ニュースで私が一番衝撃を受けたのは、8人殺傷したキチガイでも、ホームから人を突き落としたクズでもなく
インドの自動車会社タタによる、ジャガー、ランドローバーの買収です。
また車馬鹿と思われるかもしれませんが、さに非ず。この買収が象徴する事は物凄いんです。
そもそもジャガーとランドローバーは、今でこそアメリカフォードの傘下にありますが、元を正せばイギリスの車です。それも生半可な車じゃありません。どちらも英国王室に縁のある英国を代表する高級車です。
それが、ですよ。事もあろうにインドの自動車会社に。
インドと言えば、そう、イギリスの植民地ですよ。東インド会社ですよ。プランテーションですよ。そのインドの自動車会社に、イギリスを代表するブランドが、買収されたんです。
これを凄い事と呼ばずして何と呼びますか。
その昔、日本が調子に乗ってアメリカの不動産を買い漁った時代がありました。アメリカはそれを驚愕と怒りをもって受け止めたわけですが、今回のそれはイギリスにとって、どのような受け止められ方をしてるのか。大変興味がありますね。
諸行無常盛者必衰。大英帝国も今やこの有様です。凄い時代になったものです。
さてそのタタですが、インドでタタグループといえば最大級の財閥らしく、自動車部門であるタタモーターズは、インドで第二位の自動車メーカーとのこと。主力は商業車ですが、30万円を切る「ナノ」を発表し乗用車部門への注力を内外に示した所での、今回の買収です。
30万円の車から1000万円まで、フルラインナップメーカーを目指すのに、セダンのジャガー、SUVのランドローバーを手にするのは確かに手っ取り早い方法ですね。
さて、しかし。大変心苦しいですし、申し訳ないのですが、このようなメーカーに「ジャガー」が維持できるのか。極めて疑問と言わざるを得ません。フォードでさえも、ジャガーの品位を維持する事はできなかったのに。況や。
私はXJ-Sがガキの頃から大好きで、ずーっと乗りたいと思いつつ、しかし「ジャガーに乗る」のはまだまだ尚早だと、思ってきました。
恐らく、多くの車好きにとって「ジャガーに乗る」とは、単に金銭的に可能だと言う事では足りない「何か」を求められる、そんな特別な車なはずです。
ジャガーもランドローバーも、そして勿論アストン・マーチンもそういう車でした。それが今や全て、言葉は悪いですが、どこの馬の骨とも分からないような所に売られるわけです。
これから先どうなるかは分かりませんが、ジャガーはジャガーらしくあって欲しい、そう願わずにはいられません。
XJ-S
ジャガーEタイプの後を継いだクーペです。最後のジャガーらしいジャガー。以後はXKシリーズに。
セダンだとX300系がギリギリでしょうか…いやアウトか。
何れにせよ、もうこういう車が生まれることは無いでしょうね。