新車が売れないのか?
という、どうにも困った問題ですが原因を一言で言えば
「魅力」のある新車がない。
ということなんですが
ただこの「魅力」の定義が極めて難しいので話は大変です。
4、5年続くローンを組む他に、駐車場代、バカ高いガソリン代、保険代
更に各種税金、車検費用、通常の整備費用その他諸々を、支払わせるだけの「魅力」とは何なのか?
カッコよさ?
動力性能のよさ?
使い勝手のよさ?
維持費の安さ?
環境性能?
衝突安全性?
車に求められるのはまぁ大体そんなもんなんですが、今の車は100万円の軽自動車でもカッコ云々以外は、もう大体満たされてます。
じゃあカッコの問題?
確かにこれは大きな問題です。しかしいつぞや申し上げた通り、今の自動車に付きまとう諸々の条件(居住性、環境性能、衝突安全性その他諸々)と、カッコいいデザインは極めて両立が困難です。
じゃあ他の要素。無形の要素「ステイタス」ってやつはどうでしょう?
しかしこれも残念ながら「車を持つ」ということが「ステイタス」足りえた時代は遠の昔に終わってます。
「いつかはクラウン」
なんてセリフが実感をもって世のお父さん達の胸に響いたのは40年前です。子供の頃から車に乗る事を夢見る、なんてことはもしかすると、我々くらいの世代が最後かもしれません。
普通の車は全くステイタスではありません。じゃあステイタス足りえるものは?
それは「ブランド」ですよね。
「ブランド」
確かに。BMWは相変わらず絶好調です。ポルシェも凄まじい。アウディ然り。ベンツも…新型Cはいけるんじゃないですかね。
こういった車に「ブランド価値」を見出す方々は結構いらっしゃるようで、その層相手の商売は絶好調ですが、しかし「最低価格」が400万円台なんて車を新車で買える人は市場全体から見れば、やはり限られていると言えます。
高級車市場の好調が、新車販売台数を伸ばす求心力にはなり得ません。
ただ、必要最低限の性能を十二分に持っている今の自動車に、更なる魅力を付加しようとした場合「ブランド価値」というのは大きな鍵であることは確かですね。
求められる性能に関する必要条件+それ以上の魅力(ブランドなど)しかも低価格でね?
そんな車あるのか?
あります。
中古車です。
一昔前まで中古車は、海千山千の業者がやってるどうにも信頼の置けない物でした。しかし、大手中古車販売店が成功し中古車市場が大きくなるにつれ、この美味しい市場を逃すまいと、自動車メーカー自体が「認定中古車」という制度と保証をつけて中古車市場に名乗りを挙げたのも、それなりの昔。
最も注目すべきは、BMWジャパンが先鞭をつけた外車の認定中古車というシステムです。
これによりブランドがより容易に安心して手に入るようになりました。
国産の中途半端な新車を買う金があれば、新車当時1000万した高級外車も5、6年落ちくらいの物が買えます。5、6年落ちと言っても、外車なら現行モデルの場合が殆どで「古い車に乗ってる感」は少ないです。
そして1000万の車は、やはり1000万なりの性能を持ってます。
そーゆー車と、数百万それなりの性能でブランド価値が乏しい国産新車、どっちを買う?
となった時…じゃあいっそ外車いってみっかという人も大勢いるでしょう。
今、道を走ってる異様な数の外車は、往々にしてそういう背景を持ってます。
色々な事にがんじがらめになってる新車は、その新車同士の戦いの他に
倍以上のコストで作られて、数倍のブランド価値がある中古外車とも戦わなければなりません。
これは難しい。
更に、ぶっちゃけて言うと、世の中における「車」のそもそもの必要性、つまり交通手段としての相対的な価値が下がってきているというのもあるでしょう。
その他交通インフラが特に整っている首都圏では、車に乗る意味は極めて低いです。誰が好き好んで、こんな渋滞だらけで時間が読めず、更に停める場所も無いなんてグダグダな環境で車に乗りますか?
車に関るインフラ整備は車の数に対して全く追いついていません。
一方、車以外のインフラ整備は進化が著しい。
そりゃ車の相対的価値は下がりますよ。
「魅力」
諸々の条件を打ち破るデザインで、新車価格倍の中古外車より高性能で
更に交通インフラのダメっぷりも跳ね返し、且つ、一般大衆に買える魅力溢れる新車。
…一見完璧ですがこの「魅力」は、今までの概念で言う所の「魅力」です。
残念ながら価値観が多様化した現代において「誰もが欲しがって爆発的に売れる」なんて現象は例え上記を達成しても無理でしょう。初代シーマとR32のGT-Rが、その最後なんです。
あれから20年。
「価値観の多様化」という新しい消費者の行動を読んで、同一プラットフォームから多車種を生み出したトヨタの戦略が成功を続けてきましたが、それすらも今、限界を迎えつつあります。
つまり、今までと違う、新しい「魅力」を生み出さなければなりません。
この1-6月期、遂にGMを抜いて世界一になったのにトヨタ経営陣の顔が全く綻ばないのは、そういう暗澹たる将来を見つめているからでしょうね。
ま、色々考えても、結局私にはサッパリ分かりません。
てか分かったら経営者になります。カモンヘッドハンティング。
ただ、一人の車好きとして要望を言いますと
気持ちよく走れるカッコいい車を、夢のある車を作って欲しいです。
今の車は、世知辛すぎて夢が無さすぎます。
こんな世の中に生きる人間が、夢の無い車なんかに魅力を感じるとは思えませんからね。
もう一度、車が夢を与えられる存在になれるか否か。
自動車業界の中の人たちには、是非頑張って欲しいものです。
※ちなみに冒頭で示した費用ですが、私の場合、年間でちょうど100万かかってます。
……そんなアルピナ号は、只今エアコンのガスが抜けてクーラーが効きません。年間100万円かかる蒸し風呂。何このダメっ娘。走る曲がる止まる以外は全部ダメ。それも魅力。