていきたいと思いますので、皆様も暇な時にたまに見てください。運が良ければ更新しているはずです。今年もよろしくお願いします。

グリッドマン

超面白くね?
これ結構ガチで凄い事になるかも。そう思わせてくれる久々の作品。

久々に更新してこの内容。大変申し訳ございません。

ありのまま今起こったことを話すぜ

俺は子供と一緒にゲゲゲの鬼太郎を見ていると思ったら、いつのまにか、シン・平成狸合戦ポンポコを見ていた。
何を言っているか分からねーと(ry

今期の鬼太郎はほんと面白いですね。

ほむら「QBを潰せ」

と自動的に脳内変換される、そんな39歳の誕生日。

忖度

という最近流行りの難読語を初めて知ったのは確か銀英伝だった気がしますがそれはさて置き
官僚たちの「忖度」を親の仇のように執拗に糾弾し続けているマスコミ各社がジャニーズにはきっちり「忖度」して、右に倣えで山口「メンバー」と呼称するのが滑稽極まりない。
衆愚政治の限界に日々挑み続ける野党各党もそうですが、最近の野党及びマスコミのクソさ加減は、銀英伝で描かれる腐敗を軽く凌駕していますね。小説より奇なりとはよく言ったものです。
さてしかし、ハニトラ紛いのセクハラ疑惑で辞めた官僚には、百歩譲ってまだ同情の余地が有りますが、幾ら何でも女子高生を家に連れ込んで酒飲ませようとして更にキスを迫るってのは流石に酌量の余地無しです。その昔極楽とんぼの山口だか山本だかが似たような事をしてましたが、さて。今回はどういう落とし前をつけるのか。
因みに私の読みでは
「アベ総理の陰謀説」
を真顔で語り出すキチガイが出てくるに一票。

西郷どん

を頑張って見ていますが、もうそろそろ限界ですこんばんは。
私は勿論、これは「大河ドラマ」であって「大河ドキュメンタリー」ではないことを承知していますが、しかし、いくらなんでも内容がファンタジーすぎるにも程がある。
遊び人を装う一橋慶喜と飲み屋で連れになる…のを我慢したとしても。
賊を切り捨てた西郷が、その自分の行いをウダウダ悔いるとかもうね。
最近の大河に特にありがちなこの種の

「登場人物の価値観が現代人のそれ」

というのが、私は釈然としません。いや勿論、当時の人間のメンタリティの本当の所など分かろうはずはありませんし、現代人的登場人物でないと、視聴者が感情移入しにくいという理屈も分かります。ですが、当時の人間であれば絶対にしないであろう言動を次から次にやられると
もうそれは大河ではないだろうと。
さて、そんな思いでおりますと、先日Amazonで「篤姫」を見つけました。宮崎あおいのあの「篤姫」です。どうやら台湾で売られている物でDVD8枚組の全話収録でお値段驚異の四千数百円。思わず購入してしまいました。放送当時ここにも記しました通り、私はこの篤姫を、というか宮崎あおいを極めて高く評価しましたがしかし、序盤は殆ど見ていた無かったわけです。というわけで今回改めて初回から視聴しましたらもう

面白い。

そりゃもちろんファンタジーなんですが、それでも「この篤姫なら確かに歴史を動かす」と納得させるだけの脚本と、何より宮崎あおいを筆頭に役者陣が半端ない。
昨日の西郷どんの辺りは、篤姫で言えば22話「将軍の秘密」になるわけですが、これが素晴らしい。
草刈正雄演じる老中首座阿部伊勢守と篤姫との謁見、その後の水戸斉昭に物申す鬼気迫る迫真の演技。そしてついに、うつけの仮面を脱ぐ堺雅人演じる将軍家定。…と前半のクライマックスにあたりましてそりゃもう。西郷どん比13倍くらい面白い。
脚本が圧倒的に面白く、役者も上とくれば、そりゃ比較するのも無理があります。
宮崎あおい・堺雅人 VS 北川景子・芸人作家(名前忘れた)ですよ。そもそも勝負にならない。
…とまぁ文句言っても仕方ないですから、私は篤姫を愛でることにします。

というか、そろそろ、ガチな大河ドラマやってくれませんかね?
くだらない恋愛要素とか、よく分からない友情物語とか、そーゆー所謂「数字が取れる」事柄を一切排除した超硬派な大河ドラマ。
ていうかね、歴史に興味ない人間はそもそも今日日、大河なんか見ませんし、わざわざ大河を見る層は一般的な「数字が取れる諸々」なんかに興味はないんですよ。でね、映画にしろドラマにしろ、ここ数年で本当にヒットした物って一般受けする条件を敢えて外して尖がった作りをしたものばかりじゃないですか?
そろそろ大河もそういう方向にシフトすべきじゃないかと。
例えば、これまで「敵」として描かれてきた人間を主人公にするとか。例えば今川義元。彼は決して公家かぶれの無能デブじゃないですよ?当時最も先進的な領地運営を行った史上初の戦国大名と言って相違ない
超有能大名ですからね。あとはそうですね。日本の歴史上「敵」と言えば、明智光秀を置いて他にないですね。面白いと思いますよ。明智光秀は謎だらけですから、一歩間違うと超ファンタジーのクソ大河になりますが、うまくやれば化ける可能性は大いにあります。

…とか書いてると、なんだか2020年の大河は明智光秀のようですね?ほんとかよ凄いな。
おそらく超ファンタジーのク(ryになると思いますが、そうならない可能性も僅かながら存在しますので、そんなに期待せずに待つことにしたいと思います。

子供に

ピカチュウを描いてくれと言われて、描いたのですが
何故か不満気でした。

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一体、何が気に入らないのか。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 外伝【オカルティック・ラビリンス】

以前、オカルトと切って捨てたオーディオの周辺機器、所謂「アクセサリー」について触れてみましょう。

まず筆頭は各種機材を繋ぐ「ケーブル」ですね。CDプレーヤーとアンプ間、アンプとスピーカー間のそれらが特に有名ですが、最近ネットワークオーディオが流行ってますのでLANケーブルもオーディオ専用と銘打ってトンデモナイ価格で売り捌かれてます。
酷い物になると、1mあたり100万とかします。ケーブルが、です。うん、もう、ね。
個人的には、スピーカーケーブルには金をかける価値があると思います、mあたり1000円くらい。確かに付属しているケーブルに比べ、その位の物に変えれば、確かに効果は実感できます。
ただし、そこから上は極めて分かりにくい。相当のモノを使っているオーディオ店で聴き比べても、少なくとも私の耳ではその違いを明確に判別はできませんでした。「言われてみればいいかも」程度。
であれば、専用品の最低レベルで十分というのが私の結論。

次は「電源」です。オーディオは勿論電化製品ですので、電気がないと動きません。ノイズの乗らない電気の方が動作が安定する…という理屈は分かりますが、一般家庭のその他家電が発する電気的ノイズごときに
動作が左右されるのであれば、それは設計の前提がそもそも大間違いであり、設計者がアホなだけのような気がしますが、この業界はそのような考えを是としません。
電源タップ(要するにタコ足のあれ)が30万したり、電源ケーブルが数十万したり、さらにはオーディオ用に専用のマイ電柱まで立てる始末。いやホントに居るんですよそういう凄い方。
…とはいえ、私も完全には否定しません。騙されたと思って買ってみた1万円ほどの「オヤイデ電気」の電源タップ。これが確かに効果がある。壁のコンセントから直で繋いだ状態と、タップを介した場合では
確かに音の解像度が変わります。うちのように集合住宅の場合、確かに電気的なノイズも多く乗るでしょうからそれらを除去する、という理屈は、まぁまだ分かります。流石にこれ以上かける気はしませんが。
…あ、そうだ。皆さん、コンセントに「向き」がある、ってご存知ですか??
コンセントについている2つの穴、あれには「極性」というものがあり、左側がアースとなるcold、右側が電気が通るhot側となっています。(雑な電設工事をされていてそもそも逆になっている場合もありますので、念のためテスター(千円しません)で確認するのが無難です)
で、次は差し込むプラグを見てください。▽マークが入っている側がアース側(左側に差し込む側)になります。
つまりマークが見える状態でコンセントに差し込むとOK。逆相にすると音が変になる…らしいです。
私も試してみましたが「言われてみれば確かに違う、気がする」という感じでした。まぁ信じる信じないは人それぞれですが、コンセントの指し方だけで幸せになるならタダですので上下刺し替えてみて自分が「良い」と思った方に繋ぐのが精神衛生上よろしいのではないでしょうか。

えーいい加減疲れてきましたので、最後にもう一つ。「インシュレーター」のお話。
インシュレーターがそもそも何かと言えば、機材を置くための土台です。そもそも重力があるこの地球上ではあらゆる物体は空中には浮くことなく、床なり何なりに「置かれる」わけですから土台部分までちゃんと設計して当然のように思えますが、この業界では何故かそうはならず、往々にしてインシュレーターは別売りとなります。で、これも高いのは数十万。見た目ただの円筒形の金属の塊がです。うん。もう。いいや。
ただし!インシュレーターの効果は必ずしも全くのオカルトではありません。
個人的に一番のお勧めは「10円玉インシュレーター」です。
読んで字のごとく、10円玉をスピーカーの四隅にかまして床になりラックなりテーブルなりに置くだけです。もし今、スピーカーを床に直置きしている皆さんは、騙されたと思って、10円玉をかましてみてください。
一気に音が鮮明になり、特に低音が引き締まるはずです。
うちのBOSEがまさにそうでした。ラジカセという形状ですので、床に直置きだったのですが、フローリングの場合低音が膨らみすぎるので絨毯に置いてみたり、聞くジャンルによって色々設置条件を変えてたのですがこの「10円玉インシュレーター」導入後はもう一切気にしなくて済むようになりました。
であれば、ちゃんとしたインシュレーターではそれ以上の効果が望めそうな気もしますが最低でも10円玉の数千倍ほどの費用が必要になるのに対して、数千倍の効果が得られるとは到底思えませんので費用対効果が全く合いませんから私はやりません。

…そろそろ私なりの結論を。
オーディオアクセサリーには、確かに、ある一定の効果はありますが、それらのエントリーグレードとハイエンドの効果の差は、かけるコストに見合ったものとは到底思えません。スピーカーに金かける方がその100倍は音が良くなりますし、そのスピーカーは部屋のどこに置くかで、恐ろしく音が変わります。
……そう。アクセサリーではありませんが、そもそもそのオーディを聴く「部屋」の条件が極めて大きな差を生みますが「ルームチューニング」は、定在波との終わりなき戦いが余りに深淵ですので、ここでは触れません。
触れませんが、LINNの「Space Optimisation」は画期的な定在波キャンセル機構…な気がしますが、どうなんでしょうね。

http://linn.jp/space-optimisation/

いずれにせよ。

オーディオは、目に見えない「音」を相手にした趣味です。効果があろうがなかろうがオカルトだろうが物理的裏付けのある手段だろうが、当の本人が納得し「良い」と思えば、それが正解ですのでプラシーボ大いに結構。幸せになったもん勝ちです。自分が納得する範囲でお金をかけましょう、という当たり前の結論。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その10【旭日編】

まだ子供の時分に家の近くの家電量販店で聴いたピュアオーディオの音。今思えば大した代物ではなかったはずですが、ただ、私の中に「何か」を残したのは確かでした。
それから約20数年。
まともなシステムを組んだことがない人間が、いきなり一式揃えるのは無謀なような気もしますが、賽は投げられました。あとは祈るのみです。
年が改まった1月16日(火)ついに、納品の日がやってきました。
ド平日ではありますが、私は万難を排して振替休日を取得し、朝から掃除を敢行。来訪に備えます。思いのほか早く片付き手持無沙汰。ふと、最後にBOSEを鳴らしてやろうと思い立ちました。さて何を聴こうか。
最後ですから、フルトヴェングラーのブラームス1番4楽章(1945年1月23日)と、やはりブルックナー7番2楽章でしょう。鳴り始めるのとBOSE=AWMのいつもの音。Luxman D-05uの力を借りて音が鮮明にはなってますが、基本的にこの15年の間、ずっと聴いてきたいつもの音です。今まで本当に有難うございました。また、いつか鳴らしてやろう。

さて本当にちょうど、ブルックナーが鳴り終わるや否や、インターホンが鳴ってお出迎え。店長さんと、そしてフューレンの担当さんが来られました。なんという有言実行。
エレベーターの無い4階という最悪のロケーションの中で、アンプとスピーカーの搬入頂き、手際よく梱包が解かれていきます。恐ろしく美しいピアノブラックの鏡面塗装。
今回は導入にあたり、アンプ、スピーカーを繋ぐ各コード類は全てお任せにしました。ケーブル、電源など「アクセサリー系」は大変深淵な世界が広がりますので、私のようにハイエンドオーディオの黄昏をおっかなびっくり歩いている人間にはまだ業が深すぎます。プロに任せるのが吉。
そうこう言う間に各種配線は勿論、配置なども極めて手際よく完了し、取り敢えず音が出る環境が整いました。所謂「ポン付け」の状況です。ここからスピーカー位置などセッティングを詰めていく訳ですね。
気分はまるで湾岸ミッドナイト。悪魔のOCTAVE。いやドイツだからBlack Brodmannか。

…さてでは何を、最初に鳴らすべきか?

実は前から決めてました。バックハウスの弾くベートーヴェン。中でも私の好きなテンペストを置いて他にありません。何せこのスピーカーは元を正せばベーゼンドルファーです。
ベーゼンドルファー(のピアノで弾いた曲)をベーゼンドルファー(のスピーカー)で聴く。
これ以外、こけら落しに相応しい何がありましょうか。D-05uのトレイにCDを載せて再生スタート。

さぁ記念すべき最初の音色は如何に!

……なんじゃこりゃ?

なんという平板な音。響きも何もあったもんじゃない。

…正直、血の気が引きましたね。
こんなものかと。これじゃハイドン(風雲篇参照)のほうがまだ良いと。

が、すぐにある事を思い出しました。そもそもこれは真空管アンプです。通電後すぐの真空管と更にバイアス未調整とくりゃ、まともな音がする筈もない。事実、私以外のプロの2人は全く動揺するそぶりも見せない。そうまさしく、まだ慌てるような時間じゃない訳です。
しかし、プロは暖気の時間も無駄にしません。スピーカー位置を色々変えて行きます。その度に如実に変わる音。更に、BrodmannのVC1はウーファーが側面に一発ついているのですが、これは設置する空間にあわせてウーファーの向きを内か外か、適した向きに変えられる利点があります。今回、まず内向きに鳴らした訳ですが、これを外に変更したらかなり大幅に音の響きが変わります。こちらのほうがうちの部屋にはあってる模様。更に壁からの距離、スピーカー間の距離を厳密に詰めていきます。まさしくセッティング。
そして、そうこうするうちに、真空管が十分に温まってきます。そこで4本の真空管のバイアスを調整して頂きます。

…そう。この音です。これだよ!これですよ…!!
よかった。本当によかった。あやうくホントに「落日編」になる所でした。そんなオチは要らん。

セッティングが一段落し、労を労う為コーヒーを淹れて差し上げます。
色々お話する間も刻々と響きが良くなっていきます、が

「真空管の慣らしが終わるのは最短で3ヶ月」
「スピーカーは(特にBrodmannは)年単位」

という極めて気の長いご宣託を頂戴しました。
まぁこれから日々よくなると思えば。気長に付き合いましょう。

お礼を申し上げお二人をお見送り。部屋に戻ってその後もずっと色々掛けてみました。ピアノだけでなく、オルガン、ヴァイオリン、チェロ、協奏曲、交響曲などなど。音色は着々と良くなります。生気が出てくる。これまで聞こえなかった僅かな音も聞こえてきます。
あと映像ソフトも念のため確認してみるかと、ブルーレイに切り替え、響けユーフォニアムの関西大会を見てみました。まるで映画館で見るような音の質感です。また驚いたのは、京阪電車に乗ってるシーンでキャラクターがつり革を掴んだ時、つり革独特の「あの音」がちゃんと聞こえた点です。聞こえたスピーカーにも驚きましたが、わざわざそこまで音をサンプリングしてしっかり乗せてる京アニにも改めて驚いた。

もう機材は十二分に暖気されました。そろそろ一発、少し音量を上げて本領を発揮してもらいましょう。
比較するのは、私が以前素晴らしいと感じたDYNAUDIOのSP40で聴いた、ブルックナーの5番、第4楽章です。
鳴り始めてすぐ、音質の全くの違いに驚きます。SP40の精緻さと比べ、圧倒的に生っぽい。またSP40ではホールの若干後方で聴いている感覚でしたが、VC1ではもっとオーケストラの近くで聴いている感じです。
音場の広がり、定位とも文句なし。そしてとにかく音がリアルです。
そして最終のコーダ。アムステルダムコンセルトヘボウがヨッフムの棒にフルパワーで応えるクライマックス。もうこれはこの世の音楽ではありません。これを聴いて感動しない人間はブルックナーの何を聴いても無駄と断言できます。本当に素晴らしい。これ以上の5番は有り得ない。そう確信できる演奏。そしてそれをこの上なくリアルに再現するV70SEとVC1。流石にSP40では比較するに荷が重い。Confidence系なら或いは…
ただDYNAUDIOとBrodmannでは方向性が全く違いますから、比較はナンセンスかもしれません。
いずれにせよ私はBrodmannの音色の方を好みます。

…良かった。ちゃんと鳴ってくれました。

その後、帰宅してきた嫁の渋面をなだめすかす為に、彼女の好きなミスチルを掛けてみたところ、うちのリビングに桜井が現出し、改めてそのリアルさに驚いた次第。
誰だBrodmannはクラシック、しかもピアノ専用機とか言ったのは。超オールラウンダーじゃねぇか。

さて10回に及んだ今回のオーディオ導入記。
紆余曲折を経て最終的に

アップロードファイル 743-1.jpg
CD:LUXMAN D-05u
アンプ:OCTAVE V70SE
スピーカー:BRODMANN VC1

に最終決着しました。その結果は上記のとおりです。
ただ納入後2週間を経た今現在。更に音色のリアルさが増加しています。真空管の慣らし…もそうですが、プリ菅を、Telefunkenに変えた事も大きいですね。今回真空管アンプを選んだため「玉転がし」と俗に言われる真空管の交換による音質変化を楽しむ…という極めて業の深い世界に飛び込むことが可能になりました。
そう、ここからが本番、と言えなくもありません。
今回の様々な経験を経て、私もほんの少し、オーディオのことが分かってきましたから、これからも少しずつ変化を楽しみ、音楽を聴いていきたいと思います。

…また、気が向いたら「外伝」として続けるかもしれません。
ネタは、オカルト満載のアクセサリー業界や、ヴィンテージ真空管の世界でしょうかね。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その9【回天編】

関西在住の人間が、スピーカーの試聴の為だけに東京に行く。改めて文章にしてみるとその異常さがよく分かります。恐らく99.999%の人には理解を頂けないかと思いますし、うちの配偶者も、無論、多数派に属します。また、そのような常軌を逸した行動をするからには当然、そのスピーカーは尋常でない金額である。と、普通の人間なら推測するでしょうし、うちの配偶者は変に頭がキレますので、まぁ要するにこの試聴の旅は、極秘裏に行う必要があります。
さていくら私が自由が効く外回りの営業マンとは言え、流石に仕事中に東京まで行くことは難しいです。となれば土日ですが、幼子が二人居る家庭には、なかなかそういう自由はありません。
更に私は配偶者に対して「嘘はつかない」をポリシーにしています。

…困った。

しかし、暦は師走。この業界(建設業界)は関連業者を強引に巻き込んだ忘年会という、昭和の遺物のような強制参加型イベントが数多開催されます。そして中には何を考えてか、土曜日にそれを行う業者まで現れる始末。全く始末に負えませんが、今回はこれを活用しましょう。
というわけで、その土曜日は「休日出勤である」という大義名分を持って、自分の時間を確保した次第。
うん、嘘は言っていない。

さて、地味な暗闘の話はもういいでしょう。
当日、いつもの出勤時間とさほど変わらない時間に家を出た私は新大阪から新幹線に乗車。幸い、異音が生じて名古屋で足止めなんてこともなく無事東京に辿りつきました。相変わらずカオスな東京駅構内を尻目にさっさと山手線に乗り換えて有楽町へ。中央口を出て東の銀座方面に向かいます。程なくして並木通り沿いの目的地「SOUNDCREATE Legato」に到着。店長さんの計らいでわざわざ開店の1時間前にお時間を頂き、試聴会場となるお向かいの新店舗「LOUNGE」に移動。
うん、なんだ。オシャレです。私がこれまで見た全てのオーディオ店の中で圧倒的に、比較を絶してオシャレです。ド級のスピーカーが林立するのですが、ヴィンテージスピーカーも多く、また同時に扱っている椅子やらも極めて品が良いですので、通常のオーディオ屋さんとは全く気風が異なります。無論店員さんも皆さんオシャレです。特に年配の男性社員でお一方、頭の先からつま先までまるでMEN'S Preciousか何かから抜け出てきたかのような装い。しかもそれが恐ろしく自然で一切嫌みがない。凄いですね。流石銀座。勝てる気がしない。しかも皆さん超気さく。完璧超人か何かか。
…閑話休題、もういいでしょう。このシリーズはあくまでハイエンドオーディオが主題であってファッションチェックが目的ではありません。そろそろ本題に戻りましょう。

まずはスピーカーがBrodmannのF1
アンプはOCTAVE V40SE+強化電源Black Boxのセットです。

試聴用に持ってきたCD色々を、LINNのネットワークオーディオに一旦落とし込んで頂き試聴スタート。
まずはケンプのバッハです。
うん。流石。そう。この響きです。ケンプが居る。
が、少し音場が狭いか?いやピアノだし。しかも低めの音量だし尚更そう感じるか。次はブルックナー9番。私が持ってきたのは最晩年のヨッフムとチェリビダッケに鍛え上げられた当時のミュンヘンフィルとの共演。これ以上の9番はこの地球上に存在しません。そう断言できる超絶の名演。その3楽章。が、どうにもLINNのシステムと相性が良くなく読み込みが上手くいかないようで、冒頭の1分弱しか読み取れない問題発生。しかし問題ありません。この演奏の肝は冒頭の1分(極みは最終のホルンですが、まぁ置いておいて)です。
相変わらず素晴らしい。音のリアルさ。響きの自然さ。しかし、少し厚みが足りない。実在感が少し足りない。いや、確かにそこにオケが居るんですが、気配が薄い。変な表現ですが、そうとしか言えない。
次いで喧しい系としてチャイコフスキー4番。指揮はムラヴィンスキー。うん金管の鳴りもOK。ただ…どうにもブル9と同様の印象。
さらに戦時中のフルトヴェングラー指揮のブルックナー7番。これは素晴らしい。DYNAUDIOのSP40とは雲泥の差。ちゃんと鳴ります。これで十分。問題なし。で、最後。ヴォーカル物も。というわけでフレディの遺作となったThe Show Must Go Onです。ベタと言われようが何と揶揄されようが、私にとって、これは絶対に外せないフレディ最高のパフォーマンスです。私が聴く音楽は9割クラシックですが、Queenとピンクフロイドが鳴らないのは許されない。
さて、どうか。
…たしかに、フレディが居ます。でもこれはダメだ。低音が全く着いて来ない。いつも聴いているうちのシステムが低音ドーピングのBOSEだということを割り引いても、幾らなんでもこの鳴り方は許容できない。
かなり極端に言うと音の分布が逆三角形のイメージ。高音、中高音に音が寄り、低音が薄すぎる。
これではロックは全く鳴りそうにありません。
やはりBrodmannはクラシック(特にピアノ)超特化型のスピーカーです。困った。今聴いているF1より購入を検討しているF2なら確かに低音は(ウーファーが一つ多い分)大幅に増強されると思います。ただ
何か、私の中でピンとこない。低音がどうこうとかそういう次元ではなく、どうにも全体的な違和感が拭えない。
視線を移したその先には、もう一つのBrodmann「VC1」がありました。

「VC1聴いてみられますか?」

貴様ニュータイプかっ!?
余りの的確な反応に驚きながら、その提案を受け入れました。
F1を外して、VC1へ。アンプはそのまま。音量もそのまま。まずかけて頂いたのはブルックナーの9番。ただし持参したソフトは上記のように上手くならないので、既にシステムに入っていたベルリンフィルとの演奏。その最初の一音。

「…何これ?」

思わず口をついて、無意識に声が漏れます。
低音がどうとか、そういうレベルではなく、完全に次元が違う音が鳴り響きます。いや方向性は同じです。同じですが位置する地点が違いすぎる。また今まで、私はこのベルリンフィルとの演奏を評価して来なかったのですが、その認識を180度改めざるを得ませんでした。この演奏は、こんなブルックナーが鳴っていたのか?こんなに凄い演奏だったのか?
改めて他も聴き直します。ケンプのバッハ。ピアノの存在感が先ほどと段違いです。チャイ4、フルヴェンその他全部全く違う。凄い。そしてフレディのThe Show Must Go On
…完璧です。フレディの魂の叫び。それに答えるブライアン・メイのギターソロ。もう一度言います。完璧です。
…何で死んだんだフレディ。

そう「あの時」私が心斎橋のビジネスホテルの一室、ハイエンドオーディオショウで聴いたのはこの音。これなんです。

…さて、その後、どういう結論に至ったか。賢明なる読者の皆様には自明かと思われますがスピーカーは無事、VC1に変更と相成りました。
またプリメインアンプですが、V40SEの中古がどうにも程度がよろしくないとのことで、数か月前におろしたばかりの、今聴いていた店頭デモ機を格安でという話になり、そちらに変更しました。数万の追加で新品保証がつくならそっちでしょう。スピーカー予算の破滅的な暴騰に比べれば、些末な話です。

帰路。得意先の忘年会に向かう新幹線の車中、やっちまった感に苛まれつつ、しかしこの結末は、もう「あの時」既に決まっていたのかと納得もしました。結論に至るのに少し遠回りしたかもしれません。遅いじゃないかミッターマイヤー。

…さてその後、最終見積書を精査していると試聴機V40SE+BlackBoxの金額にあと少し追い金すれば「V70SE」に手が届くではないかと気付いてしまい、その悪魔の囁きに身を委ねたのは、また別の物語。

いつもの事ですが、もう行き着くところまで行ってしまった感がありますね。

さぁあとは、完璧にチューニングされたお店の視聴空間ではなく、私の家のこの残念な空間でちゃんと鳴ってくれることを祈るのみです。

ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ。

君の名は。

チクショウ。おもしれーじゃねーか。

ただ、ラストシーンは小田急線のあの踏切なら尚良かったですね

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その8【乱離編】

ハイエンドオーディオショウという業の深そうなイベントに、Brodmann聞きたさにかまけて仕事をフルパワーでブン投げて、イベント初日金曜夕方に赴いた私ですが、どんな会場かと思えば、ただのビジネスホテルでした。とは言えオーディオショウという性質上、音量をバカみたいに上げますので、ホテルまるまる借り上げて行われている模様。
さて私の目的はあくまでBrodmannの輸入代理店フューレンコーディネートの会場です。他の展示には目もくれず9階へ直行。
部屋に進むと、ほんとにただのビジネスホテルの一室に試聴会場がありました。先客が1名。スピーカーは2組設置されていました。一つはピエガのハイエンドブックシェルフCoax 311。そしてもう一つがBrodmannの「VC1」でした。鳴っていたのはピエガの方。これがなかなか素晴らしい音。流石にスタンド合わせて100万円のスピーカーは違います。以前ヨドバシの店員さんが仰ったように、特に高音の自然さが素晴らしい。これがリボンツイーターの威力なのか。暫く聴いていると、先客の方が席を立ち、私一人に。
ピエガは勿論素晴らしいですが、私の興味はあくまでBrodmannです。代理店の説明員の方にお願いしBrodmannに切り替えてもらいました。と、何やらアンプも変えてらっしゃいます。今更気づきましたが躯体上部にほんのり発光する4本の真空管。なんと、真空管アンプがこんなに鋭い音を出すのかと。
どこのアンプですか?Octave?へぇドイツ製。ドイツのアンプとオーストリアのスピーカーは、そりゃ相性が良さそうです。
さて、機材変更は終わりました。先ほどピエガで聴いていたのと同じ音源、ショパンのピアノです。果たしてどうか。

最初の一音。

耳を疑う、とはまさにこの事。

これは、紛うことなき「ピアノの音」です。

いや、ピアノ曲だから当たり前ですがそういう意味ではなく
「スピーカーから出るピアノの音」ではなく「ピアノから出るピアノの音」まさにそれなんです。
ピエガと比較してそれが如実に、鮮明に、露わになりました。ピエガのそれは言うならば「高音質スピーカーの音」でした。「ピアノそのものの音」では勿論、ない。というか、ピエガ云々ではなく、今まで他のどんなスピーカーで聴いても決して鳴らなかった音です。
ピアノだけではありません。モーツァルトの小編成での弦と木管。バッハのチェンバロ。チャイコフスキーの金管。どれもこれも素晴らしく「リアル」です。「実演の音」に極めて近い。特にピアノは群を抜きます。
例えば、スタインウェイがそこにあって、ピアニストがエア演奏してる後ろでこのスピーカーが鳴ってても気付かない、そのくらいのレベル。
やはり、私が求めるスピーカーはこれではないか。これしかないのではないか?
…とは言え、私はまだ比較を行っていません。まだ最終決断を下すには早すぎる。折角のハイエンドオーディオショウです。全フロアに名だたるメーカーのシステムがひしめいているわけですから、他も聴いてみましょう。
というわけでフロア巡りを行いました。全部書いていくわけにもいきませんので、一つだけ印象に残ったものを。
それはLINNのシステムでした。フューレンと違って試聴コーナーには大勢先客が居ましたので、私好みの楽曲はかけられませんでしたが、非常に興味深い鳴り方をしていました。音の密度が濃い。というか情報量が多い。モニター系スピーカーの音とはまた異なる緻密な鳴り方に大変驚きましたが、値札を見て更に驚きました。ざっくり400万て。
因みに国産系ハイエンドメーカーはフラグシップを超大音量でぶっ放してました。耳が痛くなったので早々に退散。
てか初めてこの手のイベントに参加しましたが、何故どこもかしこもあんなバカみたいな大音量で鳴らすんでしょう?どこの世界にあんな音量で聴く近所迷惑なバカが居るのか。ド田舎の一軒家か、地下室か、或いは完全な防音室か。そういう特殊なユーザーだけを対象とするなら意味があるかもしれませんが、一般的な現実的試聴環境とこれほどまで乖離がある展示会に、一体何の意味があるのか??まるでこの何十年間変わりなくスーパースポーツカーを箱根や筑波でアホみたいに走らせて車の優劣を論評(笑)し続ける車雑誌業界とやってることは大差ありません。そんなのだからイベント参加者の平均年齢が恐ろしく高く、若年層が参加する余地が無くなるんですよ。
…と、まぁ私みたいな素人が批判しても仕方ないですね。話を元に戻しましょう。

…やはりBrodmannしかないか。

もとのフロアに戻りましたら、また別の方がピエガを聴いてました。その方が去ってから、再度お願いをしてBrodmannに戻してもらい、もう一度様々聴きました。他の様々なハイエンドシステムを聴いて、なお
このリアルさには瞠目させられます。代理店の方に様々色々質問し、それら全てに丁寧な回答を頂戴しました。
そして最後、一度ヴォーカルも聴いてみようと、かけて頂いた女性ヴォーカル。いや感動的でしたね。
定位がいいとか、音像が明確とか、もうどうでもよく。そこにホントに本人が居る。生々しいなんてもんじゃない。

…これはもう、買うしかない。上位グレードのVC(Vienna Classic Series )系は流石に予算オーバーです。
下位グレードの(Festivalシリーズ)F1辺りが本命か。
関西では取扱いがないので、他エリアのお勧めのお店を数店伺い、冬のボーナスが出次第発注しますと申し上げた所「その時は私がセッティングに行きます!」と派手なリップサービスも頂戴し、閉館時間ギリギリまで使った試聴会は終了しました。その日その後飲み会でしたが、私は全く上の空だったのは言うまでもありません。

さて、では実際にどこのお店にコンタクトを取るか。
フューレンのお勧めのお店のHPを見比べ、その中で、最もBrodmannの扱いが多かったのが東京にある「Sound create」でした。
問い合わせフォームにBrodmannに興味があること、お勧めのアンプを教えてほしいこと、大体の費用見積もりが欲しいなど記載し投げかけてみました。店長さんから大変丁寧で詳しいお返事を頂き、そこから十数回に及ぶ、もはや文通のレベルのやりとりを行い、最終的な方向性として

プリメインアンプ
Octave V40SE(中古)&Black Box(中古)
スピーカー
BrodmannのF2

で行こうと、ほぼ決定。
…はてOctave?LuxmanのL-550AX2はどうした?
当初の予算はどこに行ったのか?
アムリッツァのキャゼルヌばりに声を張り上げそうになりますが
Brodmannを鳴らすためなら女房も泣かす勢いで、魔術か何かにかけられたように、見積金額が跳ね上がります。
ただやはりBrodmannのFestivalシリーズを聴いていないのが、どうにも最後、引っかかりました。事ここまで来たのなら、やはり自分の耳で聴いて、決断を下すべき。
というわけで、東京銀座へ最終試聴に赴くことを決めた訳です。
さてしかし試聴機材としてF2が確保できない、とのことでしたので、仕方なくF1と、上位グレードVC1を「念のため」ご用意頂くことに。

そして師走の最初の土曜日。レダ2号ならぬ、のぞみ214号に乗って、私は最後の決断を下すべく試聴の旅に赴くのでした…

ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ。


※あけましておめでとうございます。
てか今日のニューイヤーコンサートはいいですね。こんなにウィーンフィルが歌っているのは久々ではないでしょうか?例えて言うなれば演歌のような節回しですが、まぁ面白いと言えば面白い。2008年のプレートル以来かと思います。良い一年になりそうですね。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その7【怒涛編】

数々の試聴を重ね、概ねスピーカーの方向性が定まってきたある日、本屋に訪れた私はいつものようにオーディオ雑誌コーナーで立ち読みでもしようかと棚を見ていましたら、そこで一冊の本を見つけます

「SPEAKER BOOK 2017」

手に取ってみますと、様々なスピーカーブランドの商品を金額順に挙げ商品説明をギッシリ記した内容。成程これまでスピーカー専門誌なんて読んだことがありませんでしたから、これは有益な本だと買うことにしました。
家に帰って早速、パラパラと読んでみます。そしてその127ページ目。このページを読んだがために、当初予算など粉微塵に吹っ飛ぶことになるわけです。
そこに記されたスピーカー、それが

アップロードファイル 739-1.jpg
BRODMANN F1

でした。
それは大変変わったカタチをしています。普通このクラスのフロアスタンディングのスピーカーならツイーター1つにウーファーが2つか3つ並ぶのが定石です。しかし、どこにもウーファーが見当たらない。
そして何より小さい。幅170mm、高さ929mm、奥行228mmは望外の小ささです。そう「小さい」というのは私にとって大変重要です。対配偶者戦略として、重厚長大なスピーカーは極めて好ましくありません(その辺がベートーヴェンを躊躇した理由でもあります)
さて説明文を読み進めると、オーストリアはウィーンで製造されていること。元はベーゼンドルファーのスピーカーであったこと。ウーファーは側面につけられており、更にその前にサウンドボードと呼ばれる共鳴構造があることなどなど、私の興味を引くに十分すぎる内容が続き
最後に、トドメの一文

「80歳ほどの高齢な学者(製作者ハンス・ドイツ)にとって、モーツァルト、ベートーヴェン、リスト、ショパン…こそが音楽であり、ジャズやロックは氏の人生にはない」

……これは要するに、私の為のスピーカーではないか?

雑誌記載の内容では十分ではありません。ホームページでも様々情報を仕入れました。

http://www.brodmann.jp/index.html

概要を改めてまとめますと
音響エンジニアであるハンス・ドイツ氏が、仕事を通じて40年来の親交があったカラヤンからの勧めもあり、ピアノメーカー「ベーゼンドルファー」がスピーカー部門を立ち上げた際に、その設計を担当。一般的なスピーカー設計と全く異なる(バスレフやダンピングファクターを一切使用しない)設計で新たなスピーカーを生み出しますが、当のベーゼンドルファーが経営難に陥ってヤマハに買収される際、スピーカー部門はお払い箱となりました。切り離されたスピーカー部門はそのまま、中国資本のオーストリアピアノメーカー「ブロッドマン」へ移籍。
そこでベーゼンドルファー時代のそれを改良したスピーカー作成を再開させました。特許を取っている「ホーンレゾネーター」や独自のサウンドボードなど、色々理屈はありますが、一言で言えば、スピーカーをスピーカーではなく「楽器」とみなして設計している、と言えます。一般的なハイエンドスピーカーと真逆の思想ですね。
読めば読むほど、興味が湧きます。これは一度聴いてみたい。なんとしても聴いてみたい。
ホームページには取扱店が挙げられており、大阪でも2店舗がありました。私はすぐにその2店に連絡してみましたが極めて残念ながら、両店とも現在試聴機はないとのこと。というか、殆どそのスピーカーの存在を知らない様子。

困った。どうにもならない。

まさかスピーカーの試聴のために東京に行くわけにもいかない。どうしたものか。
悶々とするなか、ある日、私はオーディオ誌の広告ページで、捨て置けない情報を見つけます。

「大阪ハイエンドオーディオショウ2017 開催」

そしてその参加店リストの中には、BRODMANNの輸入代理店フューレンコーディネートの名前が。これは行かねばなりません。万難を排し、私は当日、仕事を早々に切り上げ大阪心斎橋に乗り込むのでした。

…ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その6【飛翔編】

絶品館(仮名)で、オーディオ専門店の洗礼を受けつつ、自分の音の好みと値引き率を知った私は試聴フィールドをヨドバシ梅田に変更し、都合3回くらい、本当に色々試させて貰いました。
まずアンプとCDプレーヤーですが、LUXMAN、DENON、YAMAHA等々をそれぞれ比較し(AIRBOW 憎けりゃMarantzまで憎い。の理屈でMarantzは除外。ならDENONもダメじゃねーかというツッコミは無しで)その中ではLUXMANが個人的には最もよく感じました。アンプはL-550AX2、CDプレーヤーは確かにD-06uは素晴らしいですが幾らなんでもCDプレーヤーに50万はかけられない。半値に近いD-05uで私には十分と思われます。

さてスピーカーです。
念のためB&Wのブックシェルフ型の最高峰805D3も聞いてみました。流石にCM6 S2とはまるで次元が違いますが当然方向性は同じです。とにかく明確。しかしどうしたことか私の好みに合わない。
カメラでもシグマのレンズが嫌いな私は、オーディオでも解像度命系は好みと違うようです。てか、そもそも予算が全く合いません。(スタンドと合わせたら約100万円です)
では特にクラシックに強いと言われるTannoy、DALIはどうか。それぞれフロアスタンディング型を聞いてみる。値段は805D3の遥か下にも関わらず、個人的にはこちらの音の方がまだ好みに合います、が、それでもまだピンと来ない。私の中でやはりVienna-acousticsのハイドンの音がまだ強く残っていました。
では、その上位機種「Mozart Grand Symphony Edition」(以下 モーツァルト)を聴いてみましょう。
…弦が美しい。本当に美しい。DALIのRubicon6と比較しても、弦の響きが明確に違う。Tnnnoyのフロアスタンディング(名前忘れました)と比較してもオーケストラの広がりが違う。そして同社のハイドンと比べると低音の力強さ音場の広さが格段に違う。これは凄い。モーツァルトでこれなら更に上ならどうなるのか。いや全体予算的にはもうモーツァルトでいいのではないか?店員さんに聞いてみますと3wayになるベートーヴェンは低音は勿論、全体のスケール感が更に大きくなるとのこと。ただし、ヨドバシには試聴機なし。
またVienna-acousticsより弦が美しいスピーカーメーカーはありますか?と問いますと、PIEGAがお勧めとのこと。スイス製でリボンツイーターの原理がどうにもよく分からないあのPIEGAですかそうですか、でもお高いんでしょう?ええとっても。これもヨドバシでの取り扱いがないとのこと。こういう商売っ気の無い本音で教えてくれる店員さんは本当に有り難いです。

さてしかし金額的な事を考えると、やはりVienna-acousticsがベストなのか。ただ私には一つ気になるスピーカーがありました。DYNAUDIOの40周年記念モデル「Special Forty」(以下SP40)です。
当然ヨドバシには置いてない。ですが、調べると日本橋にあるオーディオ専門店河口無線で試聴可能。
ということで、CDを幾枚か持って実際に行ってみました。
店員さんにSP40を聴きたい旨、伝えると極めて快く案内して頂きました。SP40は意外と小型なブックシェルフ。高そうなAccuphaseのプリメインアンプ(型式忘れました)、外国の超高額なCDプレーヤー(これも名前忘れました)に繋がれており、私は愛聴盤であるブルックナー5番の究極の名演(ヨッフム=アムステルダムコンセルトヘボウ1986年)その第4楽章をかけて頂きました。さて試聴はあくまで試聴。ですので初めは数分で切り上げるつもりでした、が、しかし。
鳴り始めるともう、とても途中で切れません。凄い音です。リアルです。スピーカーが確かに消え失せ途轍もなく広い音場が広がります。感覚としてはコンサートホールの中央、少し後ろの席で聴いている感じです。途中から「スピーカーの試聴」という感覚は完全になくなり、音楽に浸ってしまいました。素晴らしいブル5。
そして、これは今でも明確に思い出せますが、最終のオケ全体の強奏によるコーダ。もう完全に、目の前にアムステルダムコンセルトヘボウが居ました。鳥肌が立つどころではなく、私は涙がこぼれるのを必死に我慢する始末。
これはとんでもないスピーカーです。申し訳ないことに結局第4楽章をまるまる聞いてしまいました。
もうこれでいいんじゃないかと、殆ど決断を下しそうになったのですが、次にかけて頂いたフルトヴェングラーの戦中録音のベートーヴェン7番が残念ながら全てをひっくり返しました。何せ酷い。音が耳にナイフのように突き刺さります。録音の悪さがモロに出て全く聞けたものではありません。これは本当に困った。フルトヴェングラーが聴けないのは致命的な大問題です。
…いやこれは特に厳密な音を作るAccuphaseだから不味いのか、Luxmanならもしかするとマシかも…などと考えますが、何れにせよスピーカーの特性は変わらない訳ですから、どうにも不味い。
と困っていると店員さんが、ソナスを聴いてみますか?とのこと。予算オーバーではありますが一度聞いてみたいスピーカーなので是非お願いしますとかけて頂きました。Olympica Iです。これが意外でした。というのもソナスファベールと言えば、過剰なまでの美音というイメージでしたが、このOlympica Iはモニター系とまでは行きませんが、どちらかと言うと解像度重視の音に感じます。ただそうは言ってもやはり弦の響きは美しい。先ほどSP40で全くダメだったフルトヴェングラーも、刺々しさが消え耳に心地いいです、が、どうにも何か違う。Vienna-acousticsで聴くベートーヴェンは、ちゃんとベートーヴェンなのですが、Olympica Iは響きが何かイタリアのノリというか何か釈然としません。まぁ多分に先入観による物なのかもしれませんが、オーディオは主観が全てです。そう感じるんだから仕方ない。

…困りました。SP40は素晴らしいスピーカーです。ブックシェルフでありながら、モーツァルトを超える実演感がある。ただ録音の瑕疵が見えすぎ私にとってそれは最悪の欠点です。となれば、やはりモーツァルトの上位機種「Beethoven Baby Grand symphony Edition」を狙うしかないか…
店員さんに心からのお礼を申し上げて、しかし心中複雑な思いで帰路についた次第。

というわけで、最も音を決定付けるスピーカー選びが遅々として進まない中、一方でもう決めていたCDプレーヤーについてヤフオクで極めて優良な出物があり(LUXMAN正規店の展示品の払い下げ。新品扱いで保証が付き値段は6掛け)私はそのD-05uを万難を排し落札しました。
さて家に届いて、CD部がぶっつぶれたBOSEのAWMに取り敢えず繋いで音を出して、心底驚いた。
…以前、半分冗談めかして、CDプレーヤーの重要性を語り、理屈ではそうだと分かっていましたが、まさか本当にここまで違うとは。
全く音が違います。鮮明さが半端ではありません。そうですね。例えば、その筋では有名な1945年1月23日ドイツベルリンにて録音されたギーゼキングによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番。これは現存するほぼ最古の「ステレオ録音」として有名であると同時に、演奏の後ろで、ドイツ軍による首都防衛のための高射砲の発射音が記録されていることで有名です。(Wiki先生によると12.8 cm FlaK 40(アハトアハトの後継のようですね) )
で、この砲火の音ですが、今までのAWMのCDプレーヤーでは「言われてみれば確かに聞こえる」というレベルでしたが
D-05uで聴けば、もう、完全に聞こえます。恐ろしくクリア。
と、まぁそのような音のクリアさもそうですが、それが刺々しい音にならないのが、流石はLUXMAN。
私は大いに満足し、アンプも当然、同社のL-550AX2、そしてスピーカーはまぁ恐らくベートーヴェンか或いはSP40にしようかと、ほぼほぼ決めていたある日、偶然書店にて購入した一冊の本が、全て、何もかもを根底から覆すことになるわけですが、もうほんといい加減長くなったので、また次回。

ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ。

オーディオど素人によるハイエンドオーディオ入門 その5【風雲編】

さて、前回は何がハイエンドオーディオ入門なのか全く分からない話でしたので、今回は方向を戻しましょう。
そもそもハイエンドオーディオ、というか、ピュアオーディオとは何か、というお話。「その5」まで来てそこに戻るか、というツッコミは無視して続けます。

一般に「ピュアオーディオ」とは、オールインワンの音楽再生システム(ラジカセなど)ではなく「CDプレーヤー」「アンプ」「スピーカー」など、各種コンポーネントが、独立している機器類を言うようです。

では「音楽を再生する」過程を追ってみましょう。

まずソース(CDを仮定)からデータを取り出すことが必要ですよね。ここは当然「CDプレーヤー」が必要になります。
そしてその「CDプレーヤー」の中では、おおまかに2つの仕事が行われています。一つはCDに記録されたデジタルデータを読み取る部分(CDトランスポートと呼ばれたりします)二つ目は、読み取られたデジタルデータそのものでは音楽は鳴りませんので、デジタルデータをアナログの電気信号に変換する部分「DAC(Digital-to-Analog Converter)」が存在します。
※行き過ぎたハイエンドオーディオでは、この2つをそれぞれ独立した機械で行ったりします。凄いのはそれぞれ250万の2つで500万とか。百歩譲ってDACに金かけるのはまだ分かりますが、CD読むだけに大金かける意味が分かりません。凄いお布施。

さてCDプレーヤーで無事録音デジタルデータはアナログ電気信号に変わりました。しかし、この電気信号は極めて微弱でありスピーカーを駆動し、空気を震わせて音を発生させ、人間に「音楽」であると認識させるには全く至りません。そうするには電気信号を増幅する必要があります。それを担うのが「アンプ」となるわけです。
そしてそのアンプにも、おおまかに2つの役割に分かれます。
一つはどのようにアナログデータを増幅するかについて指示したり、音量=出力を調整する部分「プリアンプ」と、その指示に従って実際に電気信号を増幅する部分「パワーアンプ」に分かれます。大体はこの二つの役割を1台で担う「プリメインアンプ」となる訳ですが、「プリ」と「パワー」がそれぞれ分かれた「セパレートアンプ」ならまだしも
スピーカー1台につき1台のパワーアンプを使用する「モノラルパワーアンプ」などという業の深い世界もあります。
酷いのになると、プリアンプ、モノラルパワーアンプ(2台)それぞれ500万ずつで合計1500万とか。もう宗教超えてますね。

もういい加減しんどくなってきましたが、ようやく音楽データが増幅された電気信号になりました。
あとはそれに従って空気を震わせるだけです、が、これが一大事。
残念ながら音は、超低音から超高音まで、超幅広く存在するわけで、それを上手く再現する=空気を振動させるのを1つのユニットで賄うのは困難です。そりゃそうですよね。低音と高音では周波数が異なるわけですから。ですので一般的に、低音を受け持つ「ウーファー」と中高音を受け持つ「ツイーター」が分かれた2way式が多くなります。勿論もっと細分化して3way、場合によっては4wayなんかもありますが、ユニットが増えれば当然制御も難しくなりますから単純に増やせば良いとは限らなかったりします。さらにスピーカーの本体=箱にも色々形状があり…ともういいや。しんどい。
ちなみにスピーカーも酷いのになると3000万円とかします。頭がおかしいとしか。

さて上記の3部位についてはまだ分かりますが、それぞれの機械を繋ぐための各種ケーブル類。更にそもそもの電気を持ってくる電源コード、電源タップなどなど周辺器具各種に至っては最早宗教すら超越し完全なオカルトの世界が広がりますので、取り敢えず、置いておきます。

…では、これら3部位にどのようにお金を振り分けるべきか?

よく言われるのは、音を決定づける順番として、スピーカー>アンプ>CDプレーヤーとされていますが大元のCDプレーヤーがクソだと、そこから先はクソを増幅した巨大なるクソになると言えなくもありません。
その理屈を前面に押し出し「プレーヤーこそ金を懸けるべき派」も存在しますが、まぁ流石にそれは言い過ぎかと。
私個人的にはよく言われる順番のとおりだと思います。
というわけで、私は各種雑誌及びネットを彷徨い、まずスピーカーについて幾つかの候補を上げました。

モニター系代表=B&W
クラシックを聴くなら=Vienna-acoustics
その他にもTannoy、DALI、あとDYNAUDIOなんかも聞いてみたい。

もの凄く前段が長くなりましたが、では実際に聞きに行ってみましょう。
また試聴もそうですが、オーディオ専門店の値引き率を把握したいというのもありました。

…で、初めに門を叩いたのは、何を考えたか、大阪を代表する超個性派のお店「絶品館(仮名)」
初心者が行くには余りにもハードルが高い店ですが、逆に言えば最難関を知っておけばあとはどこ行っても大丈夫だろうと。
というわけで、私は外回りの途中でフラッと寄ってみたのでした。
想像より小さな店舗。ドアを開け入ってみますと、まぁ当然ながら音楽が鳴ってます。いい音。店の中には常連さん(?)のような先客が店員さんと話し込んでました。私はお店に並ぶ各種スピーカーやらアンプやらを暫く眺めていますが、他の店員さんも、私には声をかけて頂けないのでこちらから話しかけ凡その予算と主にクラシックを聴く旨伝え、お勧めのモノを教えてくださいと。
で、初めに鳴らして頂いたのはB&Wのブックシェルフ型。丁髷のようなツイーターが乗るCM6 S2です。
目の覚めるようなシャープな音。とにかく音が明確です。成程これが所謂「音の解像度が高い」という奴か。極めて分かりやすい高音質。ただ、どうしてでしょう。私には、あくまでも私的には、耳に突き刺さる感じがしてどうにも全く好みにあいません。
で、次に鳴らして頂いたのは、私的に本命のVienna-acoustics。そのエントリー機種であるHaydn Grand Symphony Editionです。
もう、鳴り始めた最初の弦の響きで「あぁこれだ」と。素晴らしい響き。全くB&Wとは異なります。CDプレーヤーとアンプは、そのお店の自社ブランドである改造マランツのままですから、完全にスピーカーの個性です。別に解像度が低いわけではありません。B&Wに比べ音の輪郭が別段不明瞭になったわけではないですが、角が取れるというか響きが自然です。音源をピアノ曲に変えて頂いても感想は変わりません。自然。交響曲に変えても何の不足も感じません。
「もしかしてこれで十分じゃないか?」
私の脳裏にそのような考えが浮かびます。ただ一方で上位機種が気になります。モーツァルトとベートーヴェンですね。(ともにスピーカーの名前)本当はそれらを聞かせて欲しかったのですが、試聴中、色々質問してもあまりお答えを頂けず、これ以上試聴を申し出るのが憚られる空気が充満していました。
まぁおそらく私のようにオーディオド素人で、予算総額100万程度の人間は、やはりこの店の客ではない様子。それぞれの金額を伺うに留め、辞去した次第。
ただ極めて大きな収穫がありました。私が好む「音の方向性」が掴めたことです。
とは言えやはりまだ専門店は敷居が高いことも理解が出来ましたので、試聴フィールドをド素人にやさしいヨドバシ梅田に変更し、様々比較検討するわけですが、いい加減疲れたのでまた次回。

ハイエンドオーディオの歴史がまた1ページ。

…なんかほんとにその10まで行けそうな気がしてきましたね。