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以前

この日記で、組織論の本を紹介した際に

「上司の馬鹿っぷりを嘆いていた人間も
結局まず間違いなく「分かっていない」上司になる」

といったことに少し触れたかと思いますが、最近、部支店長や課長クラスの人間の話を聞いていて、何故、そうなってしまうのかがしみじみ分かりました。

先日会議の際に、顧客の要望を実現するための商品改定要望を各人が発表し、それが一通り出揃った上での、議事を取りまとめていた課長の台詞。

「商品開発には通して貰えないと思うけど、ぶつけてみるね」

この台詞。ズレているとは思いませんか?
「顧客の要望」をまとめた「改定案」が「通して貰えない」んです。
これはトンデモナイことです。何のための「商品開発部」なんでしょう。全く意味がありません。そして更に深刻なのは、その課長のトンデモナイ発言を、誰も問題だと思わないことです。

「まぁ確かに社内には色々あるから仕方ないなぁ」

と、トンデモナイ間違いを、あっさり納得してしまう。
ここでもし「客の意見が通らないなんてオカシイ」という100%正しい真っ当な正論を言っても「お前は何も分かっていない。部支店間には色々あるんだ」という、全くもって馬鹿馬鹿しい1000%歪んだ組織的論理で、正論が封殺されてしまうわけですね。
で、客の声を無視して組織の都合で作った商品を、組織の都合で宣伝広告を行い、組織の都合で売ろうとするわけですが、勿論都合通りには売れないわけですよ。当たり前です。売れるわけが無い。

さて。

書いていてもう馬鹿馬鹿しいんですが、続けましょう。
彼ら、即ち部支店長や課長達も、昔は平社員。要するに日々お客さんと接していたわけですよ。で、彼らは基本的にトップセールスでした。「売れる人たち」でした。何故売れたのか?
客の声、客の要望をちゃんと聞いて、それを形にする努力をする、で要望と提案が合致する。だから売れる。単純な真理です。で、売れる人だから、要望のヒアリングに関しては天下一品。それを形にする工夫も然り。だから部下を抱える立場になっても「現場的なアドバイス」に関しては極めて的を射た指摘ができるわけです。

しかし、これが一歩進んで、組織レベルで商品を作っていこうとなった時、途端に彼らはボンクラになります。「客の要望」という10000%正しい真理を、自分たちの組織の都合でいとも簡単に捻じ曲げる。あれほど部下に「客の声を聞け」と怒鳴っていたクセに、です。

何故こんな馬鹿なことが平然と繰り返されるのか。誰もそれに気がつかないのは何故か。まぁ要するに、そういう事が長期的には自分たちの首を絞めるという簡単な理屈も分からない戦略眼がない馬鹿だから、という結論になるんですが、私はもっと根が深い問題のような気がします。
これは言わば、日本人固有の問題。日本人の価値観の問題のような気がします。

―飲み屋で、若い社員が先輩社員相手に
「課長は何も分かってないっすよー」
と愚痴り、先輩社員が
「そうだな。まぁでも、お前ももう少し大人になれば分かるよ」
となだめるという、日本人ならいつかどこかで見たことがある、妙に既視感のあるこの絵
「正論を言う若者」「組織の論理でなだめる先輩(上司)」
という図式。
そして「組織の論理が理解できて、初めて一人前」という価値観。
この日本人固有の価値観です。皆が首までどっぷり浸かっているこの価値観。これが諸悪の根源。この、日本に遍く広がるどうしようもないクソ価値観が、会社を傾かせ、業界を不振にさせ、ひいては日本の経済を停滞させた、この不況の、組織論的原因の一つのような気がします。

昔はよかったんです。組織の都合で商品を作っても。消費者のニーズが単一とまで言わなくても極めて読みやすかったわけですから、そういう時代においては、革新的な発言より、組織の論理が往々にして正しいわけでして
「お前ももう少し大人になれば分かるよ」
は、確かにその通りだったわけです。
が、今は違う。組織の論理、経験則は通用しません。日々変化する客の価値観を如何に先取りし形にするかが勝負です。旧態のシステムじゃ対応不可能。にも関わらず、世の中が変わったのに、組織の長たちの脳ミソは20~30年前のままなわけですね。
もうどうにもなりません。げんなり。

私は昔から不思議でした。
「正しいことが通らないのが世の中だ」ということが。
おかしいでしょう、そんなもの。おかしいんです。絶対に。でも世のオッサン達は皆そう言う。私も疑問に思いながらも、皆そう言うからにはそうなのかと思ったりしましたが
しかし、色々な組織を実際に見、聞き、確信しました。
やっぱり、正しいものは正しく、おかしいものはおかしいんです。
例えば、うちの会社で一番売れているある支店、その運営その価値観その戦略は、論理的で、合理的で、客観性に富む「正しい」ものなんです。私はそれをこの目で見た時、なんとうちの会社らしくない部署だと感嘆しました。
また、トヨタやBMWその他「エクセレントカンパニー」と呼ばれる企業のそれもまた正しい。

つまり、そういうことです。今、この現代において「正しい事」を行えない組織は、絶対に結果を残せない。即ち、生き残れないわけです。
だからこそ「組織の都合」をブッ潰し、「正しい事を行える組織」に作り変えなければならないわけですよ。経営者及び部支店長はそのシステム構築に全知全能を注ぐべきなんです。
しかるにうちの会社を見てみるとですね…まぁもう言うまでも無いですね。

…いつまで、もつかなぁ(遠い目)

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