走っているとよく分からない渋滞に巻き込まれ、その先頭にあるのは巨大複合型ショッピングモール、なんて事は、よくある話です。
私は、この手のショッピングモールってのが余り好きではありません。何が楽しくてわざわざあんなに人が溢れかえる所に行くのか気が知れませんし、子供連れの家族にとってはある種のアトラクションになっている風情でして、あれを見ると懐かしの吉野家コピペ的なツッコミをしたくなりますが、まぁそれは余談。
そもそも昔は大店法っていう法律がありまして、この種の大規模店ってのは出店が制限されてました。
そりゃそうですよね、こんな巨大複合型ショッピングモールが乱立すれば、その品揃えと価格の安さに地場の小規模商店が太刀打ちできるはずがありませんから、虐殺されることは必定です。日本的護送船団方式と言う批判もあるでしょうが地域経済の保護という意義は、無視できるものではありません。
が、しかし。
大規模流通店の政治的根回しとアメリカやEUなどからの外圧に屈し、出店規制はなくなりました。
確かトイザラスを皮切りにカルフールなど大規模小売店が、2000年頃から郊外に複合型の巨大小売施設を建て始め、当初は活況を示しましたが、次第に海外流の大雑把な商売が上手くいかず軒並み撤退なり縮小。
巨大複合型店舗は日本的市場にそぐわないかに見えたのですが、そのカルフール(の日本部門)をイオンが買収した辺りからは一変。現在に至るわけです。
私は別に、今日の日本の地方都市のゴーストタウン化の原因の全てが、巨大複合型ショッピングモールにあるとは思いません。そもそも少子化が進み地方の人口構成は極めて歪になってますし、シャッター街となった地元商店街のそれぞれが、本当に真剣に業績改善に取り組んだのかも疑問です。
しかしそれでも、本来なら地元に落ちる金の多くが大規模店に吸い出され、地元経済の循環を縮小させたのは間違いなく事実だと思いますから、やはり、そこには大きな責任があるように思えます。
しかしそれも百歩譲って良しとしましょう。流通の形は絶えず変化するものですから。
今隆盛を誇っている巨大複合型施設も、今後、どうなるかは分かりません。特にネットを媒介とした流通勢力の躍進は彼らにとって脅威でしょう。店舗型の商売と、根本的にコストが異なりますから、スケールメリットを生かした価格攻勢という、これまで地元商店街を虐殺してきた手段は必ずしも有効ではありません。
で、どういう手段を使うか。
……この解こそ、私が、絶対に彼らを認めることが出来ない理由です。
ジャスコなり何なりに買い物に行く事を想像してみてください。
いつもの、日常的な買い物に行くところをです。
例えば洗顔料やシャンプー或いは食品関係。当然売り場には名の通ったメーカーのよく聞く銘柄の商品があるわけですが、その横に、ノーブランドの商品がありますよね?同じような効用で、値段は2割方安い商品群。
そう、プライベートブランドです。
これが、タチが悪い。
プライベートブランドとは、大規模小売店が企画し提携するメーカーに作らせる独自商品と言う建前ですが、実際は、要するに正規品の粗製濫造品です。
よく似た効用で、ちょっと内容が劣っていて、安い。
以前、車の話をした時にも書きましたが、最近の工業製品ってのは、クソのようなコストで作ったゴミのような商品でも、十分に、使用に耐えてしまいます。これが、よろしくない。
使えるんだからいいじゃん。
という安易な所に、どうしても落ち着いてしまうわけです。
日本の物作りの素晴らしい所は、オリジナルをパクったとしても、決してそのままパクらずに、必ず、何かしらの改善を施す所にありました。必ず、オリジナルを超えるパクリを行ったわけです。パクられる側も、むかつきながらも納得せざるを得ません。だって良くなってるんですから。そういう循環が、日本的な異常な高性能化を生んだわけです。私はこれを「日本的模倣」と呼びます。
一方、そうではないパクり方があります。オリジナルより粗悪な材料を使い、安価な労働力を搾取して粗製濫造し、オリジナルのブランドイメージに寄生して大量に売り捌く。要するに中国がやることですね。「中国的模倣」です。
中国的模倣の悪影響は様々ありますが、最悪なのは、本来の真っ当な商品開発を行っている真っ当な企業の体力を奪うことにあります。
新商品を開発しても後発でやってきた中国的模倣商品に売上をすぐ奪われてしまう。商品開発の費用を回収出来ない。新規開発に金を掛けるメリットが失われ、新商品を作る意欲も費用も失い、単なるコスト競争に陥る。
これは恐ろしいことです。日本の製造業が陥っているジレンマはこの問題に起因します。
打開するには?
まずメーカーが、他の真似ようの無い、圧倒的な新商品を開発する。
そして消費者は、商品に対して、正当に評価し正当な対価を支払う。
そういう関係しかありません。
私は、プライベートブランドの商品は買いません。
ちょっと高くても、正規品を買います。
そういう日々の消費行動の集積が、結局、回りまわって自分を助け、或いは自分を害することになる。
金は天下の回り物とはよく言ったものです。昔の人は本当に、物事の本質を突きます。
日本の経済を本当に支えるのは、政府でも大企業でも銀行でもなく、我々消費者一人一人の消費行動にある。政府の景気対策の無策ぶりに文句だけ言って依存する前に、自分がやれることをやる。
日本経済に本当に必要なのはそういう意識と気概ではないか。
…などと渋滞に巻き込まれながら考えるわけですが、さて果たして。
あの巨大な駐車場に溢れかえる車と、それに乗ってやってきた人々は、一体、どういう消費行動を取るのでしょうか。
今日の特売も勿論大切ですが、もう少し、目線を高く視野を広く持ってみるのもより大切なような気がしますね。