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久々に

真面目な話でもしましょうか。
会社に勤めていると、自社商品の発表会という物に接する機会があったりします。どこぞのホテルを借りて、雑誌や新聞の記者を呼びプレゼンを行うってやつですね。
私も何度かその場に立ち会いましたが、まぁ何と言うか。
発表会の後は「懇親会」という名の接待が始まるわけですよ。酒は流石に乾杯程度ですが、ビュッフェ形式でもてなすわけです。
勿論、その種の宴を固辞する方もいらっしゃいますが、そうでない方も居ます。まぁ居るからやるわけですがね。
…うち程度の会社の商品発表会でさえそうなのですから、もっと規模の大きい会社のそれともなると、当然、その規模も比例するでしょう。昔、バブルの頃某セルシオの発表会はそれはそれは凄まじい酒池肉林だったそうですしね。

そういう現場を目の当たりにすると当然、次のような疑問が生じます。即ち
「接待を受けて書く記事という物に、どの程度、信憑性があるのか?」
私は別に潔癖症ではないですが、そーゆー現場に居合わせると何だかげんなりしますね。

さて、話は変わります。

広告宣伝やマーケティングにネットを活用しようという流れが最近特に強いらしいです。ブログやSNSなどを使って云々。カリスマブロガーが持て囃されるご時世とのこと。
マスコミに籍を置く人達だけが情報を発信できた昔と違い、今や1億総情報発信者という時代ですしそれを可能にしたのはネットでありブログでありSNSな訳ですが、さて。

顧客が何を以って情報を収集し、取捨選択し、消費行動に移るのか?

とは広告宣伝における最大の命題ですが、今までの情報媒体は活字やテレビだったんですね。その信頼性は発信者の権威に左右されていたわけですが、上記したようにマスコミの情報は広告主の意向に大きく左右されるという事実が広く知れ渡った昨今、企業の宣伝広告やらマスコミの情報やらは以前のような信頼を失ってしまいました。

さてでは、一般人が最も信頼する情報とは何か。

友人知人からの「口コミ」の情報だったりするそうです。
「友達が言ってたんだけど、まぁあいつが言うなら間違いないだろう」
ってやつですね。
まぁ友人知人は企業の利益とは関係の無い存在ですから、彼等が太鼓持ちになる可能性は極めて低いわけで、消費者側の意見を信頼できる相手から聞けるという「口コミ」の威力が大変高いのは当然のことと言えますね。
しかも、その口コミの情報が、途方も無く広域に伝播するツールが今はあるわけです。

で、当然の事ながら、企業は狡猾です。

カリスマ的な人気=影響力を持っているブロガーやらをピックアップし、彼らに自社商品に触れさせ記事を書かせるというのが、新しい広告宣伝のモデルとして創出されネット関連企業は率先してブロガーの囲い込みを行い、企業に紹介するビジネスを展開しているとのお話。
賢いですね、頭イイですね。流石はベンチャーうまくやります。

さてしかし。ここには逆説的で致命的な問題があります。
というのも、ネット上の口コミ情報の威力は、広告主の利益と関係の無い
「いちユーザーの視点から書かれる」という「信頼性」に依拠するものです。
しかし、今、カリスマブロガーやらが受けている企業からのオファーは、結局の所、我々企業が今までマスコミ相手に行っていた接待に化粧直しをした物に過ぎません。
無論、企業のネット対応担当者も馬鹿ではありませんから、露骨な接待が逆効果なのは百も承知でしょうから、その辺上手くやってるみたいですが、何れにせよ。
結局、そーゆーことをやると「信頼性」の崩壊は避けられません。
いつになるかは分かりませんがそう遠い未来ではないでしょう。

というわけで、我々は、今やネットの口コミも相当バイアスがかかっているという事実を認識しないといけません。それも影響力のあるブログほどその危険があるというなんとも微妙な事実をです。

まぁ何と申しましょうか。大量生産大量消費は20世紀の負の遺産という扱われ方ですが、どうやら昨今は「信頼」すらも商品として扱われ、更に消費されるご時世のようです。

…なんだかしんどい話ですね。

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