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飛んだところで

豚は豚だ。というわけで、久々に金曜ロードショーで豚をやってたので見ました。宮崎駿が神だった頃の最後の作品ですが、やはり掛け値なしに面白いですね。
簡単明瞭でいてしかし絶妙なバランス感覚を持ったストーリー、ウィットに富んだセリフ回し、立ちまくってるキャラ、更に手書きセルアニメの空戦描写として絶後のクオリティなど。その魅力は枚挙に暇がありません。
が、あえて一言で表すなら、色々な意味で「古き良き時代」という言葉に集約される作品だと思います。

と言うか、やはり娯楽映画、特にアニメはこうでなければいけません。
思想だとか社会問題だとか「くだらないスポンサーを背負って」作られたアニメなんて面白くもなんともないですし、しかも中途半端に終わります。
事実、この後、その分野で頂点を極めるナウシカ(漫画版)の超克の不可能性をもののけで自らが証明することになりましたし、説教映画の千尋はもののけにすら達しませんし、ハウルに至ってはもう。

また宮崎作品でどうしても議論になる「声優問題」ですが、魔女が声優陣的に最も豪華で(覚えてるだけでも高山、佐久間、勝平、戸田、喜久子さん、小林優子、大塚明夫、芳忠など)
この豚からは声優以外の起用が目立つようになりました。
特に加藤登紀子、桂三枝などが目を引きますが、とは言え加藤登紀子以上にあの歌を歌える日本人など存在しませんし、また三枝の演技の巧さはヘタな声優を軽く凌駕します。何より主役は超大御所の森山周一郎ですし、敵役は大塚明夫。更にその周辺もベテランが固めています。この配役には完璧な必然性がありますので批判にはあたりません。
…しかし、もののけからは、もう目も当てられないことになるわけです。

カリオストロ、ナウシカ、ラピュタ、トトロ、魔女、豚

という宮崎作品の流れを眺めると、本当に有り得ない名作揃い。まさしく神。しかし

もののけ、千尋、ハウル

これはひどい。何この劣化っぷり。
豚ともののけの間に何があったのか?不思議で仕方ありませんが
宮崎本人の活動の中では、ナウシカ(漫画)の完結があります。
あと時代的にはエヴァのブームもありましたね。
また豚が本人の趣味で作った作品でしたので、次はナウシカ超えを本気で目指すか?…となったのかもしれません。

いずれにせよ「ナウシカ」で成し遂げた巨大すぎる偉業が呪縛になっているような気がします。
それゆえ異なる表現を模索し、結果こけたと。
じゃあ一方で娯楽映画での宮崎駿の才能ですが、代表作はラピュタと豚とカリ城です。神以外の何物でもない。これを超えるのは不可能に思えます。

…辛いでしょうね。
偉大な才能を持つ者にとって、克己こそが最大の苦難ですね。

さて次回作は、崖っぷちのポニョとかいう映画らしいです(違)
こないだの「仕事の流儀」を見る限り、変な方向に行く映画ではないようです。

更なる新境地を見せてくれるのか否か。

困難を極めるでしょうが、是非とも前者であってほしいものですね。

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