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旅日記番外編【ドイツ交通事情】

車好きにとって、ドイツ「アウトバーン」は、ある種の憧れの場所です。
ドイツ版ニューディール政策。アドルフ・ヒトラーが為政者として非凡であったことを示す遺産。そんな歴史的背景もさることながら、我々を惹きつけて止まないのは他でもない「速度無制限」の神話です。
「速度無制限」いい響きですね。
しかし「最近のアウトバーンはかなりの部分で制限速度が設けられ、我々が想像するそれとは違う」というのが事情通がよく言うアウトバーンの現状ですが、では、バス乗車とは言え、実際この目で見たそれはどうだったのか。アウトバーンに限らず、ドイツの交通事情はどうだったのか。そういう話を少ししてみたいと思います。
私が走ったのは、深夜のフランクフルトからルードヴィッヒスハーフェン、昼間のハイデルベルクからローテンベルク。夕方のミュンヘン周辺。午前中のミュンヘンからザルツブルク。要するにドイツ南部オーストリア北部のアウトバーン事情、ということになります。
さて、結論からはっきり言うと「アウトバーンは想像通りだった。」ということになります。
制限速度区間でも、誰もそんなもの守ってません。
3車線ある道路の中で、日本とは逆で一番左が追い越し車線。真ん中と右が走行車線です。
右は100km、真ん中120、左、無制限。
これが実情でした。
車種に関しての平均速度ですが、我々が乗車するバスが真ん中車線で120km程度。相対速度から見る左車線の推定速度は、意外にもベンツ、BMWがおとなしく140程度。アウディが元気で150以上。非常に好戦的でぶっ飛ばすのはVWで160くらい。
これが「平均」です。速いのは限りなく200に近いと思います。またバンや商用車でも容赦なく踏みます。140以上がざらに居ますね。どこかの国のように、追い越し車線を80km以下で走る馬鹿はどこにも居ません。そりゃそうです。死にますもの。
21世紀の今日でも、アウトバーンの正義は「速さ」でした。
ベンツだろうが何だろうが、遅い奴は真ん中か右車線を走らないといけません。また、追い越しが終われば、みんなちゃんと真ん中に戻ります。
超高速で極めて整然と、速度以外のルールとマナーが守られています。素晴らしい。
あと、旅行日記本編でも触れましたが、とにかくポルシェが少ない。全く見ません。しかし、2台だけ見たポルシェは、その2台とも「アウトバーンを走るポルシェ」として誰もがイメージするそのままでした。
即ち、他の何者より速い、圧倒的な速度で、左車線をぶっ飛んで行きます。確実に200kmオーバー。抜かされる時の音が違う。観光バス、それもヨーロッパ版の巨大観光バスが、抜かされる風圧で震えるんですから半端じゃありません。
本場のポルシェ乗りの気概を見せられました。ポルシェ911斯くあるべし。
さて、スピード至上主義のアウトバーンから降りて、一般道はどうか。
一言で言うと「合理主義の権化」これにつきます。
速度規制が実に明確で、しかも理に適っています。
80km。50km。30km。それらが場所によって非常に細かく設定されています。どうしてか?
2日目のロマンティック街道を南下する際、午前中、非常に濃い霧に包まれました。しかし上記の速度設定がここで活きます。郊外の道は80km、街中は50km、ロータリーや急カーブ前は30km。例え初めて走る道でも、例え濃霧の中でも、速度規制に則って走れば、安全に、適正速度で走ることが出来ます。どこかの国のように、片側3車線にも関わらず40kmとか、そういう意味不明で非合理な速度規制は一切ありません。また、郊外の交差点にはロータリーになっていますので、信号による停車が必要ありませんし渋滞も発生しません。どこかの国のように、ド田舎の見渡す限りの田んぼの真ん中に信号機が屹立する不条理にも遭遇しません。また、ロマンティック街道での濃霧もさることながら、ドイツって非常に霧が多いんですね。私、今まで、何故ドイツ車のフォグランプがあんなに無駄に眩しいのか不思議で仕方なかったのですが、その理由がよく分かりました。そりゃ視認性が高いフォグランプにしないとドイツの郊外は走れたものじゃありません。どこかの国で、夜間、特にBMWのドライバーがよくフォグランプまで点けて走ってますがアレは恥ずかしいから止めて欲しいものです。
あと、ドイツ南部の丘陵地、今回で言うと、ノイスヴァンシュタイン城からヴィース教会に向かうワインディングロードの見事さ。
これがもう本当に筆舌に尽くしがたい。こんな道を、カレラ号で走ったらどれだけ気持ちいいか。100くらいでまったり走ったら本当に素晴らしいことでしょう。また夏場にオープンカーで走ろうものならもう駆け抜ける喜びの極致ですね。
今回ドイツの道を長々走って実感しましたが、とにかく、停車することが少ないんです。都心部を除いては渋滞など存在しませんし、信号すら存在しません。もちろんドイツですから気候は基本的に冷涼です。
こんな環境で走ることを前提にされた車たち、特に80年代までのドイツ車が、日本に連れてきて悉く故障するのは当たり前です。余りにも交通事情が違いすぎます。天国と地獄。
さて、褒めちぎりのドイツ交通事情ですが、勿論、いいことばかりじゃありません。特に冬場、雪まみれになることからドイツの道路は融雪剤で浸されます。そんな道を毎日、しかも長距離移動するわけですから、どの車も本当に汚い。
セアトもワーゲンも、アウディ、ベンツもBMも、ポルシェ、ベントレーでさえ汚い。私あんな汚いコンチネンタルGT初めて見ました。
あと、都市部の駐車が意味不明です。というのも全部、路上に縦列駐車ゾーンがあるので路駐するわけですが車と車の間隔が異常。前後1m以下でびっちり停まってます。どう停めるのか、どう出るのかさっぱりわかりません。バンパーで押すらしいですが、車の中を見てみると、殆どの車がちゃんとサイド引いてます。動かねーよ。どうするんでしょう。残念且つ不思議なことに、一度も停車や出発する様子に遭遇しませんでした。次回行く時にはこの謎を解明したいと思います。あとは殆どの車がMTでした。まぁこんな交通事情ならAT要りませんよね。
また、ドイツの外車事情ですが、一番多いのはセアト、次がフォードです。残念ながら日本車は少ない。少ない中での内訳は、マツダが一番で次がホンダ。トヨタは意外に少なく、レクサスはウィーンでISを1台見ただけです。ちなみに現行GT-Rもウィーンで1台見ました。そんな感じ。頑張れ日本車。
というわけで、その国の交通事情ってのは本当にお国柄を示す鏡です。
合理的で、見てくれには拘らず、少し変態というドイツのイメージそのままでした。
あと、私は今まで周囲の人間から、スピード狂という酷い誹謗を受けたりしましたが、今回の旅で、やはりそれは間違いだったと分かりました。日本ではそうかもしれませんが、ドイツではごく普通です。生まれる国を間違いましたね。残念。

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