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この日記で

私が書くものといえば、車のことばかりだと皆さんは思われてるのではないでしょうか。てか、私自身そう思ってたんですが、カテゴライズの「Four wheels」即ち車話の総数を見て驚きました。
なんとたったの「4つ」なんです!!
つまり全然車の話をしていないわけですよ。これはイケナイ。こんなことでは「車系総合日記」を謳う馬の餞の名折れ。
いつからそんな謳い文句になったのかは知りませんが、今日はそんな車のお話。というか、「車の雑誌」のお話。

さて「車の雑誌」というのは、車雑誌専門の編集スタッフと所謂「自動車評論家」と呼ばれる人たちが作っていくものです。そして当然のごとく、その雑誌の質は、編集スタッフと評論家の力量に左右されるわけですが、しかし。なかなかそう理屈どおりにいかないのが世の常でして。
車雑誌にしろ何にしろ、本を手にとって見ていただくと分かるのですが、とにかく「広告」が多いわけですよ。そして車雑誌の広告は当然、車メーカーのそれが殆どです。雑誌編集側としては、広告は収入の柱。大黒柱です。
ぶっちゃけ神ですね。一柱50万くらいらしいですが。
さて。
じゃあそれがどういう問題に繋がるか。
神様である広告主の商品=車を、批判することが事実上不可能なわけです。
…車雑誌が車を正しく評価できない。ま、よく言われる「チョーチン記事」になるわけですね。私が散々レクサス立ち上げの際の自動車雑誌の姿勢を批判したその背景には、そんな理由もあるわけです。

しかしですね。ダメな車はどんなに褒めてもやっぱりダメなわけでして、神様は実は裸なわけですよ。じゃあ「裸だ!!」って叫ぶ奴はいないのか?居ます。ごく少数ですが。
その筆頭、最右翼の自動車評論家が、福野礼一郎というオッサンです。

この人、何者かというと、もともとはどうやらイイとこのボンボンみたいですがその後、不良になって暴走族になり、option(改造車雑誌)の編集をやり、自動車評論家になった、という原初の経歴だけをみるとDQN丸出しですが、実態はさにあらず。
極めて頭は切れますので、自動車工学に留まらず、人間工学、機械工学に精通し車好きにはよくある話で、時計やミリタリーにも造詣が深いという何でも屋。で、その真骨頂は、独自の視点から一貫した批評を行い、褒める車はトコトン褒め、貶す車は、トコトン貶す。で、基本的に嘘がないです。文体も硬い物から軽妙なものまでなんでも来い。そして何と言っても知識が圧倒的。半端ないです。
さて、「独自の視点」と言いますと身勝手な感じがしますが、福野氏の「独自の視点」とは至って真っ当な物です。
即ち「車の良し悪しは基本で決まる」
じゃあその「基本」とは何か?
「物理法則」です。ヨーだとか、慣性モーメントだとか色々ありますが、ごく単純に書きますと「軽くて、コンパクトで、重心が低い」車は、走りも燃費も性能もいいというごくごく当たり前の話。その基準で、車をブッタ切るわけです。ですから、独断でも偏見でもなんでもない。説得力は天下一品です。
さてしかし、以前にここで書いたと思いますが、世の消費者の自動車への要望は「いい基本」とは相容れないモノなんですね。で、車メーカーは基本的に哲学を売っているわけではありませんから、マーケティング結果を車に詰め込みます。結果出来上がったものは基本を逸脱する。で、基本を逸脱して出来た車に対して、福野氏がどーゆー評価をくだすか。
ケチョンケチョンに貶すわけですよ。じゃあどうなるか、広告代理店キレますね。代理店キレたらどうなるか。編集は青くなりますね。で、干される。
…普通の人なら、そーゆー目にあうと、「大人」になるわけですが。しかし。奴はならない。
またぞろどこかでヤラカスわけですよ。しかし干されても干されても復活します。何故か?彼が書く物が、(一つの見方ではありますが)正しいからです。でそれを評価する読者がいるから、何度でも蘇る。

さて、そんな福野礼一郎が、自分の信念「いい物はいい、悪い物は悪い」「価値ある情報なら客はつく」という、まぁごく真っ当な、しかし世の中そうはいかない信念を形にした

「クルマの神様」

という雑誌を、昨年の夏くらいでしょうか。出したわけですよ。NAVIの別冊としてね。で、まぁそれが極めて面白かったわけですが、世の中当然の事ながら売れなきゃどんなにいい物でもダメなわけです。
別冊扱いで出た本が、月刊誌に格上げなんてことは、今日の雑誌不況の中じゃ至難。発売から3ヶ月が過ぎ、半年が過ぎ、それでも何も音沙汰無い。
あぁ没企画になったかと悲しく思っていたのですが、しかし。
この5月29日「クルマの神様」は季刊誌として復活しました。
いや私は嬉しかった。速攻で買いました。1470円というベラボウな高値ですが、チョーチン記事オンパレの通常雑誌に800円900円払う事を思えば安いもの。
で、今回の「クルマの神様」は試乗記がメインです。例によって極めて面白い。というか読んでためになります。てか、私が知らないことを書いてくれるのは福野氏くらいのものです(ぉ

さて、1470円をベラボウな高値と書きました。記事の質は当然高いのですが、紙の質、印刷の質などは、ぶっちゃけ680円どんなに頑張っても1000円以下の雑誌レベルってところでしょうか。
じゃあ何故そんな値段か?季刊誌だからという理由もあるでしょうが。
実際手にとって読めば違和感に気付くはずです。というのも、今回の「クルマの神様」タイヤや工具メーカーの広告はありますが車メーカーの広告が、一切無いんです。つまり、雑誌作成における重要な収入源の一つが、恐らく意図的に抜け落ちています。だから高い。じゃあこれはどういう思惑か?

絶対にチョーチン記事は書かない、という方向性の表明でしょう。

…その心意気や良し。
1470円だろうが2000円だろうが払ってやる。
というわけで「クルマの神様」ごく一部の人間に大好評発売中です。
皆さんも是非。

コメント一覧

s 2006年06月02日(金)23時53分 編集・削除

創刊20周年で気合の入ったガングロもといGENROQと是非比べてみよう!

2006年06月03日(土)09時39分 編集・削除

確かに気合入ってるな。あれで980円は安い。
てか絶対赤字。
20世紀VS21世紀スーパーカー対決は面白かった。