コアサーバーV2プランご契約でドメイン更新費用が永久無料

記事一覧

最早

何ヶ月ぶりか分からないくらい久々に、車の話をしたいと思います。
先日、haseさんと惑星同盟とで京都写真撮りツアーに行ってきまして、その時の写真はまた追って載せますが、その際、haseさんの車RX-8で終日移動したんですね。
私も少しですが運転をさせて頂きました。

マツダRX-8

FD3S型RX-7が排ガス基準やら何やらの問題もあり販売終了となった後、発売されたマツダの魂。
私も今までずっと一度は乗ってみたいと思っていましたが、ようやくその念願が果たせました。

この車の肝を一言で表現するならば「不自然な、完璧な自然さ」であると言えます。

さて、まずこの車の出自です。2003年発売。当時、マツダはフォード傘下です。ロータリーを積む後継車として、フォードは、2ドアのスポーツカーなど認めませんでした。
「大人4人が余裕を持て乗れる4ドア車」これが絶対条件。
要するに普通のサルーン作れと。ミレーニアにでもロータリー積んでろと。普通の真っ当なサラリーマン開発者ですと、おそらくそういう事になったかも知れません。
しかしマツダの開発陣は、そうではありませんでした。ロータリーと言えば、スポーツだろうと。FDの跡にロータリーを継ぐ車が、スポーツでなくてどうするかと。
結果、観音開きの4ドアに、13Bを徹底的に改良した新NAロータリー、エンジンは勿論MTも可能な限り中央に低く寄せた極端なフロントミドシップなどなど。そこかしこに偏執的なまでの拘りを見せ、RX8という車は生を受けました。
で、京都府北部の山道を走ってみた印象。
まずロータリー。とにかくどこまでも回るロータリーの特性は継承しつつ、信じられないのは、低回転からちゃんとトルクがついてきます。従って、ちょっとアクセルを踏み込むなどの微妙なコントロールが実に自然。ハンドリングに関しても、操舵感はちょうどいい重さ、別段きっかけを与えずとも容易にヨーがつき自然に鼻が内を向きます。足回りもしなやかとしか表現しようの無い素晴らしい味。ブレーキ。これも極めて優秀です。ポルシェのような硬質且つキモいくらいの制動はありませんが、十二分にBMWあたり(要するに4ドア世界最高水準)とタメを張れるレベルの自然さと利き。
ということで、この車。とにかく自然です。極めて自然。全ての要素が極めて高いレベルで調和した自然さ。

ですが、この自然さは、本来有り得ないことなんです。

諸元表を見たらすぐに奇異な事が分かります。
全長 4435mm
全幅 1770mm
全高 1340mm
ホイールベース 2700mm
トレッド 1500mm

ちなみに、RX7(FD)
全長 4285mm
全幅 1760mm
全高 1230mm
ホイールベース 2425mm
トレッド 1460mm

車の挙動のシャープさが知れる最も単純な指標の一つにホイールベースをトレッドで割った数字があります。この数字が小さくなればなるほど、挙動はクイックになります。
1.6
あたりが、スポーツカーか否かの指標。ちなみにカレラ号は1.63、FDは1.66、そしてRX8は1.8です。これは完全にサルーンの値(現行ベンツのEクラスが1.79です)

つまり、RX8のこの巨大なホイールベースとトレッド比、観音開きのピラーレスボディ形状を鑑みれば、これだけ自然に走るスポーツカーなど出来るはずがないんです。勿論、小さな欠点は色々あります。しかし、本来有り得ない無茶な制約を課され、開き直りにも似た発想の転換と偏執的な拘りで、それをRX8はやってのけました。
無茶な基本を技術で超える。素晴らしい。本当に素晴らしいです。
33Rにも似た背景ですが、変態っぷりは数段上。いいですね。流石マツダ。こういう所が大好きです。

車は本当に素晴らしい。

しかし、極めて残念なことにRX8は、今年、2012年6月22日をもって販売を終了しました。

RX8。私が残念なのは、この偉大な車が「ロードスター」になれなかったことです。

即ち、今隆盛を誇っている「4ドアクーペ」に、もしかするとRX8は、その嚆矢に成り得たのにそうはなれなかった。ロードスターのような「車の新しいジャンルの可能性」を示す存在にはなれなかった。
それが残念でなりません。
その座はベンツのCLSに奪われ、今そのカテゴリーはポルシェパナメーラ、マセラティクワトロポルテ、アストンマーチンラピード、アウディA7、BMW6グランクーペ、百花繚乱です。
もしスポーツではなくGTを目指せば、愚直に真面目に車作りなどせずカッコのみを追求すれば、当時一瞬訪れたリーマンショック前の瞬間風速的な、特に欧州の好景気に乗じることが出来れば、或いは、上記の車たちに並ぶ存在になれたかもしれません。
勿論、所謂ブランド力で及ばず、そうはなれなかった公算も大きいです。ただ、何とも表現しがたいこの口惜しさがどうしても拭いきれません。

もう一つ、痛惜としか言えないこと。

ロータリーの歴史が、ここで一旦途切れることになりました。

ロータリーに関わってきたマツダ技術者達の心中如何ばかりのことでしょう。

ただ、RX8に乗って確信したことは、21世紀の技術を持って、マツダはマツダであり続けているという事です。単なる懐古ではなく、確たる世界最高水準の技術を持ち、しかし根本は変わっていません。
必ずマツダは、また素晴らしいスポーツカーを生み出してくれる。RX8はそう確信させてくれました。

近い将来あらわれる、あの車。

究極のライトウェイトスポーツを、私は心から期待しています。

コメント一覧